囚人めしゅうど)” の例文
「昔平ノ重衡しげひらは、囚人めしゅうどとして東海道を、関東へ降る道すがら、何んとかいううまやじで白拍子の千寿と……で、わしも……行こう、亀千代」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
英国大使館はナリン太子を待遇するに鄭重ていちょうなる「囚人めしゅうど」の礼をもってしていたことを私はこの眼でハッキリと意識したのであった。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
また彼らの好きな袖の下をたんまり握らせ、そのあいだ囚人めしゅうどの雷横を、そっと裏の雑木林へつれて行き、手鎖てぐさりを解き首枷くびかせはずしてやった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一同の囚人めしゅうどが徒党を組んですでに屋敷へ押懸けようと云うところを、此の文治が止めたが、ついあやまってお前の夫を殺してしまったのは誠に気の毒の事であった
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
万一わたしが帰って来なければ、お前さんは囚人めしゅうどを取り逃がしたというので流罪るざいになるかも知れませんが、これまで私のあげた物で不自由なしに暮らして行かれる筈です。
囚人めしゅうど風呂で構やしません、灰洗あくあらいにするつもりでゴシゴシやって頂きたいんで
「そうだ、まだおそくはない。これからすぐに駈けつけよう! 吉良邸へ駈けつけて、まだ一党が引上げないうちであったら、同士に詫びて、せめて公儀へ召しあげられる囚人めしゅうどの中へでも入れてもらおう!」
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
自由に生れた、クレタ人のこの婆々が、囚人めしゅうど、奴隷に
よほど凶悪な囚人めしゅうど!……でもあるかと思うと。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まず知っているとして置こう。あの老人は人物だ。徳川家の忠臣だ。しかし一面囚人めしゅうどなのだ。同時に徳川家の客分でもある。捨扶持すてぶち五千石を
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると囚人めしゅうどたちは、われがちに、その僅かな太陽の光を取囲んで、爪の伸びた足の先だの、ろうみたいな青い手だのを差し伸べ
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文治は上々の首尾にて白洲を引取り、うなる事かと心配して居りました徒党の囚人めしゅうど一同に向いまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのあとへ楊厚ようこうという人が赴任した。ある日、楊が役所に出ていると、数人の者が手枷てかせや首枷をかけた一人の囚人めしゅうどをつれて来て、なにがし村の一件の御吟味をおねがい申すといって消え失せた。
「我々の太子殿下は囚人めしゅうどではない!」
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
お奉行の腹心がたが、大牢から引きずり出したとみえる一人の囚人めしゅうどをしょっいて、林のおくの方へ入って行きましたのじゃ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と聞いて囚人めしゅうどは顔と顔とを見合せて、少しくひるみました様子でございます。先に立ちたる二三の者は
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「これはこれは山海の珍味、さあ市之丞殿芳江殿、遠慮なくいただこうではござらぬか。我らは大事の囚人めしゅうどじゃ。まさかに毒をくれもしまい。どりゃ、愚老から毒味致そう」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まるで囚人めしゅうどあつかいに、くくり駕籠へ押しこまれ、半蔵御門の近くまでかつがれて来たあげく、外濠あたりへ捨てられたんです。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其の旨を御老中へ御沙汰に相成り、御老中からたゞちに町奉行へ伝達されましたから、筒井和泉守様は雀躍こおどりするまでに喜ばれ、十一月二十九日に長二郎を始め囚人めしゅうど玄石茂二作
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一人の侏儒こびとが長い廊下を、巨大な頭を左右に振り、子供のようにヨチヨチした歩みで、でも一生懸命にはしりながら、廊下の左右に出来ているところの賓客——むしろ囚人めしゅうどともいうべき
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『徒党の罪、兇器の罪、高位の御方を殺害の罪、挙げて数うれば五指に余る国法の大罪を犯した者、囚人めしゅうどに相違なかろう』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしてまことに不思議なことには、この城の他の囚人めしゅうどたちは、この城の中ならどこへなりと大概の所へは行くことを許され、ほとんど自由を許されていたのに、彼ばかりには許されていなかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人間的には、ごく囚人めしゅうど、野の乞食こつじきよりも、悲惨な末路をとげ給うた崇徳の君のおくつきに、今は、西行法師ならぬマックラウド氏が腰かけている。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
修験者とか島原城之介とか、さような囚人めしゅうどはおりませぬよ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ウム、お風邪のことは前日承っておったが、大事な囚人めしゅうど、ずいぶん手落ちのないように召され、何かの処置は、追ってお沙汰が下がるであろう」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより罪人つみびとではないので、客の来訪や出入りは自由だった。これが囚人めしゅうどならここへは来ない。直接、侍所ノ別当へ廻され、断獄されるまでである。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
