勝鬨かちどき)” の例文
明智光秀の軍隊はやにわに亀岡から下りて参りまして、本能寺を取り囲んで、ドッとばかり勝鬨かちどきをあげて、弓、鉄砲を打ちこんだ。
その中で築地から月島への勝鬨かちどきの渡し、市の小蒸汽に曳かれて威勢よく往ったり来たりは、渡し船最後の繁昌を見せていた。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
一同、勝鬨かちどきの声をあわせて、万歳を三唱した頃、長江の水は白々と明け放れ、鳳凰山ほうおうざん、紫金山の嶺々に朝陽あさひは映えていた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬場は歓呼の声にどよめきあがった、まさに勝鬨かちどきの声であった。そのどよめきのために、馬場から土煙が巻きあがった。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかも同商売の岡っ引を縛って勝鬨かちどきを揚げていたのは、戸塚の子分らの大失敗であった。やがて駈けつけて来た市蔵は、半七の顔を見てびっくりした。
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
霧が流れるたびに、勝鬨かちどきの可動橋の巨大な鉄骨の側面が、水に洗われるように見えたり隠れたりしている。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しかし家にいる時には、もうなんの拘束もなかった。彼は足を踏み鳴らした。勝鬨かちどき喇叭らっぱを奏した。母はそれに慣れてきて、ついにはその意味をさとるようになった。
おまけにひどいびっこ引きだったが、依然として勝鬨かちどきを挙げるようにへへへへとわらい続けている声がかすれがちに聞えて来た。娘さんが愉快そうにくすくすとわらった。
親方コブセ (新字新仮名) / 金史良(著)
築山の上では、地鶏がもう一度勝鬨かちどきをあげた。それから、土を掻いて、くっくっと牝鶏を呼んだ。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そして新しく起った自分の中の敵が勝鬨かちどきを挙げるのですから、こんな苦々しい事はありません。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一同は勝鬨かちどきをあげて壮い木客を伴れて小舎の中へ入ったが、その時はもう黎明れいめいに近かった。
死んでいた狒狒 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
殺された屍をふむける殴る思うさま憤怒を叩きつける——どっと打ち上る勝鬨かちどきの烽火——
死ぬる迄土地を守るのだ (新字新仮名) / 今村恒夫(著)
万豊が地団太じだんだを踏みながら引き返してゆく後姿が栗林の中でまだらな光を浴びていた。線路の堤に、青鬼、赤鬼、天狗、狐、ひょっとこ、将軍などの矮人こびと連が並んで勝鬨かちどきを挙げていた。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
辛辣苛酷しんらつかこくな運命のしいたげの下に、か細きうめきをあげる人間が、その意志の力をもって、ついに運命に打ち勝ち、勝鬨かちどきも高らかに最後の勝利へと突き進むのがこの曲の内容である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
太刀、長刀の切先にこの首を突きさした平家の軍勢は勝鬨かちどきをあげ、勇みわめきながら帰途についたが、その騒ぎは大きかった。斬り落した首をかかげた軍勢が六波羅についたのは夕方近かった。
ゆえに世間の笑いをくるため心ならずも、標準ひょうじゅんの決勝点を引下げ、いさぎよからずと思いながらも、俗界の喜ぶ勝鬨かちどきを挙げんとする者が多くなり、しかしていわゆる失敗者となるを不本意ふほんいとするにいたる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
西も東も南も北も勇ましい歓喜の勝鬨かちどき。聞くからにむねおどる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
山のうへのみ寺に来り見さくるや勝鬨かちどきあぐる時にし似たり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ひた攻めのぼるつはもの勝鬨かちどきすでに年りぬ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
どうま声で勝鬨かちどきを揚げさせて下さい。
勝鬨かちどきをあげようとした君が
先駆者 (新字新仮名) / 中山啓(著)
揚げよ勝鬨かちどき手を延べて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ところへ、一手の将と部下が、勝鬨かちどきをつつみながら駈け登って来た。そして信長のまえに、浅井長政以下の首を披露した。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎は飛んで行きましたが、間もなく勝鬨かちどきをあげて歸つて來たのです。
七十日の祈りもしっかいくうとなって、悪魔が調伏の壇にのぼって勝鬨かちどきをあぐるとは、しょせん泰親の法もすたった。かみに申し訳がない、先祖に申し訳がない。左大臣殿や少納言殿にも申し訳がない。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
