人死ひとじに)” の例文
「本当ですか?」とチチコフは乗り気になって、「実際その人のところでは、非常に沢山の人死ひとじにがあったと仰っしゃるんですね?」
これは自然な人死ひとじにではなく、たしかにこれはたくまれたる殺人事件が始まるのにちがいないと、風間三千子は思ったのであった。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
五人や六人の人死ひとじに怪我人けがにんは、きっとできるにきまっています。……ですから、私が計りごとを考え、野武士のかしらを、外に待たせておきました
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お師匠さん、あんた、これからその音声のど芸妓屋げいこやかどで聞かしてお見やす。ほんに、人死ひとじにが出来ようも知れぬぜな。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こうなったら、なにもかもさっくりと申しあげますが、……阿波屋の人死ひとじには、じつは、あっしのせいなんで……」
顎十郎捕物帳:24 蠑螈 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
都会といふものは、狭い地面に多く人が住むだけ人死ひとじにが多い、殊に子供が多く死ぬる、今まで横に並んでゐた家を
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「喧嘩でございます、あの女軽業の小屋の内へお仲間衆ちゅうげんしゅが押しかけて、いま大騒ぎが持ち上ったのでございます、人死ひとじにが出来ました、火事になりました」
十年前の此村を識って居る人は、皆が稼ぎ様の猛烈もうれつになったに驚いて居る。政党騒せいとうさわぎと賭博は昔から三多摩の名物めいぶつであった。此頃では、選挙争に人死ひとじにはなくなった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それから、もしあの海賊どもが浜で野営するならばだ、ジム、朝にはきっと人死ひとじにがあるだろうぜ。
静岡の南東久能山くのうざんの麓をめぐる二、三の村落や清水市の一部では相当潰家つぶれやもあり人死ひとじにもあった。
静岡地震被害見学記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「魔の踏切りで、いつも人死ひとじにがあるという様な、あの種類の、ありふれたお話ではないのです」
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かてて加えて寛正はじめの年は未聞の大凶作、あくる年には疫病えやみさえもはやり、京の人死ひとじには日に幾百と数しれず、四条五条の橋の下に穴をうがってしかばねを埋める始末となりました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
「親分が御輿みこしをあげないから、とうとう人死ひとじにがありましたぜ」
ついに神田万世橋郵便局では人死ひとじにがあったという騒ぎ。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
やぶのあるのはもとおほきいおやしき医者様いしやさまあとでな、此処等こゝいらはこれでも一ツのむらでがした、十三ねんぜん大水おほみづとき、から一めん野良のらになりましたよ、人死ひとじにもいけえこと。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
近頃この鬼仏洞を見物する連中がえ、評判が高くなってきたのはいいとして、先頃以来この洞内どうないで、不慮ふりょの奇怪な人死ひとじにがちょいちょいあったという妙な噂もあるので
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かてて加へて寛正はじめの年は未聞の大凶作、あくる年には疫病えやみさへもはやり、京の人死ひとじには日に幾百と数しれず、四条五条の橋の下に穴をうがつてしかばねを埋める始末となりました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
「死体を掘り出したら、死体はひとまず、日蔭の草の上にでも並べておけ。始末は晩のことでいい。——やむを得ない! ここは戦場だ。人死ひとじにに驚いて、いくさがなるものか、工事もすぐ続けろ」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ワー、ここにも人死ひとじにがあっただね。麗子さんじゃねえか。誰が殺しただ」
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「親分が御輿みこしをあげないから、到頭人死ひとじにがありましたぜ」
藪のあるのはもと大きいおやしきの医者様の跡でな、ここいらはこれでも一ツの村でがした、十三年前の大水の時、から一面に野良のらになりましたよ、人死ひとじにもいけえこと。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勿論もちろん人死ひとじにが出来、家は雷雨らいうの中に焔々えんえんと燃えあがりました。これはスグスグ雷はいつもの調子で、針の上に落ちてみますと、針の下から地中へ行く道が作ってないのです。
科学が臍を曲げた話 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
明治七年七月七日、大雨の降続いたその七日七晩めに、町のもう一つの大河が可恐おそろしい洪水した。七の数がかさなって、人死ひとじに夥多おびただしかった。伝説じみるが事実である。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんでもいよいよ今夜あたり、帝都は空襲をうけて、震災以上の大火災と人死ひとじにがあるというのです。だから、帝都附近は危険だから、甲州の山の中に逃げこもうという……
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
葉山一帯の海岸を屏風びょうぶくぎった、桜山のすそが、見もれぬけもののごとく、わだつみへ躍込んだ、一方は長者園の浜で、逗子ずしから森戸、葉山をかけて、夏向き海水浴の時分ころ人死ひとじにのあるのは
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここで一寸ちょっと念のために申しますが、この旅籠屋も、昨年の震災をまぬかれなかったのに、しかも一棟ひとむねけて、人死ひとじにさえ二三人あったのです——蚊帳は火の粉をかぶったか、また、山を荒して
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
百合 里では人死ひとじにもありますッて……ひどひでりでございますもの。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それ、怪我人よ、人死ひとじによ、とそこもここも湧揚る。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)