がは)” の例文
夕日ゆふひは低く惱ましく、わかれの光悲しげに、河岸かし左右さいうのセエヌがはかは一杯いつぱいきしめて、むせんでそゝさゞなみに熱い動悸どうきを見せてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
恐と望とに狂ひ歡ぶ無數の眼が髣髴として乳色の光を放ち天の一方にたなびいてゐる。多くの魂はこの眞珠の光を散らしてあまがはを登つて行く。
さしあげた腕 (旧字旧仮名) / レミ・ドゥ・グルモン(著)
若し将門が攻めて行つたのをふせいだものとしては、子飼川をわたつたり鬼怒きぬがはを渡つたりして居て、地理上合点が行かぬ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
裏の山から出て、わたしの村の中ほどをよこぎつて、湖水へ流れこむ川を、千ぼんがはといひました。千本木川——どうして、そんな名まへがついたのでせう。
千本木川 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
よるやみである。すごえたそらへぞつくりとつたとなりもりこずゑにくつゝいてあまがはひく西にしかたぶきつゝながれてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あまがは澄渡すみわたつた空に繁つた木立こだちそびやかしてゐる今戸八幡いまどはちまんの前まで来ると、蘿月らげつもなく並んだ軒燈けんとうの間に常磐津ときはづ文字豊もじとよ勘亭流かんていりうで書いた妹の家のを認めた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「べらぼうめ、飛越とびこしたぐらゐの、ちよろがはだ、また飛返とびかへるに仔細しさいはあるめえ。」と、いきつて見返みかへすと、こはいかに、たちま渺々べう/\たる大河たいがつて、幾千里いくせんりなるやはてず。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丁度あまがはの向うまであの日はお使ひに参つたところでございましたので、私が帰るのが遅いと、御主人様は大そう心配していらつしやいましたが、私が帰つて詳しくお話を致しますと
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「菊川に公卿衆泊りけりあまがは」(蕪村ぶそん)の光景は、川の面を冷いやりと吹きわたる無惨の秋風が、骨身に沁みるのをおぼえようではあるまいか、更にそのむかし、平家の公達きんだち重衡しげひら朝臣あそん
天竜川 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
夢かうつゝかあまがは
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)