小間物こまもの)” の例文
大学の構内を通り抜けて、赤門あかもんを出て左へ曲って、本郷の通りへ行きますと、三丁目の角に兼康かねやすという小間物こまもの老舗しにせがあります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
隱居いんきよより借請かりうけし事も御座りし處去る十七日右彦兵衞參り小間物こまものはらひを買候に百りやうほど入用にふようゆゑ九十兩ばかり一兩日りやうじつ借度かりたきよし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蝙蝠傘屋こうもりがさやの前にもちょっと立ちどまった。西洋小間物こまものを売る店先では、礼帽シルクハットわきにかけてあった襟飾えりかざりに眼がついた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ある村なぞは、全村平田の信奉者だと言ってもいいくらいでしょう。そのくせ、松沢義章まつざわよしあきという人が行商して歩いて、小間物こまもの類をあきないながら道を
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで彼等はまず神田の裏町うらまちに仮の宿を定めてから甚太夫じんだゆうは怪しいうたいを唱って合力ごうりきを請う浪人になり、求馬もとめ小間物こまものの箱を背負せおって町家ちょうかを廻る商人あきゅうどに化け
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
山の中ではあるがなかなか盛んな市街まちで、理髪をする兵隊もあれば饂飩うどんこしらえて売る兵隊もあり、また豆腐とうふを拵えて居るもあれば小間物こまものを売って居る者もあり
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
内田から手前に百助ももすけ小間物こまもの店があった。職工用の絵具一切を売っているので、諸職人はこの店へ買いに行ったもの)、この横丁が百助横丁、別に唐辛子とうがらし横丁ともいう。
更に進めば真鍮しんちゅう屋、小間物こまもの屋、銀細工屋、呉服屋などが眼に入るであろう。かかる店は点々と鍾路が大平町と交る所ぐらいまで続いてゆく。中で興味深いのは鐘楼の影にある東床鄽である。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
シャツなどをひろげたのや、バナナをげて、パン、パンとだいをたたいているのや、小間物こまものならべたのや、そうかとおもうと、かなだらいのなか金魚きんぎょおよがしているのや、いろいろでありましたが
ある夜の姉と弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
半襟はんえりを十枚ばかり入れたのが一函ひとはこ昆布こんぶ乾物かんぶつ類が一函、小間物こまものが一函、さまざまの乾菓子ひがしを取りまぜて一函といった工合に積み重ねた高い一聯いちれんの重ね箱に、なお、下駄げたや昆布や乾物等をも加えて
連尺商いのもう一つ前には、日本はひじりまたは山臥やまぶしという旅をする宗教家があって、それが修行のかたわらにわずかずつの物品を地方にはこんで、呉服ごふくとか小間物こまものとかの商売を開いたと言われている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小間物こまものの荷を背負った町人風の男が入って来ました。
蝙蝠傘屋かうもりがさやまへにも一寸ちよつとまつた。西洋せいやう小間物こまもの店先みせさきでは、禮帽シルクハツトわきけてあつた襟飾えりかざりにいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ここにその任命を公表すれば、桶屋おけやの子の平松ひらまつは陸軍少将、巡査の子の田宮たみやは陸軍大尉、小間物こまもの屋の子の小栗おぐりはただの工兵こうへい堀川保吉ほりかわやすきち地雷火じらいかである。地雷火は悪い役ではない。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
両側は玩具屋おもちゃやが七分通り(浅草人形といって、土でひねって彩色したもの、これは名物であった)、絵草紙、小間物こまもの、はじけ豆、紅梅焼、雷おこし(これは雷門下にあった)など
なし表向は船乘内證は博奕を渡世として子分も出來できしにより妻を向へしにかれ連子つれこの太七と云ふを實子の如くに不便ふびんを加へ月日を送り居たりけり其頃大坂堂島に彦兵衞ひこべゑと云者小間物こまもの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
西洋せいようのぜいたくな小間物こまもの
おもちゃ店 (新字新仮名) / 小川未明(著)