鹿毛かげ)” の例文
卯月の銀毛のような尾が、真ッ直ぐに風を曳いて、五郎左衛門の鹿毛かげのそばを、勢いよく駈け抜けて、前へ出たので、五郎左は
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鹿毛かげ連銭葦毛れんせんあしげなどの話のあるところ、黒んぼが駱駝にのつて沙漠をゆくところなど一枚二枚と読んでもう終りにちかい元寇の章まできた。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
また殿しんがりで敵に向いなさるなら、鹿毛かげか、葦毛あしげか、月毛か、栗毛か、馬の太くたくましきにった大将を打ち取りなされよ。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
あっしだって馬子まごおどかして、同じ鹿毛かげ馬を仕立てさせ砂利を詰めた千両箱を背負しょわせて、天神下の角でアッという間に入れ替えるぐらいの芸当はやりますよ
自宅うち鹿毛かげと青にその方の好きなあの金覆輪きんぷくりんの鞍置いて飛ばすれば、続く追っ手は当藩にはらぬ筈じゃ。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鹿毛かげなる駒の二歳位なるが、ひとり忽然こつぜんとして現はれ、我も驚き、彼も驚く風情なかなかに興多く候。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこに来ては寝ころんでいたまぐさの中から、むくむくと起きあがると、平七は、き出した鹿毛かげにひらりと乗った有朋のさきへ立って、なんのこともない顔を馬と並べ乍ら
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
一昨年をととしのこと、例のフォマ・グリゴーリエヸッチがディカーニカからやつて来て、たうとう新らしい馬車と鹿毛かげの牝馬もろとも、崩穴がけへ落つこちてしまつたといふ始末でな
黄金こがね作りの武田びし前立まえだて打ったる兜をいただき、黒糸に緋を打ちまぜておどした鎧を着、紺地の母衣ほろに金にて経文を書いたのを負い、鹿毛かげの馬にまたがり采配を振って激励したが
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
秩父の速がひき出した馬は、つやつやとした鹿毛かげのけなみもうつくしい、たくましいもので、鬼カゲと呼ばれてゐる名馬でした。ほかの四人の馬も、それぞれすぐれた馬ばかりでした。
鬼カゲさま (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
女はまだなんにも言わぬ。とこけた容斎ようさいの、小松にまじ稚子髷ちごまげの、太刀持たちもちこそ、むかしから長閑のどかである。狩衣かりぎぬに、鹿毛かげなるこま主人あるじは、事なきにれし殿上人てんじょうびとの常か、動く景色けしきも見えぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三位入道の嫡子伊豆守仲綱いずのかみなかつなしたと名づけられた鹿毛かげの名馬を持っていた。
鹿毛かげを放すことにいたしましょう」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
畠山重忠にも、秩父鹿毛かげとか、大黒人おおくろひととか、妻高めたか山鹿毛とか、評判な名馬があるので、さだめしりに選って、競い立って行ったにちがいない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
案内してくれたのは、裏の大きな厩、五六頭の馬の中に交じって、一きわ美しい、鹿毛かげを親方は指します。
「これじゃ! てまえのこの鹿毛かげにて参れとのごじょうじゃ!」
穀物、獣皮じゅうひうるし、織物などあらゆる物と物が交易されていた。馬市も立っている。鹿毛かげ、栗、月毛、黒などが何十頭も馬繋うまつなぎに首をならべていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
案内してくれたのは、裏の大きな厩、五六頭の馬の中にまじつて、一きは美しい、鹿毛かげを親方は指します。
また、さきのおととし、鳥羽とばいんと、待賢門院たいけんもんいんさまも、お臨みで、神泉苑しんせんえんの競べ馬に、下毛野しもつけの兼近が、見事な勝をとったのも、たしか、四白の鹿毛かげであったわ
江島屋の馬鹿息子へ、あの娘をやる位なら、あつしだつて馬子まごおどかして、同じ鹿毛かげ馬を仕立てさせ砂利を詰めた千兩箱を脊負はせて、天神下の角でアツといふ間に入れ換へる位の藝當はやりますよ
「お馬は、乗換の鹿毛かげまで、賤ヶ嶽の岨道そばみちに、お捨て遊ばして来ましたので、これには曳いて参りませぬ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茶盌ちゃわんを売って、名馬をあがなう、そちの心がけは、大いによいが、聞けば、馬場において、殿の卯月を追い抜き、君公から後に、そちの鹿毛かげをくれいと、お望み遊ばしたものを
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源氏重代のこんおどし「源太ヶ産衣うぶぎ」の具足をよろい、髯切ひげきりの太刀を横たえ、たくましい鹿毛かげの鞍にあるために、一かどらしくは見られるが、何といっても、まだ十三歳であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間もなく輿こし駕籠かごの行列につづいて、武者ぶりよい男が、二、三頭の鹿毛かげ葦毛あしげの駒を曳いて出て行った。武者たちは長門守の顔を見ると馬の口輪を片手に、辞儀して通った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四白というのは、鹿毛かげ栗毛くりげをとわず、馬の四つ脚のひづめから脛に、そろって、白い毛なみを持っている特徴をいうのである。ごくまれにしかないが、あれば、不吉ふきつだと、むかしからいわれている。
金槌かなづち」と名のある有名な鹿毛かげだ。信雄は、それにまたがるや
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、彼方から一頭のたくましい鹿毛かげを飛ばして
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)