女御にょご)” の例文
みかど藤壺ふじつぼ女御にょごにお見せになることのできないことを遺憾に思召おぼしめして、当日と同じことを試楽として御前でやらせて御覧になった。
源氏物語:07 紅葉賀 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐう女御にょごなどの美名をつけ、声色をもって天皇をもてあそび、天皇の近親となり、天皇は、あたかも藤原氏の婿むこのようなものとなった。
ただの女御にょご更衣こういとはちがう。かりそめにもそなたは皇太子の御母。その皇太子を他の親王に代えるなどの儀は、つゆほども、考えてはいないことだ。
「へんはばかりさまだよ、女御にょごひいさまから橋の下の乞食まで女という女はこう出来たもんだ、お蔭でおめえなんぞも気が狂わずに済むだあ、この煮干の首っくくりめ」
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女御にょごきさきがねとよばれるきわの女性が、つくしびとにさらわれて、遠いあなたの空から、都をしのび、いまは哲学めいたよみものを好むとあれば、わたしのはかなんだロマンスは上々のもので
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
姉の女御にょごの所で話をしてから、夜がふけたあとで西の妻戸をたたいた。おぼろな月のさし込む戸口からえんな姿で源氏ははいって来た。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
清盛の妻時子の妹滋子しげこは、去年、女御にょごとして院の御一子を生みました。憲仁のりひと親王(後、高倉天皇)がそれです。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋風のにも虫の声にも帝が悲しみを覚えておいでになる時、弘徽殿こきでん女御にょごはもう久しく夜の御殿おとど宿直とのいにもお上がりせずにいて
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
もっとも歴世、後宮のひんには、大みきさきに次いで、女御にょご更衣こういなど、寵妃の数にかぎりはない制度だったので、ひとり後醍醐のみを怨じ奉る筋あいもない。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子ながらも畏敬いけいの心の女御にょごの所へこの娘をやることは恥ずかしい、どうしてこんな欠陥の多い者を家へ引き取ったのであろう
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「ここに手頃な毛抜きがありまする。それは准后じゅんごうの三位ノ廉子やすこさまです。あの女御にょごをつかうに限りましょう」
女御にょごにも女王にも琴はお教えにならなかったのであったから、このお稽古の時に珍しい秘曲もお弾きになるのであろうことを予期して
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
わけて、俄に明るさの流れていたのは、准后じゅんごうの一院やら、女御にょご小女房こにょうぼうなどのひそまっていた避難所だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妹の女御にょごのいる麗景殿れいげいでんに行く途中で源氏を見かけて、「白虹はくこう日を貫けり、太子ぢたり」と漢書の太子丹が刺客を秦王しんのうに放った時
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そしてただ多かったのは、准后じゅんごう廉子やすこ以下、あまたな女御にょごやそれにかしずく小女房たちの女人だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
更衣に三位さんみを贈られたのである。勅使がその宣命せんみょうを読んだ時ほど未亡人にとって悲しいことはなかった。三位は女御にょごに相当する位階である。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
いわんや、いくさにも敗れ、天子以下、両院や女御にょごの方々までを、こんなけんにさすらわせたのは、ひとえに自分の落度であると、めを、身一つにしていたようなのだ。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうした人たちは弘徽殿こきでん女御にょごがだれよりも早く後宮こうきゅうにはいった人であるから、その人の后に昇格されるのが当然であるとも言うのである。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
後宮もかずあるうえになお、二条家の美姫びき栄子を女御にょごに入れたのもごく近ごろのことである。
その下の女御にょごたちもよい後援者のついている人ばかりだからね。たいした後ろだてがなくて後宮の生活をするのは苦労の多いことに違いない。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
「……あの女御にょごだ。帝のおそばにいる一番あでやかなあの女御がゆうべのお人にちがいない」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御母君の女御にょごは新帝の御代を待たずにくなっていたから、きさきの位におのぼされになっても、それはもう物の背面のことになって寂しく見えた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
ほかの女御にょごたちの御消息は絶えてない。いずれはみな他家にゆうせられておわそうが、何とか共にここの御座ぎょざはべって、おうえの憂さをおなぐさめするようには計ろうてもらえぬか
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女の子は少なくてきさきの競争に負け失意の人になっている女御にょごと恋の過失をしてしまった雲井の雁だけなのであったから、大臣は残念がっていた。
源氏物語:25 蛍 (新字新仮名) / 紫式部(著)
何もべつに、源氏の君みたいに、女御にょごたちのひそかな世界を隙間すきま見たりなどしたわけではありませんが、おかどべの静けさ、お留守か、否かとおもいまどい、つい庭へはいりました。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どの天皇様の御代みよであったか、女御にょごとか更衣こういとかいわれる後宮こうきゅうがおおぜいいた中に、最上の貴族出身ではないが深い御愛寵あいちょうを得ている人があった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その人びとの間では、かりにその女性を、祇園女御ぎおんのにょごとよんでいた。女御にょご更衣こういは、宮中の称呼しょうこなので、わざと、地の名をつけてよび、世間には、退官の寵姫のように、見せつくろっていたのである。