十月の紫の日の勝鬨かちどきは敗惨の中にきざしていたではないか。
プチロフ工場 (新字新仮名) / 今村恒夫(著)
おりから、法師野ほうしのの空にあって、三りゅう陣鐘じんがねが鳴りわたるを合図あいずに、天地にとどろくばかりな勝鬨かちどきの声があがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、武者ぶるいする身心地を取りかえして、遅れじと、藤吉郎につづいて、勝鬨かちどきの聞える丘のほうへのめッて行った。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さらに、白馬にまたがった玄徳のすがたが、これへ見えると、諸軍声をあわせて、勝鬨かちどきをあげながら迎えた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、田楽狭間でんがくはざまの高地で、わあッ、わあッ、わあッ——と、天地もゆるがすような勝鬨かちどきが三度ほど聞えた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここでは万雷のような勝鬨かちどきが上がった。とりことした彭玘は、ただちに泊兵の手で後陣へ遠く送りこまれる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……尊氏め、それを知って、おれを今日の難場に使ったな」とは思ったが、しかし彼の上には勝鬨かちどきが沸いていた。悪感情もたちまちそれに吹き消されていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、期せずして、万歳をさけぶと、その動揺どよめきに和して、味方の全軍も、いちどに勝鬨かちどきをあげた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
落ちて来るうしろに、天地もゆるがすばかり、敵の勝鬨かちどきが聞えました。鷲津も丸根もあの辺り、すでに眼に見えるもの耳に聞えるものは、敵軍でないものはござりませぬ
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
引分けの銅鑼どらが鳴る。索超の部下は、万雷のような勝鬨かちどきをあげたが、楊志の方には、歓呼もない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謳歌おうかしてまず、八幡原に踏みとどまって、堂々、勝鬨かちどきの式まで行って、甲府へひきあげた。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の部下は、声をからして、勝鬨かちどきをあげ、狂せんばかり、常陸の国土を、蹂躪し廻った。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、呂布はその席で、こう演舌して、一斉に、勝鬨かちどきをあわせ、また、杯をあげた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこにも、累々るいるいたる死骸と、先の兵馬とは比較にならない意気を持った将卒が、八方へ敵を駈けちらして首をあげるごとに、名乗り揚げ、勝鬨かちどきをあげして、しかも整々と陣形をすすめていた。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山もゆるがす勝鬨かちどきをあげながら蜀兵はうろたえ惑う龐統軍へおめきかかった。何かはたまるべき、荊州の兵は、釜中ふちゅうの魚みたいにただ逃げ争って蜀兵の殺戮さつりくにたいし、手向う意志も失っていた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長の声は、もう和田山の上にった。いちはやく立てた旌旗せいきひる近い太陽の下に鮮やかに見える。血と泥にまみれた将士は、追々に麾下きかへ集まった。そして、勝鬨かちどきをあげて、午の兵糧を喰った。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たったひとりの少女を生けどるのに四天王てんのうともある者や、多くの荒武者あらむしゃが総がかりとなったのは、大人おとなげないとずべきであるのに、かれらは大将の首でもとったように、ワッと、勝鬨かちどきをあげながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝鬨かちどきとも、爆笑の嵐ともつかない声が、うしろで聞えた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、勝鬨かちどきも揚げさせていなかったほどなのである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、勝鬨かちどきがとどろいた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、勝鬨かちどきをめいじた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
汝ら、まだ勝鬨かちどき
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝鬨かちどき、勝鬨」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝鬨かちどき
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)