作物さくもつ)” の例文
暴風雨の朝、はたけ作物さくもつも吹き荒され、万目まんもく荒寥こうりょうとして枯れた中に、ひとり唐辛子の実だけが赤々として、昨日に変らず色づいているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
さうしてまた食料しよくれうもとめるため勞力らうりよくくことによつて、作物さくもつ畦間うねまたがやすことも雜草ざつさうのぞくことも一さい手後ておくれにる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
本屋は、お愛相あいそのつもりで、チヤーチルの作物さくもつは何一つ残さず読んだ。なかには十回も繰返したのがあると言つて附足つけたした。
これはその田地が単に作物を生育しておらぬだけの意味でなく、翌年の作物さくもつを生育する力を増殖ぞうしょくするために休むのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
何故人間が除草くさとり器械にならねばならぬか。除草は愚だ、うつちやつて草と作物さくもつの競争さして、全滅とも行くまいから残つただけを此方に貰へば済む。
草とり (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
その故郷こきょう父親ちちおやからひさしぶりに便たよりがありました。今年ことしなつは、ひじょうにあつかったかわりに、作物さくもつがよくできて、むらは、景気けいきがよく、みんながよろこんでいる。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
木綿もめんというものの我邦わがくにに知られたのは、相応に古いころからのことであったようだが、わたという作物さくもつを、諸処方々しょしょほうぼう田畠たはたにうえ、それから綿を取り糸をつむいで
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
雨間あままを見ては、苅り残りの麦も苅らねばならぬ。苅りおくれると、畑の麦が立ったまゝに粒から芽をふく。油断を見すまして作物さくもつ其方退そっちのけに増長して来た草もとらねばならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして田畑の作物さくもつはもとより草や木までも、しなびてれかかりました。
ひでり狐 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
作物さくもつおおいに降りて来るいむなしを見るようだ。8780
肥料ひれう工夫くふうがつかなかつたりするのとで作物さくもつ生育せいいくからいへば三日みつかあらそふやうなときでもおもひながらないのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「春の初めに鍬を入れかけて、うねを真つ直に耕作を済ますのは、丁度秋のかゝりだよ。帰りみちにはそろそろもう収穫とりいれをせんならん程作物さくもつが大きくなつとるだよ。」
「また出水しゅっすいするだろう、それで、床板ゆかいたをぬらすし、病気びょうきるし、作物さくもつにはよくないだろう。」
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
単に栽培者がみずから携えてきたという以上に、父祖伝来の経験が集積調和して、これを教訓の形をもって引き継がれなかったら、この作物さくもつの次々の改良はさておき、外部の色々の障碍しょうがいにすらも
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
貧乏びんばふ百姓ひやくしやうはいつでもつちにくつゝいて食料しよくれうることにばかり腐心ふしんしてるにもかゝはらず、作物さくもつたはらになればすで大部分だいぶぶん彼等かれら所有しよいうではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
自分に土地を所有する力の無いものはひとの土地を借りて作物さくもつ仕付しつけます。そして相應に定められた金錢や又は米や麥の收獲の一部を地主ぢぬしへ納めるのであります。
白瓜と青瓜 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)