ろう)” の例文
旧字:
且つまた、本当の安楽は、世の見て以ていつとするところに存在せずして、見て以てろうとするところに存在するのではございますまいか。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日頃我儘わがまま気性きしょうの彼女だったが、弟を殺された一郎に同情したものか、快くこのろうをとって支配人の承諾を得させたのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
然し千歳村は約千町歩の面積めんせきの内、田はやっと六十町歩に過ぎぬ。田のろうは多くない。馬を使う程でもない、と皆が云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大富おおとみからのびとと聞いたおまさは手のものをげだしてきた。懇切こんせつに使いの人のろう感謝かんしゃしたうえに、こまごまと死者のうえについての話を聞こうとする。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かく神様かみさまんなききわけのないわたくし処置しょちにはほとほとおかれたらしく、いろいろとをかえ、しなをかえて御指導ごしどうろうってくださいましたが
であるから、僕は如何なる人が、如何なるほどに、僕のために心や身をろうしてくれたか、つぶさに考えて、これを常に心にめいじておきたいと思うのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
すなわち家婦かふにんにして、昼夜のべつなく糸をつむ木綿もめんを織り、およそ一婦人、世帯せたいかたわらに、十日のろうを以て百五十目の綿を一反の木綿に織上おりあぐれば、三百目の綿に交易こうえきすべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
山には木樵唄きこりうた、水には船唄ふなうた駅路うまやじには馬子まごの唄、渠等かれらはこれをもって心をなぐさめ、ろうを休め、おのが身を忘れて屈託くったくなくそのぎょうに服するので、あたかも時計が動くごとにセコンドが鳴るようなものであろう。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いささか筆をろうして当時の事実をあきらかにするのむべからざる所以ゆえんなり。
ろうせずしてこの洞を占領せんりょうするつもりであると思う
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
と知れば、ろう日子にっしをいとわずに求めた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不図ふとがついてると、庭先にわさきまで案内あんないろうってくだすったはは指導役しどうやくのおじいさんは、いつのにやら姿すがたして、すべてを私達わたくしたち母子おやこすところにまかせられたのでした。
蜂矢探偵は、少年のろうをねぎらったのち、ふと思い出したかのように
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)