穴山梅雪はまだ眠たげなまぶたをしていた。重大な囚人めしゅうどを主君から預けられたので、ゆうべはよく眠り得なかったらしい。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だいじな囚人めしゅうど、鎌倉へ行きつかぬまに、病気させては、落度になろう。宿の予定をかえて、民家でも寺でもさがせ」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「兄貴、じつアついさっき、二人の端公と、色の黒い小づくりな首カセの囚人めしゅうどを、例のしびれ薬でねむらしちまった。もしやそれじゃあねえかしら」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大勢の囚人めしゅうどが、小男の顔をのぞいて、いちどに笑ったので、牢獄の闇は何十日ぶりで——いや何百日目といってもよいだろう、陽気などよめきにいた。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
傲岸ごうがんな調子で吠えかけた。もう縄にかけた囚人めしゅうど扱いである。一角の言葉は、ピューッという風雨が横から声をさらって、ちぎれちぎれにかすれて聞こえる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おう、よもや縄目のはじは与えもしまいし、また、受けもせぬが、申さば“放ち囚人めしゅうど”というかたちでの、明朝、六波羅武士の迎えにまかせ、東国あずまへ下る」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや退かん。おれどもは、日頃の新田党ではない。鎌倉どのの御直命で、囚人めしゅうどの警固に当っておる者だぞ」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、かれを、一族の囚人めしゅうどとし、もしまた、勃然ぼつぜんと、反抗を起して、ふたたび従兄の亀次郎のあとを追うようなことでも起ったら、もう取り返しはつかない。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(ふしぎだ、いよいよおかしな奴だ、死罪になる囚人めしゅうどへ曲を手向たむけている奇特な虚無僧かと思ったが、あの様子では、何か郁次郎に縁の深い人間に違いない)
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、は、尊氏の和議を容れてこれへかえったのじゃ。直義が対象の人ではない。しかるに、囚人めしゅうどにひとしいこのあつかい。これでも約をたがえておらぬというか」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな歌も侍者の公卿に口誦くちずさまれたほど、この日の道では、囚人めしゅうどと武士との間も、なごやかだった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
囚人めしゅうどのおん身なれば、刃ものは参らせるわけにゆきませぬが、お心の届くように計らいましょう」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やっかいな囚人めしゅうどだ。ま、仕方がない。裏の堂守どうもりに言って、かゆの汁でも母子にくれてやるがいい」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「五分と五分の人間ではないか。しかもここにいれば帝とはいえど一囚人めしゅうどにすぎぬ」と、しいて思惟しいしながら、一たんはずかずかお縁さきまで歩き寄って行ったのだが
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国法を犯した囚人めしゅうどである。内蔵助をはじめ、誰も皆、こんな優遇は夢にも期待していなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他力易行いぎょうの行者は、ありのままこそ尊い、配所の囚人めしゅうどであれば囚人のままで、在家ざいけにあれば在家のままで、ただいつも、本体の弥陀のすがたを、しかと見て、見失わずに——
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外にまで張番はりばんを付けておくとは、まるでこの万太郎という者を囚人めしゅうどあつかいだ。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを、ただの囚人めしゅうどと同視なされる御心底は、あなたも武士かと問いとうなる
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
書中には「——この便りは足利家の情による」ともしたためてあった。そうだろう、と宮はうなずかれた。囚人めしゅうどの忠円に、足利家が手厚くしてくれているという消息も、何かでお耳に入っていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このへんでよかろう。なにせこんどのご処刑は首かずが多いのだから、矢来やらいもひろく取らねばならんし、獄門台も渡してある図面どおり幾ツも要する。ここらを中心に、まず囚人めしゅうどのツナギぐい
使者は、陳珪ちんけい老人の子息陳登ちんとうであり、囚人めしゅうどは、袁術の家臣、韓胤かんいんであった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関ヶ原で捕えられて先頃からここに幽閉ゆうへいされている囚人めしゅうど頼朝であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「少しぐらい金になるからって、囚人めしゅうどみたいに、体を縛られる働きに出るなど、いやなこった。おれだって、いつまでも西瓜売りじゃいねえつもりだ。なあ朱実、当分貧乏暮しでも、辛抱しようぜ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猿が真顔で答えると、まわりの囚人めしゅうどたちもまた、指さし合って
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)