旅立たびだち)” の例文
たまたま会員病むものあれば信徒こもごも不眠の看護をなし、旅立たびだちを送る時、送らるる時、祈祷と讃美と聖書とは我らの口と心とを離れしひまはほとんどなかりき
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
かくときすぎて又江戸へ來るが上策じやうさくならんとにはか旅立たびだち用意よういせしがさりとて是迄これまでに心をつくせし藤重ふぢしげを一夜なりとも手に入ずして別れんこと口惜し今宵こよひひそか忍行しのびゆきはなし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これでは旅立たびだちばさなくてはなるまいかとつて、女房にようばう相談さうだんしてゐると、そこへ小女こをんな
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
名前もわからず、ほとんど困りましたけれども、こまかにたづねたら知れぬ事もあるまいと、これからたくかへつて、すぐ旅立たびだち支度したくを始めたから、うちの者はおどろいて、何処どこくといふ。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
二人までも幼い人達を道連に加えたことは、一層岸本の心に遠い旅立たびだちらしい思いをさせた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
連れて行って婚礼させればそれでむのでさあ。早くサッサと旅立たびだちの支度でもなさいよ
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
空寒き奥州おうしゅうにまで帰る事はわずに旅立たびだち玉う離別わかれには、これを出世の御発途おんかどいでと義理でさとして雄々おおしきことばを、口に云わする心が真情まことか、狭き女の胸に余りて案じすごせばうるの、涙が無理かと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
実際その日はぶら/\天国へ旅立たびだちでもするには持つて来いといふ日和だつた。
あるひ旅立たびだちおくれて河止かはどめふもあり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
雪山の旅立たびだち 私はその旅行券を示し
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此の月の三日に子供を連れて旅立たびだちしたと聞いて鹽原夫婦は残念に思いましたが、返らぬ事ゆえすぐ筋違橋内すじかいばしうち戸田能登守の家来野澤源作のざわげんさくと申す者は、妻お清が従弟どちなれば
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして、何かにつけ旅立たびだちに便利なソルボンヌ附近の旅館の方に移ろうとした。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
國々へひろめんとて又々諸國武者修行むしやしゆぎやうこゝろざし旅立たびだちせんと云に半四郎は是をとゞめ最早御老年の御事此上の御修行にもおよぶまじければ是までの如く當所たうしよおはして以後は月雪花つきゆきはなながめともとなし老を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
如何いかゞ致そうかと照も心配致して、又々旅立たびだちを致そうか、たゞしはあやまって信州の親族の処へ参ろうかと思って居った所で有るが、一人の娘を谷間へ落して殺したのも是も皆ばち
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
扨又長兵衞は兄の清兵衞に向ひ先達さきだつての手紙の樣子やうすにては大病にて九死一生との事なれば大いに心配しんぱい致せしなれども節季せつき師走しはすの事ゆゑ勿々なか/\旅立たびたちなどは出來難でぎがたところなるが萬一の事にてもある時は死に目にもあはれずと思ひて取物とるもの取敢とりあへにはか旅立たびだち隨分ずゐぶんみち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夢に見ましたが、よく人が旅立たびだちの夢を見ると其の人にお目にかゝる事が出来ると申しますから、お近いうち旦那様にお目にかゝれるかと楽しんで居りましたが、今日お帰りとは思いませんでした