歪曲わいきょく)” の例文
悪罵あくば奔走ほんそう駈引かけひきは、そののち永く、ごたついて尾を引き、人の心を、生涯とりかえしつかぬ程に歪曲わいきょくさせてしまうものであります。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
学問の純粋性が彼にみ込んで、それによって世の中を見るようになれば、女の持つ技巧や歪曲わいきょくの世界から脱れようかとも思った。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ここにはいささかの弁解も歪曲わいきょくもありません、現実にあったことをあったままに書きますから、どうかそのおつもりで読んで下さい。
失蝶記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
北条家に、事情を書かせれば、当然、いいように歪曲わいきょくして書き出すにちがいない、もうそれは六波羅に提出されているかもしれないのだ。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
扮飾ふんしょくされ歪曲わいきょくされた——あるいはそれが自身の真実の姿だかも知れない、どっちがどっちだかわからない自身を照れくさく思うのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
同じような歪曲わいきょくが政治外交経済あらゆる方面の記事にも多少ちがった程度で現われているであろうと想像しないわけには行かないのである。
ジャーナリズム雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
写真ハ全裸体ノ正面ト背面、各部分ノ詳細図、イロイロナ形状ニ四肢ヲ歪曲わいきょくサセ彎屈わんくつサセ、折ッタリ伸バシタリシテ最モ蠱惑的こわくてきナル角度カラ撮ッタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そんな空想で歪曲わいきょくされた形でもってこのことを解釈したり、考えたりしておられようとは、重々意外千万でしたよ……しかも、その上……その上……
この三十すぎの小姑こじゅうとの口から描写される家の空気は、いろんな臆測おくそく歪曲わいきょくに満ちていたが、それだけに正三の頭脳に熱っぽくこびりつくものがあった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
史実を少しも歪曲わいきょくすることなくして而も文学者としての正しき解釈を加えたものと見ることが出来るのである。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
しかし、子供めいたおたがいの友情を、そんなふうに歪曲わいきょくしてもてあそばれることは、我慢がまんできない腹立たしさでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
委員のうちには鉱毒の害ではなくて単なる洪水の害であるといって、ことさら歪曲わいきょくを試みる者があるということも洩れてきた。正造は血相をかえて憤慨した。
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
現実の国家に多かれ少なかれ伴うところの権力濫用らんよう幣害へいがいや、法と刑罰による人間性の歪曲わいきょくや、階級的な搾取さくしゅ抑圧よくあつの危険を排撃する点には、大きな魅力みりょくがあって
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
ワルターの演奏は非常に端正で、むやみな歪曲わいきょくはほとんど発見されない。その点では、フルトヴェングラーやストコフスキーとは、全く異なった立場にいる人である。
で、材料ざいりょう取捨しゅしゃ選択せんたくせめ当然とうぜんわたくし引受ひきうけなければなりませんが、しかし通信つうしん内容ないよう全然ぜんぜん原文げんぶんのままで、私意しいくわへて歪曲わいきょくせしめたような個所かしょはただの一箇所かしょもありません。
しかるにいま祭司長・学者・長老らは、この語から霊的・終末観的な意味を抜き去って、世俗的・政治的意味のものに歪曲わいきょくしてしまった。これが彼らの用いた偽計トリックであります。
身を全うし妻子をやすんずることをのみただ念願とする君側の佞人ねいじんばらが、この陵の一失いっしつを取上げてこれを誇大歪曲わいきょくしもってしょうの聡明をおおおうとしているのは、遺憾いかんこの上もない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それをそうと信ぜさせられた時、その市井の女はいよいよいささか歪曲わいきょくをもゆるさぬ真相を示すのである。世間も、彼の母も、その母の地位も、すべて残るくまなく、彼の心眼に映って来る。
だからこういうことをいうのは実は儒教そのものを歪曲わいきょくすることになる。儒教の術語を現代にあてはめようとするのも同じことであって、王道というような語を用いるのもそれである。
すべてそれは、公家の外の人々の心にひそむ公家文化への仰望の歪曲わいきょくされた表現のように思われる。『草庵集』の淡雅な味は、むしろ連歌から宋画への味のつながりを持っているとおもう。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
そこにこそ人々がなし得ないでいる解放の努力が残されていた。彼らはドイツの利益に役だたせんがために理想主義を歪曲わいきょくして満足していた。たとえば冷静にして表裏あるヘーゲルを見るがいい。
……すべてそうした過誤かご歪曲わいきょくを、従来の史からのぞいて、正しきに正す、それが光圀の根本である。わかったか、お身方には
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「率直な意見を云ってくれ」と周防が云った、「私はどうしたらいい、歪曲わいきょくされた無根の罪状を、黙って甘受すべきなのか」
それは全く、奇妙に歪曲わいきょくした。このあいそのつきた自分の泡のいのちを、お役に立ちますものなら、どうかどうか使って下さい。卑劣と似ていた。
花燭 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あるいは葬式や嫁入りの門先に皿鉢さらばちを砕く、あの習俗がこんな妙な形に歪曲わいきょくされて出現したのかもしれない。
三斜晶系 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
自分の方の利点と長所を力説し、相手の不利と弱点を強調するため、誇張や歪曲わいきょくが伴うのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
それだけの事実が、こんなにも歪曲わいきょくされ拡大されて伝わって行くとはと、ぼくが訳もなく口惜しがっているあいだに、川北氏は考えをまとめ、しずかに意見を述べだしました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
しいて歪曲わいきょくしている点もなくはないが、不倶戴天ふぐたいてんの仇敵をやッつけた筆誅の余勢である。多少の誇張はしかたがあるまい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ヤソのヤソくさきは真のヤソにあらず、と断じ、支那の儒者先生たちが孔孟の精神を歪曲わいきょくせしめたように、キリストの教えも、外国のヤソ坊主たちが堕落せしめてしまったのだ
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それも不正の事実は除いて、単に、借りた金を弁済しなければならぬ、というふうにでも云ったとすると、聞いた者の口から、歪曲わいきょくされて伝わったと、考えられないことはない。
竹柏記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
従って映像の真実性が著しく歪曲わいきょくすることになるのではないかと想像される。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
若し私論を以て、国家の大法を歪曲わいきょくするに於ては、以後天下の法令というものは、有っても無い事になり、複雑な社会人心はどうおもむくか分らない
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを歪曲わいきょくすることなく、できるだけあったままに私は写し取っていった。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ともかくもその論文の要点はそんなにひどく歪曲わいきょくされずに書いてある。
錯覚数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
どんなに女の運命を逆転させ、ロマンスを歪曲わいきょくさせるか判りませぬ。
皮膚と心 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「呂布は、人道の上において、正しき人であったか。曹操は真の忠臣か。袁紹は、世を救うに足る英雄か。ご辺はなぜ、ことばを歪曲わいきょくして、無用な讒言ざんげんをなさるか」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勘定奉行の荻原近江守や柳沢一門の権勢におおわれて、佞吏派は極力、事実を歪曲わいきょくし、五郎左衛門の家は断絶、大岡十家はのこらず閉門禁足の久しい厄に封じ込まれて
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……軍師、大法を歪曲わいきょくするのではなく、仮にしばらくその法断を待って欲しいのじゃ。たのむ
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その創痍そういえきれないであるのだ——とは強いて歪曲わいきょくしていわないのであった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さかしげの理論を立てて歪曲わいきょくの文を作り、賊子が唱えて大権をぬすむの具に供す。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(法の尊厳は、寸毫すんごうおかすべからず。法を歪曲わいきょくして、国政なし)
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将門にとっては、すべてが歪曲わいきょくされた無実である。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)