思出おもひで)” の例文
米原まいばら北陸線ほくりくせん分岐道ぶんきだうとて、喜多きたにはひとり思出おもひでおほい。が、けるとかぜつめたい。所爲せゐか、何爲いつもそゞろさむえきである。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今から三十数年の昔で明治の終り頃であつたが歳月の記憶も失念してゐるし、記憶も全く薄らいで仕舞つたが思出おもひでのままを書いてみることにする。
札幌時代の石川啄木 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
されどつれなき人心、今更靡かん樣もなく、且や素性すじやういやしき女子なれば、物堅き父上の御容おんゆるしなき事もとより覺悟候ひしが、只〻最後の思出おもひでにお耳を汚したるまでなりき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
められし者の思出おもひでにとて、その上なる平地ひらちの墓に、ありし昔の姿きざまれ 一六—一八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その心、思出おもひでに近づけば
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
その思出おもひでのかなしさか。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
思出おもひでもあり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
おゝ、ふねいたは貴様きさまだな。それろ、それろ。うぬ魔物まもの山猫やまねこか、狒々ひゝか、きつねか、なんだ! 悪魔あくま女房にようばううばつたやつ。せめて、おれに、正体しやうたいせてくれ。一生いつしやう思出おもひでだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思出おもひで古酒こしゆごとく甘し。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うしたことは、けばいくらもあらうとおもふ。さきの思出おもひで、のちのたよりにるべきである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思出おもひで古酒こしゆごとく甘し。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
たゞいたづらに、思出おもひで武生たけふまち宿やどつてもかまはない。が、宿やどりつゝ、其處そこ虎杖いたどりさと彼方かなたて、こゝろあしはこべないときはかなさにはへられまい、とおもひなやんでますうちに——
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けものだのが、いくらでもえるから、ちつとは思出おもひでになるトいつちやあ、アノ笑顔わらひがほをおしなので、わたしもさうおもつてせいか、ひとがあるいてとき片足かたあしをあげたところ一本脚いつぽんあしとりのやうでおもしろい
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)