朝風あさかぜ)” の例文
いつのまにか、うつくしい音楽おんがくもやんで、ただ、そよそよと朝風あさかぜのうちに、音楽おんがくが、いつまでもただよっていたのでありました。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お日さまは、そらたかくのぼって、あかるく かがやいていました。朝風あさかぜは、きりかぶの上を あたたかく ふいていました。
野路のみち朝風あさかぜあしかるく、さつ/\とぎて、瓜井戸うりゐど宿やどはひつたのが、まだしら/″\あけで。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
毎朝まいちょう役所へ出勤する前、崖の中腹ちゅうふくに的を置いて古井戸の柳を脊にして、凉しい夏の朝風あさかぜ弓弦ゆみづるならすを例としたがもなく秋が来て、朝寒あささむある日、片肌脱かたはだぬぎの父は弓を手にしたまま
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
世を恨み義に勇みし源三位げんざんみ、數もなき白旗殊勝しゆしようにも宇治川の朝風あさかぜに飜へせしが、もろくも破れて空しく一族の血汐ちしほ平等院びやうどうゐん夏草なつくさに染めたりしは、諸國源氏が旗揚はたあげの先陣ならんとは
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ひとかかえもあろうとおもわれるはすに、かれたつゆたまは、いずれも朝風あさかぜれて、そのあしもとにしのるさざなみを、ながしながらいたはなべにまね尾花おばなのそれとはかわったきよ姿すがた
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
朝風あさかぜにうばらかをりて、ほとゝぎすくや うづきの志賀しが山越やまご
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
朝風あさかぜに、ああ巡礼の鹿島立かしまだち。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
朝風あさかぜぬるしけふ夜明け
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
はりねずみは、じぶんのいえの、のまえにたって、うでぐみをしていました。朝風あさかぜにふかれながら、もちよさそうに、ちょいとしたうたを、口のなかで うたっていました。
あしがくれの大手おほてを、をんなけて、微吹そよふ朝風あさかぜにもらるゝ風情ふぜいで、をとこふらつくとゝもにふらついてりてた。……しこれでこゑがないと、男女ふたり陽炎かげらふあらはす、最初さいしよ姿すがたであらうもれぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)