寸毫すんがう)” の例文
義雄の態度は寸毫すんがう假借かしやくしないと云ふ勢ひだ。そして、忿怒ふんどの爲めに、相手を見つめる目が燃えて來た。昇は然し左ほど熱しない。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
しか卯平うへい老衰らうすゐやうやくのことでけたこゝろそこわだかまつた遠慮ゑんりよ性來せいらい寡言むくちとで、自分じぶんから要求えうきうすることは寸毫すんがうもなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
勇三郎にかゝる疑ひには、寸毫すんがうの動きがなくとも、なにか新しい證據を、平次の慧眼けいがんで見付けられないものでもありません。
たとひ蒹葭堂コレクシヨンは当代の学者や芸術家に寸毫すんがうの恩恵を与へなかつたとしても、そんなことは僕の問ふ所ではない。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いやしく寸毫すんがうも世に影響なからんか、言換ふれば此世を一層善くし、此世を一層幸福に進むることに於て寸功なかつせば彼は詩人にも文人にもあらざるなり。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
親に対する孝道なり。家に対する責任なり。朋友に対する礼儀なり。親属にたいする交誼かうぎなり。総括すれば社会に対する義務なり。然も我に於て寸毫すんがうの益する処あらず。
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その燈の下で、彼は、最初、聖フランシスの伝記を愛読しようとした。けれども彼は直ぐに飽きた。根気といふものは、彼の体には、今は寸毫すんがうも残されては居なかつた。
平次の描いて行く事件の段取りは、實際と寸毫すんがうの喰ひ違ひもありません。幸右衞門は口を開いて聞き入るばかりです。
もし寸毫すんがうの虚偽をも加へず、我我の友人知己に対する我我の本心を吐露するとすれば、古への管鮑くわんぱうの交りと雖も破綻はたんを生ぜずにはゐなかつたであらう。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれいへかへつたのち瘡痍きずおもけようとするのには醫者いしや診斷しんだん寸毫すんがうかれ味方みかたしてなかつたからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それらの風景は、しばしば彼の目に現はれた。それの現はれる都度つど、それは前度のものとは決して寸毫すんがうも変つたところがなかつた。それもこの現象に伴ふところの一つの不思議であつた。
あかりに反いた内匠の顏は、心持少し蒼くは見えますが、決然たる辭色じしよくは、それにも拘らず、寸毫すんがうの搖ぎもありません。
彼等は尊徳の教育に寸毫すんがうの便宜をも与へなかつた。いや、寧ろ与へたものは障碍しやうがいばかりだつた位である。これは両親たる責任上、明らかに恥辱と云はなければならぬ。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
だ/\」といふそこに一しゆ意味いみふくんだ一てゝわかれるのである。ことには村落むら若者わかものあひだへは寸毫すんがう遠慮ゑんりよ想像さうざうともな陰口かげぐちたくましくせしめる好箇かうこ材料ざいれう提供ていきようしたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
手代風情にこんなところへ呼出された不愉快さを押し隱して、寸毫すんがうも引け目を感じない、やゝ嚴しい聲です。
たとへば神代の豪傑たる素戔嗚すさのをの尊に徴すれば、尊は正に千位置戸ちくらおきどの刑罰を受けたのに相違ない。しかし刑罰を受けたにしろ、罪悪の意識は寸毫すんがうも尊の心を煩はさなかつた。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
寸毫すんがうの隙もない相手の氣組と、その物凄い顏色、わけても思ひもよらぬ言葉に、さすがの平次も驚きました。
治三郎のお白洲の調べが平次の推理と寸毫すんがうの喰ひ違ひもなかつたことや、お關幾松母子が、平次の助力で平和な幸せな日を取戻したことは改めて書くまでもありません。
凄まじい殺氣、寸毫すんがうのたるみもないのは、此處で二人を音も立てさせずに成敗するつもりでせう。
懷ろ紙の中に入れて置いた、和泉屋の引窓の釘に引つ掛つてゐた、木綿屑を出して、その破れに當てて見ると、色も寸法もピタリと合つて、最早寸毫すんがうの疑ひもありません。
寸毫すんがうの油斷もなく守護いたしたが、——一昨夜いや昨日の曉方と申した方が宜い、あらうことか千兩の大金と共に御奉納品の品々、御墨附までけむりの如く消え失せてしまつたのぢや
沓脱くつぬぎの上にこそ膝を突きましたが、擧げた面魂つらだましいは、寸毫すんがうも引きさうになかつたのです。
その部屋の眞ん中に、座布團を半分敷いて、好い年増が引つくり返り、首に赤い扱帶しごきを卷いたまゝ、腰から下は、前褄まへづまをきりゝと合せて、寸毫すんがうの亂れもないのが不思議に目立ちます。
したゝかな四十男の表情は、若い主人を壓して、寸毫すんがうも讓る氣色はなかつたのです。
手口は四人とも判で押したやう、寸毫すんがうの違ひもありませんが、いづれも近々と傍へ寄つてやつたところを見ると、下手人は此界隈に住んで、犧牲者達の顏見知りの者でなければなりません。
お若の言葉は斷定的で、どんな人にも寸毫すんがうの疑ひも挾ませなかつたのです。
素より捕物の名人、寸毫すんがうすきもありませんが、困つたことに宗壽は思ひの外の剛力で、それに平次は、まる二日物を食はない上、廂から飛降りるはずみに足をくじいて、進退駈引自由になりません。
お時計紛失といふ重大事件がからんでゐるために、せめて錢形平次に現場を見屆けさせるまでと、笹野新三郎の入智惠でこゝへはあまり人も入れず、寸毫すんがうも模樣を變へないやうにしてゐるのだ——と
平次の説明は星を指すやうで、最早寸毫すんがうの疑ひもありません。
非常に落着いた、今度こそはの、寸毫すんがうも狂ひのない襲撃です。
斯う説き明かされて見ると、もう寸毫すんがうの疑ひも殘りません。
お藤の言葉には、寸毫すんがうも疑ひを挾む餘地はありません。
平次の用意には寸毫すんがうの手ぬかりも無かつたのです。
平次の論告は烈々として寸毫すんがうの假借もありません。