心懸こころがけ)” の例文
何、米にかねがね聞いている、婆さんお前は心懸こころがけいものだというから、滅多に人にも話されない事だけれども、見せて上げよう。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな心懸こころがけくない女子おなご臨終りんじゅう通報しらせが、どうしてひいさまのおもとにとどくはずがございましょう。なにみなわたくしわるかっためでございます。
ご馬前にさき駈けして、はなばなしくたたかうも武士のほんぶんではある、けれどもそれは、今そのほうが申したような心懸こころがけではかなわぬことだ。
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
月日たつにつれ自然出家しゅっけの念願起りきたり、十七歳の春剃髪ていはつ致し、宗学修業しゅぎょう専念に心懸こころがけあいだ、寮主雲石殿も末頼母たのもしき者に思召おぼしめされ、ことほか深切しんせつに御指南なし下され候処
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
たかみねで手放されてから、そのまま父と相会わぬこともすでに四年ぶりであった。どんなにお変りになったろう。いやいや、平常ふだんのお心懸こころがけ、老来いよいよ御壮健かも知れない。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さやうでゐらつしやいませう、何と申したつてこの山奥で御座いますから。全体旦那がお一人でゐらつしやると云ふお心懸こころがけが悪いので御座いますもの、それは為方が御座いません」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
有っても一向心懸こころがけのございません僕なんざ、年の暮に、太神宮から暦の廻りますまでは、つい気がつかないでしまいます。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
正直者しょうじきもの香織かおりは、なみだながらに、臨終りんじゅうさいして、自分じぶん心懸こころがけわるかったことをさんざんびるのでした。しばらくして彼女かのじょ言葉ことばをつづけました。——
連合つれあいの今の後室が、忘れずに、大事にかけてござらっしゃる、お心懸こころがけ天晴あっぱれなり、来歴づきでお宝物にされた鏡はまた錦の袋入。こいつもいわい。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうした場合ばあい平生へいぜい心懸こころがけのよいものは、『これも因縁いんねんだから致方いたしかたがございませぬ……。』とって、立派りっぱにあきらめてくれますが、なかには随分ずいぶん性質たちのよくないのがないわけでもございません。
江崎のお縫は芳原の新造しんぞむすめであるが、心懸こころがけがよくッて望んで看護婦になったくらいだけれども、橘之助に附添って嬉しくないことも無いのであった。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
え、雀部さんの多磨太なんで、から仕様がえんです。何だそうで、全体心懸こころがけが悪うがすよ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かねての心懸こころがけよろしゅうござりますので、私共もはや、特別に目を懸けまして、他人のように思いませぬから、毎晩うなされまするのが、目も当てられませぬ、さればと申して
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんな心懸こころがけじゃあ盲目めくらの夫の前で、情郎いろおとこ巫山戯ふざけかねはしないだろう。いやになったらさっぱりと突出すが可いじゃあないか、あわれななさけないものをつかまえて、いじめるなあ残酷だ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母親の富とは大違いな殊勝な心懸こころがけ、自分の望みで大学病院で仕上げ、今では町住居ずまいの看護婦、身綺麗みぎれいで、容色きりょうくって、ものが出来て、深切で、おとなしいので、寸暇のない処を
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いかがでございましょう、頂く訳には参りませんか、どうです、蝶さん、ここに是非一番ひとつ君のお酌をという、厄介な、心懸こころがけの悪いのが出来上ったんですが、悪うございますか。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「一体何じゃ、内へござるほかの方とはちと気風が違っていなさるから、その辺が何となく御身分のある方とはお交際つきあいがなさりにくいのじゃ、それも心懸こころがけ一ツで、の、ああどうともなります。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まず第一のお心懸こころがけじゃよ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)