“とりつ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
取憑27.4%
取次22.6%
取付16.1%
取着8.1%
取附6.5%
取詰6.5%
執次3.2%
凴着1.6%
取迫1.6%
執着1.6%
1.6%
憑依1.6%
憑着1.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
もうその時は私も形振なりふりは関わず、ただ燻んでひやりと冷たいあの街道の空気に浸り度い心がいた。私も街道に取憑とりつかれたのであろうか。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と云うので下男が取次とりつぎますと、清次が重二郎を連れて這入はいって来ましたから、重二郎を見るとお兼が奥へ飛んで来まして。
取付とりつきの悪い事なら日本一だろう。こんな男には何でも構わない。殴られたらなぐり返す覚悟でポンポン云ってしまった方が、早わかりするものだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「どうも困るな、こんな取着とりつ身上しんしょうで、そんな贅沢ぜいたく真似まねなんかされちゃ……。何だか知んねえが、その引物ひきものとかいう物をそうじゃねえか。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かゝるかたきが、植物界しょくぶつかいにも、人間界にんげんかいにも、つねぢんどって相鬪あひたゝかふ……仁心じんしん害心がいしんとが……しかうしてしいかたつときは、たちま毒蟲どくむし取附とりつかれて、その植物しょくぶつ枯果かれはつる。
その日会社を首になった笠森仙太郎は、白紙の答案を出すような心持で、社長邸の奥庭に忍びこみ植込の蔭に身を潜めて、令嬢美奈子の部屋を、そっと覗くほど取詰とりつめておりました。
下女は何心なく執次とりついで、私の傍へ持つて参りますを、夫は何故か急き手を差延べまして、こちらへ持つて来ればいいじやないかと、下女をにらみつけました。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
既にその病がお染と名乗る以上は、これに凴着とりつかれる患者は久松でなければならない。そこでお染の闖入ちんにゅうを防ぐには「久松留守ひさまつるす」という貼札はりふだをするがいいということになった。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
便すなはち宮の夫の愛を受くるを難堪たへがたく苦しと思知りたるは、彼の写真の鏡面レンズの前に悶絶もんぜつせし日よりにて、その恋しさに取迫とりつめては、いでや、この富めるに饜き、ゆたかなるにめる家を棄つべきか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お岩かかさねにでも執着とりつかれたような心持で、わたくしは怖々こわごわながら付いて行くと、女はすすり泣きをしながら、どうで一度は知れるに決まっていると覚悟はしていたが、さてこうなると悲しい
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
死神にでもとりつかれたというのは、ああいうのかも知れません。このごろでは、力をつけて上げても、慰めて上げても駄目です。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
口惜くやしい口惜くやしい! 自分じぶん大切たいせつ良人おっとをあんなおんなとられて、なんだまってけるものか! これからんで、あのおんな憑依とりついてかたきってやるからそうおもってるがよい……。
幸い前の縁の雨戸一枚、障子ばかりを隔てにして、向うの長土間へ通ずる処——その一方だけは可厭いやな声がまだ憑着とりつきません。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)