奸智かんち)” の例文
この様な大悪事を(彼自身如何様いかように弁護しようとも)たくらむ程の彼ですから、生れつき所謂いわゆる奸智かんちけていたのでもありましょう。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
扨も内記殿は左仲が樣子佞辯ねいべん奸智かんち曲者くせものと見て取り大いにあやしまれけれ共まづ一ト通り事をたゞして見んと思はれ猶又左仲にむかひ其方儀家の支配を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お杉の姐さんは女である、女の中でもぬきんでて女らしい女である、彼女の唇には狐族こぞくにみる奸智かんち嗜虐しぎゃくの微笑がうかんだ。
光秀の奸智かんちののしったのであろう。そううめきざま、山門の壁に身をぶつけると、そのまま倒れて息絶えた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奸智かんちにたけた鈴川源十郎、たちまちおさよを実の母のごとくうやまって手をついて詫びぬばかり、ただちにしょうじて小綺麗こぎれいな一をあたえ、今ではおさよ、何不自由なく
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
弟の滝三郎は武芸も学問もないが、奸智かんちだけは人の三人前もあるから、何をやり出すかわからない。
白蛇はくじゃのような奸智かんちしぼって、彼は計をめぐらした。最近に妻を寝取ねとられた一人の男がこのくわだてに加わった。シャクが自分にあてこするような話をしたと信じたからである。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それはとにかくこの善良愛すべき社長殿は奸智かんちにたけた弁護士のペテンにかけられて登場し、そうして気の毒千万にも傍聴席の妻君の面前で、曝露ばくろされぬ約束の秘事を曝露され
初冬の日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
秘密を保つ為に一服盛ったなとはほぼ推察は出来るのであったが、それもしかし金三郎と娘お綾との結婚の為には、邪魔が払えた勘定でもあるので、これは絶対に秘密にという小人の奸智かんち
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
彼は三年来生殺なまごろしの関係にて、元利五百余円のせめを負ひながら、奸智かんちろうし、雄弁をふるひ、大胆不敵にかまへて出没自在のはかりごといだし、鰐淵が老巧の術といへども得て施すところ無かりければ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いかにも勢力が鈍く不忠の人間は奸智かんちに富んで居るだけ、巧みに徒党を組みたやすく倒すことの出来ないように立ち廻って、宮中に瀰蔓はびこって居ると言う訳ですからどうもして見ようがない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ぜんか、法華ほっけか、それともまた浄土じょうどか、なににもせよ釈迦しゃかの教である。ある仏蘭西フランスのジェスウイットによれば、天性奸智かんちに富んだ釈迦は、支那シナ各地を遊歴しながら、阿弥陀あみだと称する仏の道を説いた。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まるで、ジゴマのように奸智かんちにたけた奴……
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
願ひし處却て右樣の御疑ひを蒙ることあまり殘念なりと云はせもはてず大岡殿大音だいおんに默止れ平左衞門汝未だも奸智かんちべんを以て公儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仮令対手あいては片輪者とは云え、奸智かんちにたけた兇悪無残な丈五郎のことだ、諸戸の身の上が気遣われた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
真心から熱い慈愛じあいをそそぎこめば、まがれる竹もまっすぐになり、ねじけた心もめなおせると信じているかれだったが、竹童はとにかく、蛾次郎の横着おうちゃく奸智かんち強情ごうじょうには
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奸智かんちにだけけて、武藝の心得の怪しい石卷左陣を取つて押へると、丁度八五郎は、下水の蓋になつてゐる御影石みかげいしを起して、その下から三百兩の金包と、碧血へきけつ斑々はん/\たる脇差を搜し出したのでした。
疑ふものならん汝が今申すとほりにてたしかなる證據有て申すが如し然らば其證據よりうけたまはらんと申されければ流石さすが奸智かんちの左仲なれども一句も出ず居るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
思うに、奸智かんちにたけたあの猿めに、うまうまたばかられたものでおざろう。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの奸智かんちけた賊のことだ、今夜の様なずば抜けた冒険の裏には、綿密細心な逃亡手段が準備されているに極っています。今頃あの小屋を包囲して見た所で、無論手遅れ、中はもぬけの空です
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
奸智かんちにだけけて、武芸の心得の怪しい石巻左陣を取って押えると、ちょうど八五郎は、下水の蓋になっている御影石みかげいしを起して、その下から三百両の金包と、碧血斑々へきけつはんはんたる脇差を捜し出したのでした。
何となれば、貞盛こそは、年来、相馬殿を亡くさんと、都と坂東ばんどうの間を往来し、あらゆる虚構と奸智かんちをかたむけて、主人将門殿を呪咀じゅそしている卑劣者だ。——その貞盛が、常陸に潜伏している。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奸智かんちな狐の隠れこんだ穴が悪い。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)