取調とりしらべ)” の例文
浪人原口作左衛門を、禁断の鍼で殺したという家人のうったえで、按摩佐の市は、時の南町奉行、遠山左衛門尉とおやまさえもんのじょう直々じきじき取調とりしらべを受けて居ります。
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一時は口もかれぬ程の重態であった坑夫ていの負傷者も、医師の手当てあてよって昨今少しく快方に向ったので、警官はただちに取調とりしらべを始めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そろへ與市にちがひなき由申ければ淡路守殿如何に勘兵衞其方儀かね怪敷あやしきかどこれあるにより取調とりしらべに及びし處海賊の與市に違ひなし眞直まつすぐに舊惡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
熱海あたみ予審判事、警視庁の戸山第一捜索課長以下鑑識課員、大森署より司法主任綿貫わたぬき警部補以下警察医等十数名現場げんじょうに出張し取調とりしらべを行ったが
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
祈ると同時に大原君が家庭教育取調とりしらべの任をおわって海外から御帰朝なさる時分には我邦の社会にもまた野蛮的の飲酒会さけのみかい淫猥いんわいなる宴会のあと
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
警視庁では、K刑事の上役の捜査係長が取調とりしらべを担当して、終日ゴリラ男と根比こんくらべをして見たが、結局何のる所もなかった。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
平岡の云う所によると、赴任の当時彼は事務見習のため、地方の経済状況取調とりしらべのため、大分忙がしく働らいてみた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
誰でも可い、何をするととがめりゃ、黙れとくらわす。此女こいつ取調とりしらべの筋があるで、交番まで引立ひったてる、わしは雀部じゃというてみい、何奴どいつもひょこひょこと米搗虫こめつきむしよ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三日間、のべつに取調とりしらべがつづけられ、目賀野が陳述ちんじゅつした重要事項は、次のようなことであった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
西村の死骸をはうむつた浅草遍照院へんせうゐん所化しよけ尭周げうしう等が呼び出されて、七月十六日から取調とりしらべが始まつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
役人が私方に来て懇々内談するその様子は、この取調とりしらべさえ出来れば何か礼をするとうように見えるから、此方こっちは得たり賢し、おやすい御用で御座ござる、早速さっそく取調べて上げましょうが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それも一度や二度のことでなく、前年の五月から怪しい事が続くと云うので、県庁でも捨て置けずとあって、兼五郎の家へ人をやって取調とりしらべさしたが、原因も判らず相変らず怪しい事が起った。
唖の妖女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
改めて明くる日取調とりしらべられた時も、真砂座へ行つて居た事が判ると、委員長の小倉と云ふ男が芝居好で、自分達とよく大入場おほいりばなどで落合うた仲なので、訳なく事済みになつたのは可笑をかしかつた。
学生時代の久米正雄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
暇さへあると何か取調とりしらべを始める。
なし直樣水呑村へとぶが如くに參りし故あとの事は一向に心得申さずと云ふ然るに當時そのころ石川安五郎の一件駿府町奉行にて取調とりしらべられ彌々いよ/\大門番の重五郎は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三人が警察の門を出た時には四隣あたりがモウ真暗になっていた。生れて初めて警察官の取調とりしらべを受けた又野は、すっかり毒気を抜かれたせいであったろう。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼が不得要領ふとくようりょう申立もうしたてをすればるほど、疑惑うたがいの眼はいよいよ彼の上にそそがれて、係官は厳重に取調とりしらべを続行した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
布引氏が、この椿事ちんじを警察に訴え出たことは云うまでもない。急報に接して、検事局、警視庁、所管警察署から係り官が駈けつけ、直ちに綿密周到なる取調とりしらべが行われた。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
役人の取調とりしらべにつれて、関所手形を贋造して、小田原の旅籠屋はたごやの怪し気な客引きに売らせ莫大な利益を取り容れていた、万田九郎兵衛の非曲はことごとく知れましたが、山浦丈太郎の功をねたむ者があって
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
一方に西村のにせ母親は、憤慨の余り縊死いししていることが昨朝に至って発見されたので、早速係官が出張して取調とりしらべの結果、他殺の疑いは無いことになった。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
申達しんだつせらるゝに伊豆守殿も捨置すておかれずと御評議ひやうぎの上小石川御館おやかたへ此段申上られける此時このとき中納言綱條卿思召おぼしめさるゝ樣奉行越前病氣びやうきとゞけ致せしは自ら紀州表へ取調とりしらべに參し者かたゞしは家來を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一方には倫陀療養院から召喚された東作爺が、ロスコー家裏手の日本屋自室で、厳重な取調とりしらべを受けたのであったが、その申立もうしたての内容にも、相当に怪奇な分子が含まれていた。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
コイツは又迷宮入りかな……といった感じが、そんな取調とりしらべの最中にピンと頭へ来たがね。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
数次の取調とりしらべによってヤット了解された事を附記し得るのみである。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)