トップ
>
上眼
>
うわめ
ふりがな文庫
“
上眼
(
うわめ
)” の例文
そうしたら部屋のむこうに日なたぼっこしながら
衣物
(
きもの
)
を縫っていた
婆
(
ばあ
)
やが、
眼鏡
(
めがね
)
をかけた顔をこちらに向けて、
上眼
(
うわめ
)
で
睨
(
にら
)
みつけながら
碁石を呑んだ八っちゃん
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
するとある折、
綽名
(
あだな
)
をバテレンとも神父サンとも呼ぶ
髯面
(
ひげづら
)
の老工員が、ぼくを
上眼
(
うわめ
)
ごしでジロと見、「よしな。おめえは」と、ぼくを睨んだ。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そっと
上眼
(
うわめ
)
づかいに、その後ろ姿を見送っているところから見ると、この覆面の侍は、よほど大作の上役……ないしは主筋に当たる人らしい。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そして警官が目をそこへやったとき、男の死体が、上半身をつつーッと起こしたかと思うと、警官の方へ顔を向け、
上眼
(
うわめ
)
でぐっとにらんだのである。
金属人間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「珍らしいこと」おりうはすぐに盃を持ち、
上眼
(
うわめ
)
づかいに安宅を見た、「やっぱりなにかいいことがあったのね」
滝口
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
それは今の今までつつましやかにうつむいていた伊奈子が大きな眼で
上眼
(
うわめ
)
づかいに私を見て、頬をポッと染めながらニッコリと笑って見せたからであった。
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
サヨサヨ、ヘエ、サヨサヨとつづけざまに
上眼
(
うわめ
)
をしてお
辞儀
(
じぎ
)
をしていたが、子供と三人の中へはさまれて
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「そこに
蒲団
(
ふとん
)
がある」と三沢は
上眼
(
うわめ
)
を使って、室の
隅
(
すみ
)
を指した。自分はその眼の様子と頬の具合を見て、これはどのくらい重い程度の病気なんだろうと疑った。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこで、
上眼
(
うわめ
)
を使って、弟子の僧の足に
皹
(
あかぎれ
)
のきれているのを眺めながら、腹を立てたような声で
鼻
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
細い眼で老眼鏡の上から
上眼
(
うわめ
)
使いをしながら、歯のない口をモグモグさせて物を言う様子は、何か不思議な鳥類のように見えた。おそらく七十歳をくだらぬ老年である。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
観世銀之丞は起き上がろうともせず、畳の上へ肘を突き、それへ頭を転がしながら、面白くもないというように、ましらましらと
上眼
(
うわめ
)
を使い、商人の様子を眺めていた。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あなたなんぞは一番さきに触れてあるいた方ですわ。」と、花吉は
上眼
(
うわめ
)
で安井君を睨んだ。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と言ったその
上眼
(
うわめ
)
つかいで、お雪ちゃんの記憶が、お銀様の方へ
甦
(
よみがえ
)
って来ました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
上眼
(
うわめ
)
をつかって
仰
(
あお
)
のけになって居るから、はてなこれは変死だなと
能
(
よ
)
く見ると、自分の縁類なる東浦賀の
大ヶ谷町
(
おおがやまち
)
の吉崎宗右衞門と云う名主役の娘おみわで、浦賀で評判の美人だから
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
光子さんだけは何や独りで面白そうに笑いなさって、「どないしたん? 栄ちゃん。あんたけったいな人やなあ」いいながら、むずかしい顔してる綿貫の方を意味ありそうに
上眼
(
うわめ
)
で
睨
(
にら
)
んで
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
老人はちょっと顔をあげて
眼鏡
(
めがね
)
の上から
上眼
(
うわめ
)
で政雄の顔を
透
(
すか
)
すようにした。
女の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
こう言って僕は相手の顔を挑発するように
上眼
(
うわめ
)
づかいで見た。
或る探訪記者の話
