さり)” の例文
他の人に見咎みとがめられなば一大事と二足三足さりかけしが又振返りさしのぞ嗚呼あゝ我ながら未練みれんなりと心で心をはげましつゝ思ひ極めて立去けり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
是程の麗わしきお辰、何とてさもしき心もつべき、さりし日亀屋かめやの奥坐敷ざしきに一生の大事と我も彼もうきたる言葉なく、たがいに飾らず疑わず固めし約束
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かんさり玉ひしのち水旱風雷すゐかんふうらいの天へんしば/\ありて人の心安からず。是ぞ 菅公のたゝりなるらんなど風説しけるとかや。
「タマル、灰をこうべかむり、着たる振袖ふりそでを裂き、手をこうべにのせて、よばわりつつさりゆけり」可愛そうな妹タマル。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
その手に属したお茶ッぴい連も一人去り二人さりして残少のこりずくなになるにつけ、お勢も何となく我宿恋しく成ッたなれど、まさかそうとも言いねたか、漢学は荒方あらかた出来たとこしらえて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
我ら病重くして庸医をさりて名医に行くがごとく、名医もなお我らを治する能ざる時は神なる最上の医師に至るなり、庸医が我の病は不治なりと診断する時は我は絶望にしずむべきや、いなしからず
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ここにはじめて妻の死したるをさとりて、大いにさけびて倒れ伏す。さりとて何の年、何の月日に終りしさへしらぬ浅ましさよ。人はしりもやせんと、涙をとどめて立ち出づれば、日高くさしのぼりぬ。
どうして帰りさりつることが出来ただろう? 第二に、庭を通れば壁や梯子を掛けねばならぬが、そこには何等の形跡をも、何等怪しむべき点をも見出すことが出来ないのはどうしてだろう? 第三に
あなたはこの世をおさりなすっても
かんさり玉ひしのち水旱風雷すゐかんふうらいの天へんしば/\ありて人の心安からず。是ぞ 菅公のたゝりなるらんなど風説しけるとかや。
惣内九郎兵衞はかほを見合せ點頭うなづきながらそつと其紙入そのかみいれを取かくし法事も濟し後何喰なにくはぬ顏にて其場を立さり途中へ出て彼の紙入を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
世の慾を捨てし我らなればその芳志こころざしうくるのみ、美味と麁食とをえらばず、わずかに身をば支ふれば足れりといふにぞ、便すなわち稗の麨を布施しけるに、僧は稗の麨を食しおわりてさりたりける。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
さては我をみちびきたる也と熊のさりし方を遥拝ふしをがみかず/\礼をのべ、これまつたく神仏の御蔭おかげぞとお伊勢さま善光寺ぜんくわうじさまを遥拝ふしをがみうれしくて足の蹈所ふみどもしらず、火点頃ひとぼしころ宿へかへりしに
さりにける不仕合せもつゞけば續くものにて惣領そうりやうの松吉も風邪かぜの心地とて打臥しが是も程なく冥土よみぢの客となりしかば跡に殘りし母とよめの悲歎云うばかりなく涙に暮果くれはて暗夜あんや燈火ともしび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてこゝをさりれい細道ほそみちをたどり、たかきにのぼりひくきくだり、よほどのみちをへてやうやく三倉みくら村にいたれり、こゝには人家じんかげんあり、今朝けさ見玉みたま村より用意よういしたる弁当べんたうをひらかばやとあるいへに入りしに