万一ひょっと)” の例文
旧字:萬一
私があんまりポチばかり可愛がって勉強をしなかったから、父が万一ひょっとしたらこらしめのため、ポチを何処かへかくしたのじゃないかと思う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
万一ひょっとしたらいから左様な処へでも行きはしまいかと、是から吉原へ這入って彼処此処あちこちを探して歩行あるいたが分りません。
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
危なく声を立てようとして、待てしばし、万一ひょっと敵だったら、其の時は如何どうする? この苦しみに輪を掛けた新聞で読んでさえかみ弥竪よだちそうな目におうもしれぬ。
しかし万一ひょっともし盗んでいたとすると放下うっちゃって置いてはあとが悪かろうとも思ったが、一度見られたら
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
万作夫婦老を忘れてお光を愛する。這う。立つ。歩む。独りで箸を持つ。それはそれは愛らしい。だがどうも変だ。万一ひょっとおしじゃあるまいかと万作夫婦心配した位、口をきかない。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
新三郎は人が良いものですから一人で逢いにくことが出来ません、逢いに参って万一ひょっと飯島の家来にでも見付けられてはと思えばく事もならず
部屋の前を通越とおりこして台所へ行くか、それとも万一ひょっと障子がくかと、成行なりゆきを待つの一ぷんに心の臓を縮めていると、驚破すわ、障子がガタガタと……きかけて、グッとつかえたのを其儘にして
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ること眠ること……が、もし万一ひょっと此儘になったら……えい、かまうもんかい!
し遅くなれば喜右衞門きえもんどんに何彼なにかと頼んで置いたから御心配は無いが、万一ひょっとして花車も一抔やりいなどゝ云うと、ちっとは私も遣り度い物も有りますから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
万一ひょっとしたら金もられる、一挙両得だというような、愚劣な者の常として、何事も自分に都合のい様にばかり考えるから、其様そんな虫のい事を思って、友には内々ないない種々いろいろと奔走して見たが
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かめ「有難う、まア本当に万一ひょっとやりそこなやしないかと、どんなに心配したか知れませんが、彼奴あいつさえ殺してしまえば是からは自由ですから、今夜はお泊り遊ばせな」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お前さんがの娘の得心するように旨く調子よく、そこは棟梁さんだから万一ひょっとして岡惚れしないものでもないよ、はい只今明けますよ…あの道は又おつなものだから…はいよ
女「はい……まだ私は参った事はありませんから一度見物したいと思って居りますが、お寄申して万一ひょっと奥さんか又権妻さんでもいらしって、お悋気りんきでもあるとお気の毒だと存じまして」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
万一ひょっとして軽躁かるはずみな事をしてはならぬと、貞女なおくのでございますから、一歳ひとつになりますおさだと申す赤児あかんぼを十文字におぶい、鼠と紺の子持縞の足利織の単物ひとえものに幅の狭い帯をひっかけに結び
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其所そこへ別荘をたてると申して出ました切り手紙を一通送ってよこさず、まるで音信おとづれがございませんから、悋気ではございませんが、万一ひょっとほか増花ますはながあってわたくしあきが来て見捨てられやしないかと
野州路へ𢌞り漸々よう/\の事で江戸へ来ましたも万一ひょっとしたらお姉様あねえさまにお目にかゝる事もあろうかと思い参りましたが、一昨日おとといから何もべず、私はいといませんが此の子が如何にも不憫でございます
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
のように隠しても隠しおおせられないもので、どうしての人があのように金が出来たろう、なんだかおかしいねえ、此のごろこういう事を聞いたが、万一ひょっとしたらあんな奴が泥坊じゃアないか知らんと
一生懸命にうかして亭主のかたきが討ちたいと思って親類の止るのも聞かずに泥水の中に這入り、苦海くがいうちに居ても万一ひょっとして敵を尋ぬる手掛りにもなろうと思ったから、此んな処へ這入って居るので
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
真実そうと思ってたのしんで居りましたのに、貴方がそうおっしゃればわたくしは死んでしまいますが、万一ひょっと許嫁いゝなずけ内儀おかみさんでも田舎から東京へ出て来てそれを女房になさるなら、それでよろしゅうございますから
筆「アヽお武家で有るか、万一ひょっとしたら少しはお恵みが有ろう」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)