ざき)” の例文
「さやうで御座います。来月あたりに成りませんと、余り咲きませんので、これがたつた一つ有りましたんで、まぐざきなので御座いますね」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かすみせきには返りざきの桜が一面、陽気はづれの暖かさに、冬籠ふゆごもりの長隠居、炬燵こたつから這出はいだしたものと見える。往来おうらい人立ひとだちだ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
時雄はさる画家の描いた朝顔のふくを選んで床に懸け、懸花瓶けんかびんにはおくざき薔薇ばらの花をした。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
としはゞ二十六、おくざきはなこづゑにしぼむころなれど、扮裝おつくりのよきと天然てんねんうつくしきと二つあはせて五つほどはわかられぬるとくせう、お子樣こさまなきゆゑ髮結かみゆひとめひしが、あらばいさゝか沈着おちつくべし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ここには葉ばかりでなく、おくざきか、返り花が、月に咲いたる風情を見よ、と紫の霧を吐いて、杜若かきつばたが二三輪、ぱっと花弁はなびらを向けた。その山のに月が出た。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ときふゆ小春日こはるびかへざきにもあや何處いづこにかたる。昌黎しやうれいきつおもてにらまへてあり。韓湘かんしやう拜謝はいしやしていはく、小姪せうてつ藝當げいたうござさふらふりてしよまずまたまなばざるにてさふらふ
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
七兵衛は螇蚸ばったのような足つきで不行儀に突立つったつと屏風の前を一跨ひとまたぎすぐに台所へ出ると、荒縄には秋の草のみだれざき、小雨が降るかと霧かかって、帯の端衣服きものすそをしたしたと落つるしずくも、萌黄もえぎの露
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)