大体だいたい)” の例文
旧字:大體
しかしそれなら尚更なおさらわたくし申上もうしあげることがよくおわかりのはずで、神社じんじゃ装置そうちもラジオとやらの装置そうちも、理窟りくつ大体だいたいたものかもれぬ……。
君が鰡堀りゅうぼり出会であったのも大体だいたい同種の物だろう、と云いおわって、他を語りごうも不思議らしくなかったのが、僕には妙に不思議に感じられた。
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
そのときすでに研究けんきゅうは、九どおりできあがっていたんだ。その大体だいたいのことは、浮浪者ふろうしゃがもちげしたノートに、暗号あんごうをつかって書いてある。
目のまわりも黒いかさをとっている。しかし大体だいたいの目鼻だちは美しいと言っても差支えない。いや、端正に過ぎる結果、むしろけんのあるくらいである。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
飛躍する気持になりい。何物かにうて恍惚こうこつとした情熱にわれを忘れたい。大体だいたいこういう気風である。だが、世上一般の実状はその反対をしいている。
南明館なんめいくわんあたりのくら横町よこちやうはじめてくち利合きゝあひ、それからちよく/\をとこ下宿げしゆくへも出入しゆつにふした事情じゞやう大体だいたいわかる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
一つのさかずきからは、ハッキリした被害者ひがいしゃ指紋しもん検出けんしゅつされたが、ほかの一つには、なにかでふいたものとえて、全然ぜんぜん指紋しもんがついていない。しかしこれで大体だいたい推測すいそくはついた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
大体だいたいからいうと、昔話はだんだんと興味深くなり、笑って聴くようなものが多くなってきている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
例えばあの世に行けばんなが神様のおやしろみたいな所へ入って、朝から晩までお勤行つとめをしているというような事や、空中を白い着物を着て飛んで行ける事や、大体だいたい野原で
けれども自分じぶんでそれをやったおぼえはございませぬ。きょうとはちがって東国とうごく大体だいたい武張ぶばったあそごと流行はやったものでございますから……。
が、大体だいたいあなたの問題は「どんな要求によつて小説を書くか」と云ふ様な事だつたと記憶してゐます。その要求を今便宜上、直接の要求と云ふ事にして下さい。
紙と林檎との接したところは、大体だいたい輪になっているからである。そこで、人間が、林檎をもち上げると、二次元の世界から、直ちに林檎は消え失せる。ただ林檎の匂いだけは残る。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
本能が、私をそうさせて何かを聴かせているらしい。桃林の在るところは、大体だいたい川砂の両岸にあふれた軽い地層である。雨でほどよく湿度を帯びた砂に私の草履ぞうり裸足はだしを乗せてしなやかに沈んで行く。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これでもうなぞは、大体だいたいけてしまつたのとおなじになる。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
大体だいたいおいもうしますと、天狗てんぐ正体しょうたい人間にんげんよりはすこおおきく、そして人間にんげんよりはむしけものり、普通ふつう全身ぜんしんだらけでございます。
彼等は彼を残したまま、——或は大体だいたい彼に近い何人かの人々を残したまま、著々ちやくちやくと仕事を進めて行つた。彼は旧友に会ふたびに今更のやうに愚痴ぐちをこぼしたりしてゐた。
或社会主義者 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
不良少年に口説くどかれた女がきわどい瞬間におならをする、その為に折角せつかくかもされたエロチツクな空気が消滅する、女は妙につんとしてしまふ、不良少年も手が出せなくなる——大体だいたいかう云ふ小説だつた。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)