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可忌
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いまは
呼ばれた
坂上は、
此の
聲を
聞くと、
外套の
襟から
先づ
悚然とした。……
誰に
似て
可厭な、
何時覺えのある
可忌しい
調子と
云ふのではない。
常に
可忌しと思へる物をかく
明々地に見せつけられたる貫一は、
得堪ふまじく
苦りたる
眉状して
密に目を
翥しつ。
私は
胸が
裂けるほど
亭主の
言葉が
気に
障つた。
最う
死骸に
成つてる、と
言つたやうな、
奴の
言種が
何とも
以て
可忌しい。
荒尾は
可忌しげに
呟きて、
稍不快の色を
動せり。
月の
影、
日の
影、
燈の
影、
雪、
花の
朧々のあかりにも、
見て
影のない
隙はなし……
影あれば
其の
不氣味さ、
可厭さ、
可恐しさ、
可忌しさに
堪兼ねる。
と
遥かに
犬が
長吠して、
可忌しく
夜陰を
貫いたが、
瞬く
間に、
里の
方から、
風のやうに
颯と
来て、
背後から、
足代場の
上に
蹲つた——
法衣の
袖を
掠めて
飛んだ、トタンに
腥い
獣の
香がした。
けれども、
可厭な、
可忌しい
聲を
聞かずには
濟むまい、と
思ふと
案の
定……