高張たかはり)” の例文
蜂須賀はちすか彦右衛門にいいつけて、十数名の祐筆ゆうひつを臨時に選び、明々と高張たかはりを左右に掲げて、参陣者の姓名を着到帳ちゃくとうちょうに記させた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
続いたのが、例の高張たかはりを揚げた威勢のい、水菓子屋、向顱巻むこうはちまちの結び目を、山から飛んで来た、と押立おったてたのが、仰向けにそりを打って、呵々からからと笑出す。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこは役所の建物が壁になって、風もいくらか弱く、番所の高張たかはり提灯がはためきながら光を投げていた。栄二は乱暴に人をかきわけてそっちへいった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今日が婚礼なので、門に高張たかはりを立て、店には緋の毛氈を敷いて金屏風をめぐらし、上下かみしもを着た番頭や印物しるしものを着た鳶頭かしらが忙しそうに出たり入ったりしている。
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
高張たかはりがつき提灯がつき、用意の物の具が、物すさまじい音をして牢屋同心の人々の手から手に握られました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其処そこみかどが白い高張たかはり提灯を二つけた衛士ゑいじ前駆ぜんくにして行幸になり、四十七士の国法を犯した罪をゆるおの/\の忠義を御褒おほめに成ると云ふ筋である。(四月十五日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
夜分は又門口に大きな高張たかはりを立て、筆太に元祖計り炭鹽原多助と記し、くつわの紋を附け、店で計り炭を売りますと、裏店うらだなのおかみさん達が前掛の下に味噌漉を隠し
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
馬をつなぐうまやがなければならない。消防用の水桶みずおけ、夜間警備の高張たかはりの用意がなければならない。いざと言えば裏口へ抜けられる厳重な後方の設備もなければならない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
電車のせ行く麹町こうじまちの大通りには、松竹まつたけ注目飾しめかざり、鬼灯提灯ほおずきちょうちん引幕ひきまく高張たかはりのぼりや旗のさまざまが、よごれたかわら屋根と、新築した家の生々なまなましい木の板とに対照して、少しの調和もない混乱をば
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
鶴岡市郎右衛門つるおかいちろうえもんかたのおもてには、さかき定紋じょうもんうった高張たかはり提灯を立てつらね、玄関正面のところに槍をかけて、入口には番所ができ、その横手には、青竹の菱垣ひしがきを結いめぐらして、まんなかに
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
黄色きいろいふたつの高張たかはり
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
四辺あたり滔々とうとうたる濁流であります。高い所には高張たかはり炬火たいまつが星のように散って、人の怒号が耳を貫きます。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一丁ばかりゆくと、小屋の柵があり、伊達家の定紋じょうもんのある高張たかはり提灯が見えた。それが表木戸である。甲斐は柵の手前を北に曲り、低い声で「望月」をうたいだした。
茶めし餡掛あんかけ、一品料理、一番高い中空の赤行燈あかあんどうは、牛鍋の看板で、一山三銭二銭にひさぐ。蜜柑みかん林檎りんごの水菓子屋が負けじと立てた高張たかはりも、人の目に着く手術てだてであろう。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もちろん、庭さきにも、幕を張り、たてをならべ、兵は高張たかはりを掲げて、夜も寝ずに警備している。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今夜は高張たかはりだけにせずか、なし。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
範宴はんえんが求められて法話に行った武家邸ぶけやしきは、火事のあった六条の遊女町とはだいぶへだたっていたが、それでも、性善坊が息せいて行きついてみると、門前には高張たかはりをつらね、数多あまたの侍だの
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……見えるその提灯が、むくむくとともすわって、いびつにおおきい。……軒へ立てる高張たかはりは御存じの事と思う、やがてそのくらいだけれども、夜のなわてのこんな時に、唯ばかりでは言い足りない。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高張たかはり弓張ゆみはりが門の左右へ、掛渡した酸漿提灯ほおずきぢょうちんも、ぱっと光が増したのである。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わけても細川家の家士七百余人は、高張たかはり箱提灯はこぢょうちん、騎馬、駕、足軽などの順に——他の三藩より一足先に、そこから行列を進め、五十四万石という大藩だけに、見る眼も物々しい限りだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)