一徹いつてつ)” の例文
さうしてはじめから取捨しゆしや商量しやうりやうれないおろかなものゝ一徹いつてつ一圖いちづうらやんだ。もしくは信念しんねんあつ善男善女ぜんなんぜんによの、知慧ちゑわす思議しぎうかばぬ精進しやうじん程度ていど崇高すうかうあふいだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしおもはずひざたゝいた。短慮たんりよ一徹いつてつ武村兵曹たけむらへいそううでならして、漫々まん/\たる海洋かいやうにらまわしつゝ
ハタとにらんでそちまでがおなじやうになん囈語たはごと最早もはや何事なにごとみゝもなしそちさずば自身じしんにとむるつまつきのけつゝ病勞やみつかれてもおい一徹いつてつあがりがまちに泣頽なきくづれしおたか細腕ほそうでむづとりつちから
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしその命日毎めいにちごとに酒をそなへる画像ぐわざうを見れば、黒羽二重くろはぶたへ紋服もんぷくを着た、何処どこ一徹いつてつらしい老人である。祖父は俳諧を好んでゐたらしい。現に古い手控てびかへの中にはこんな句も幾つか書きとめてある。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
抱持はうぢ不十分ふじふぶん甲斐かひなきうらめしくなりててたしとおもひしは咋日きのふ今日けふならず我々われ/\二人ふたりくとかば流石さすが運平うんぺい邪慳じやけんつのれるこゝろになるはぢやうなりおやとてもとほ一徹いつてつこゝろやはらぎらば兩家りやうけ幸福かうふくこのうへやある我々われ/\二人ふたりにありては如何いか千辛萬苦せんしんばんくするとも運平うんぺい後悔こうくわいねんまじくしてや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)