女御にょごも一家の恥になるようなことを近江の君が引き起こさないかと、そのことではっとさせられることが多く、神経を悩ませていたが、大臣から
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
しかるに、永久五年、璋子は、鳥羽天皇の女御にょごとなり、ひいて元永元年、中宮ちゅうぐうに立たれたが、その後も、法皇は、おすきをあらためるふうがなく、鳥羽のおん目をかすめては、璋子を寵愛ちょうあいされていた。
この時に承香殿じょうきょうでん女御にょごの兄である頭中将とうのちゅうじょうが、藤壺ふじつぼの御殿から出て、月光のかげになっている立蔀たてじとみの前に立っていたのを、不幸にも源氏は知らずに来た。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
天皇上皇のきさき女御にょごともなり、一族、三公の栄位にならび、臣にして皇室の外舅がいきゅうともあがめられることはままあるならいなので、妊娠みごもった夫人が産屋うぶやにはいれば、藤氏とうしの氏神たる春日の社へ使をたてて
くなった太政大臣の女御にょごの腹からただお一方の内親王がお生まれになったのを、院が非常に珍重あそばすのに変わらず中将をお扱いになるのである。
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
どこの女御にょごかわからぬが、この悪人のにさせてはならぬ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この女が若盛りのころの後宮こうきゅう女御にょご更衣こういはどうなったかというと、みじめなふうになって生き長らえている人もあるであろうが大部分は故人である。
源氏物語:20 朝顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「もし、女御にょごたち」西仏が声をかけつつ近づいてゆくと
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女御にょごなどにも何かの場合に好意のない態度を露骨にお見せになりましたが、そのころは須磨すま時代の恨みが忘られないのだろうとあなたがお言いになり
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
今になってはじめて夢占いの言葉が事実に合ったことも思われたのである。最愛の娘である女御にょごにだけ大臣は玉鬘のことをくわしく話したのであった。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
叔母とめいとの二人の女御にょごの間には嫉妬しっとも憎しみも見えないのであるが、双方の女房の中には争いを起こす者があったりして、中将が母に言ったことは
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大臣の子として出て行くのも女御にょごがいられるのだから不都合だしと煩悶はんもんしているそのことも言っているのですよ。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
春になったがみかど御悩ごのうがあって世間も静かでない。当帝の御子は右大臣のむすめ承香殿じょうきょうでん女御にょごの腹に皇子があった。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
女御にょごのあの後見役はたいしたものではあるまいと軽く見てかかった相手ですが、それが心の底の底までは見られないほどの深い所のある女でしたからね。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
弘徽殿こきでん女御にょご藤壺ふじつぼの宮が中宮になっておいでになることで、何かのおりごとに不快を感じるのであるが、催し事の見物は好きで、東宮席で陪観していた。
源氏物語:08 花宴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
お母様の女御にょごは私の叔母おば様でいらっしゃるわけですから、その続き合いで私を大目に見てくださるでしょうか
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
女御にょごよりもかえって雲井の雁のほうが幸福ではなやかな女性と見えるのを夫人や、そのほうの女房たちは不快がったのであるが、そんなことなどは何でもない。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
自分の娘を源氏の妻に進めることは不名誉なことであるはずもない、宮仕えをさせると源氏が言い出すことになれば女御にょごとその母などは不快に思うであろうが
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
院は東宮の御母君の女御にょごが御教育のかいの見える幸福な女性になっていることも、だれよりもすぐれた左大将の存在もうれしく思っておいでになるのであるが
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
女御にょごの所へ来させることにして、馬鹿ばか娘として人中に置くことにさせよう、悪い容貌ようぼうだというがそう見苦しい顔でもないのであるからと思って、大臣は女御に
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)
つまらぬことに感情を動かすのが女御にょごきさきの通弊ですよ。それくらいの故障もないとお思いになって宮廷へお上げになったのですか。御認識不足だったのですね。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
中宮ちゅうぐう女御にょごも不快に思われるに違いない、そして自分は両家のどちらにも薄弱な根底しかない娘である。
源氏物語:30 藤袴 (新字新仮名) / 紫式部(著)
麗景殿れいげいでん女御にょごといわれた方は皇子女もなくて、院がおかくれになって以後はまったくたよりない身の上になっているのであるが、源氏の君の好意で生活はしていた。
源氏物語:11 花散里 (新字新仮名) / 紫式部(著)