-
トップ
>
-
朝風
>
-
あさかぜ
いつのまにか、
美しい
音楽の
音もやんで、ただ、そよそよと
吹く
朝風のうちに、
音楽の
音が、いつまでもただよっていたのでありました。
お日さまは、
空たかくのぼって、あかるく かがやいていました。
朝風は、きりかぶの上を あたたかく ふいていました。
野路の
朝風、
足輕く、さつ/\と
過ぎて、
瓜井戸の
宿に
入つたのが、まだしら/″\あけで。
毎朝役所へ出勤する前、崖の
中腹に的を置いて古井戸の柳を脊にして、凉しい夏の
朝風に
弓弦を
鳴すを例としたが
間もなく秋が来て、
朝寒の
或日、
片肌脱の父は弓を手にした
儘
世を恨み義に勇みし
源三位、數もなき白旗
殊勝にも宇治川の
朝風に飜へせしが、
脆くも破れて空しく一族の
血汐を
平等院の
夏草に染めたりしは、諸國源氏が
旗揚の先陣ならんとは
ひと
抱えもあろうと
想われる
蓮の
葉に、
置かれた
露の
玉は、いずれも
朝風に
揺れて、その
足もとに
忍び
寄るさざ
波を、ながし
目に
見ながら
咲いた
花の
紅が
招く
尾花のそれとは
変った
清い
姿を
朝風にうばらかをりて、ほとゝぎす
鳴くや うづきの
志賀の
山越え
朝風に、ああ巡礼の
鹿島立ち。
はりねずみは、じぶんの
家の、
戸のまえにたって、うでぐみをしていました。
朝風にふかれながら、
気もちよさそうに、ちょいとした
歌を、口のなかで うたっていました。
其の
蘆がくれの
大手を、
婦は
分けて、
微吹く
朝風にも
揺らるゝ
風情で、
男の
振つくとゝもに
振ついて
下りて
来た。……
若しこれで
声がないと、
男女は
陽炎が
顕はす、
其の
最初の
姿であらうも
知れぬ。