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
いつもより恐ろしそうに、そして、上げることもゆるされない首のように、地に低く垂れたまま、じっと、馬のつま先だけを、
上眼
(
うわめ
)
で見ていた。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
帳場と呼ばれた男はその事なら飲み込めたという風に、時々
上眼
(
うわめ
)
で
睨
(
にら
)
み
睨
(
にら
)
み、色々な事を彼れに
聞
(
き
)
き
糺
(
ただ
)
した。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
看護婦はすでに帰った
後
(
あと
)
なので、
室
(
へや
)
の中はことに
淋
(
さみ
)
しかった。今まで
蒲団
(
ふとん
)
の上に
胡坐
(
あぐら
)
をかいていた彼は急に倒れるように
仰向
(
あおむき
)
に寝た。そうして
上眼
(
うわめ
)
を使って窓の外を見た。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
姉は
上眼
(
うわめ
)
を使いながら、
笄
(
かんざし
)
で
髷
(
まげ
)
の根を
掻
(
か
)
いていたが、やがてその手を火鉢へやると
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「だからおれはいま、——」喜兵衛は
上眼
(
うわめ
)
づかいに天床を見上げ、唇を
舐
(
な
)
めて、ひょいと片手を振った、「おい、よけえなことを云うから話のつなぎが切れてしまった、冗談じゃない、ええと」
霜柱
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「おッ。親分」と、細い手を
絡
(
から
)
ませて、
上眼
(
うわめ
)
にじっと見ていたかと思うと、その
瞼
(
まぶた
)
からポロポロと男泣きの熱い
泪
(
なみだ
)
……。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御米は返事もせずに、しばらく黙っていたが、細い
腮
(
あご
)
を
襟
(
えり
)
の中へ
埋
(
う
)
めたまま、
上眼
(
うわめ
)
を使って
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
母の枕もとの盆の上には、大神宮や
氏神
(
うじがみ
)
の
御札
(
おふだ
)
が、
柴又
(
しばまた
)
の
帝釈
(
たいしゃく
)
の
御影
(
みえい
)
なぞと一しょに、並べ切れないほど並べてある。——母は
上眼
(
うわめ
)
にその盆を見ながら、
喘
(
あえ
)
ぐように切れ切れな返事をした。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蟇
(
がま
)
のごとき姿態のうちにあぶらをたらして野蛮な勇を用意しながら、身に寸鉄もおびられてはいぬ宮の白いお姿を、
上眼
(
うわめ
)
づかいに
窺
(
うかが
)
うほかの念慮ではない。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
父
(
おとっ
)
さんは額に
皺
(
しわ
)
を寄せて
上眼
(
うわめ
)
を使いながら、頭を
撫
(
な
)
で廻す。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
じらしてやろうという気と、隙を計る
心支度
(
こころじたく
)
とで、孫兵衛は、
上眼
(
うわめ
)
づかいに腕ぐみをしていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あいよ」お綱は札を指で
弾
(
はじ
)
いて「よくもこう
縹緻
(
きりょう
)
の悪い手ばかり付く……」と、一枚手から抜きかけたが、ちょっと考える様子をして、何の気もなく
上眼
(
うわめ
)
づかいに天井を見た。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
指を
小布
(
こぎれ
)
で巻きながら、お吉はそれへ
上眼
(
うわめ
)
を送ったが、黙って、顔を振ってみせた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と思ったが、誰もいないので、ただ眸を以て、
上眼
(
うわめ
)
づかいに枕元を見まわすと、官兵衛はとたんに、ぎくとした容子であった。それは何か
妖
(
あや
)
しげなものでも見たときのような
愕
(
おどろ
)
き方に似ていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あまり老公が念を押すので、羅門は、形ばかりに、そっと
上眼
(
うわめ
)
をあげた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
眼
常用漢字
小5
部首:⽬
11画
“上眼”で始まる語句
上眼遣
上眼瞼
上眼使
上眼窩弓