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ぢひゞき
何にも
捕らなかつたが
小さな
叫び
聲と
地響と
硝子の
破れる
音とを
聞きました、
其物音で
愛ちやんは、
兎が
屹度胡瓜の
苗床の
中へでも
落ち
込んだに
違ひないと
思ひました。
が、ぶくりとして、あだ
白い、でぶ/\と
肥つた
肉貫——(
間違へるな、めかたでない、)——
肉感の
第一人者が、
地響を
打つて、
外房州へ
入つた
女中だから、
事が
起る。
されば貴人の馬車富豪の自動車の
地響に
午睡の夢を驚かさるゝ恐れなく、夏の
夕は格子戸の外に裸体で凉む自由があり、冬の
夜は置炬燵に隣家の三味線を聞く面白さがある。
所へ遠くから
荷車の
音が聞える。今、静かな横町を
曲つて、
此方へ近付いて
来るのが
地響でよく
分る。三四郎は「
来た」と云つた。美禰子は「
早いのね」と云つた儘
凝としてゐる。
黒ずんだマロニエの
木立に白樺がまじつて居て
落葉の中に
所所水溜が木の影を映して居る。縦横に交叉して居る大きな
路は
時時馬車の
地響を挙げ
乍ら、
其先は深い自然林の中に消えて
仕舞ふ。
私は
耐らず
真逆に
瀧の
中へ
飛込んで、
女瀧を
確と
抱いたとまで
思つた。
気がつくと
男瀧の
方はどう/\と
地響打たせて、
山彦を
呼んで
轟いて
流れて
居る、あゝ
其の
力を
以て
何故救はぬ、
儘よ!