帝釈たいしゃく)” の例文
旧字:帝釋
教会に行っても、いやなところばかり目につくし、私はついに十七日の朝急に、庄原から八里ほど山の奥にある帝釈たいしゃくという村に参りました。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
半七は起って次の間へゆくと、ここは横六畳で、隅の壁添いに三尺の置床おきとこがあって、帝釈たいしゃく様の古びた軸がかかっていた。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
帝釈たいしゃくの天宮に住む天人、名はノルテオクが天帝の園に花を採る若い天女に非望をいだいた罰として、天帝を拝みに来る諸天神の足を浄める役にされたが
脇立わきだちの梵天ぼんてん帝釈たいしゃくの小さい塑像(日光にっこう月光がっこうともいわれる)が傑作であることには、恐らく誰も反対しまい。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「そもそも、つつしみ、うやまって申したてまつるは、かみ梵天ぼんてん帝釈たいしゃく四天王してんのう、下界に至れば閻魔法王えんまほうおう……」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
満海の生れ代りということを保証するのは御免こうむりたいが、梵天丸という幼名だったことは虚誕では無く、又其名が梵天帝釈たいしゃくに擬した祝福の意であったろう事も想察される。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
梵天ぼんてん帝釈たいしゃくの許しを得、雷となって自分に辛かった人々に怨みを報じようとしているのに、尊閣のそく浄蔵が法力を以てさまたげをなし、自分を降伏させようとするのは心外である
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「いや、思いだした——どうだ、おぬし、柴又の帝釈たいしゃくさまというのを聞いたことがあるか? 知らん?——知らなければ知らんでもよろしい、ちょいと拝んで行くとしよう」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
但中尊の相好は、金戒光明寺のよりも、粗朴であり、而も線の柔軟はあるが、脇士わきじ梵天ぼんてん帝釈たいしゃく・四天王等の配置が浄土曼陀羅まんだら風といえば謂えるが、後代風の感じをたたえている。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
帝釈たいしゃく丹三と異名をとった三角の眼をくりくりさせて、丹三が勇躍したのももっとも至極。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
どういきんでもいきみきれねえ時があらア、……知れたこッたが無事にゃアおさまらねえ、おれの口じゃア云えねえような悪態だ、帝釈たいしゃく様も耳を押えたくなるような悪態の始まりだ
嘘アつかねえ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
母の枕もとの盆の上には、大神宮や氏神うじがみ御札おふだが、柴又しばまた帝釈たいしゃく御影みえいなぞと一しょに、並べ切れないほど並べてある。——母は上眼うわめにその盆を見ながら、あえぐように切れ切れな返事をした。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
地蔵、観音、勢至せいし文殊もんじゅ普賢ふげん虚空蔵こくぞうなどある。それから天部てんぶという。これは梵天ぼんてん帝釈たいしゃく、弁天、吉祥天きっしょうてん等。次は怒り物といって忿怒の形相をした五大尊、四天、十二神将じんしょうの如き仏体をいう。
……お企てへ一味し忠誠つかまつる。もし偽りあるにおいては、梵天ぼんてん帝釈たいしゃく四大天王、日本六十余州の神祇より、きっと冥罰めいばつを受くべきものなりと、誓ったあげく姓名したため、しかと血判いたしたのだ
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
帝釈たいしゃくで、くままたれたってな。」
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
御成道の横町で古道具屋をたずねると、がらくたばかりならべた床店とこみせ同様の狭い家で、店の正面にすすけた帝釈たいしゃく様の大きい掛物がかかっているのが眼についた。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
帝釈たいしゃく以下天竜八部をあつめて説法せし時、余食くいのこしをトラクオトに与え、この蜥蜴はわが説法を聴いた功徳により、来世必ず一国の王とならん、しかしその国の人民
その怨みを報ぜんために雷神となって都の空をあまがけり、鳳闕ほうけつに近づき奉ろうと思っている、此の事は既に梵天ぼんてん、四王、閻魔えんま帝釈たいしゃく、五道冥官みょうかん、司令、司録等の許しを得ているので
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見て、帝釈たいしゃくさまはどっちの方角に当りますかって云いだした
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は帝釈たいしゃくの三日の間にしだいにのぞみを恢復かいふくいたしました。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
帝釈たいしゃくの湯で、くま又捕れたってな。」
耕耘部の時計 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
帝釈たいしゃく丹三である。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もし飽くまでも不得心ならば、帝釈たいしゃく阿修羅あしゅら眷族けんぞくをほろぼしたと同じ意味で、兄が手ずから成敗するからそう思えと、怒りの眼に涙をうかべて云い聞かせた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その時兎偽ってわれは帝釈たいしゃくの使で狼千疋の皮を取りに来たと呼ばわり狼怖れて逃げた物語あり、わが邦の「かちかち山」の話も兎の智計能く狸を滅ぼした事を述べ
仏の三十二相の第二は螺髪らほつ右旋うせん、その色紺青(『方広大荘厳経』三)、帝釈たいしゃく第一の后舎支しゃし、目清くして寛に、開いてあり、髪青く長く黒く一々めぐる(『毘耶婆びやば問経』下)。
われらの尊む夜叉羅刹やしゃらせつの呪いじゃ。五万年の昔、阿修羅あしゅらは天帝と闘うて、すでに勝利を得べきであったが、帝釈たいしゃく矢軍やいくさに射すくめられて、阿修羅の眷属けんぞくはことごとく亡び尽した。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さて珍な事はインドの『委陀ヴェーダ』に雷神帝釈たいしゃくを祈るあり