高声たかごえ)” の例文
旧字:高聲
今卑しい高声たかごえをして歩いている人達が、さっき好い声で歌って、人を感動させたのと、同じ人達かと思うと、不思議だと男は考えた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
新「あんにい、先刻さっきの様に高声たかごえであんな事を云ってくれちゃア困るじゃアねえか、己はどうしようかと思った、表に人でも立って居たら」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(娘、ブラシを探す。画家たくを指ざす。)あそこにある。(娘、ブラシを持ち来て服を掃く。間。○戸を叩く音す。画家高声たかごえに。)
お島はくすぐったいような、いらいらしい気持を紛らせようとして、そこを離れて、子供を揶揄からかったり、あによめ高声たかごえで話したりしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
苦学生に扮装したこの頃の行商人が横風おうふうに靴音高くがらりと人のうち格子戸こうしどを明け田舎訛いなかなまりの高声たかごえに奥様はおいでかなぞと
隣家から酒気を含んだ高声たかごえが聞えて来た。子は夕暮前に、井戸傍いどばたで隣家の主人がとりをつぶしていたのを眼に浮べた。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
そっちと、こっちで、高声たかごえでな。もっと隣近所となりきんじょはござらぬ。かけかまいなしで、電話の仮声こわいろまじりか何かで
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今宵こよいもこの洞門のまえには、赤いほのおと人影がみえて、夜ふけのたいくつしのぎに、何か高声たかごえで話していると、そのさいちゅうに、ひとりがワッとおどろいて飛びのいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、ぞろぞろ連れだって高声たかごえに語りながら行き過ぎる、見も知らぬ人々の上に、妬ましそうな視線を投げた。そんなことは、彼としてそれまでにかつてないことであったのに。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
そして犬の血のついたままの脇差を逆手さかてに持って、「お鷹匠衆たかじょうしゅうはどうなさりましたな、お犬牽いぬひきは只今ただいま参りますぞ」と高声たかごえに言って、一声こころよげに笑って、腹を十文字に切った。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
の葉の騒ぐのとは思いながら、澄んだ耳には、聴き覚えのある皺嗄しゃがれた声や、快活な高声たかごえや、低い繊弱かぼそい声が紛々ごちゃごちゃと絡み合って、何やらしきりにあわただしく話しているように思われる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
まち人々ひとびとのことはかれはいつも軽蔑けいべつして、無教育むきょういく禽獣的生活きんじゅうてきせいかつののしって、テノルの高声たかごえ燥立いらだっている。かれものうのは憤懣ふんまんいろもってせざれば、欣喜きんきいろもって、何事なにごと熱心ねっしんうのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
丁度あの咳枯しわがれた高声たかごえをして8765
高声たかごえを出して人を呼ぼうと思ったが、そこは病気の時に看病を受けました事があるから、其の親切にほだされて、し私が呶鳴どなれば御主人に知れて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「君の評判は大したもんですぜ。」と和泉屋は突如だしぬけ高声たかごえしゃべり出した。「先方さきじゃもうすっかり気に入っちゃって、何が何でも一緒にしたいと言うんです。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
界隈かいわいの景色がそんなに沈鬱ちんうつで、湿々じめじめとして居るにしたごうて、住む者もまた高声たかごえではものをいわない。歩行あるくにも内端うちわで、俯向うつむがちで、豆腐屋も、八百屋やおやも黙って通る。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほどなく、空は白みそめ、彼方の難波なにわ通いの船場につどう客や船頭の高声たかごえがし出している。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は故意わざ附元気つけげんき高声たかごえで、「御機嫌よう!」と一礼すると、くるまが出たから、其儘正面まむきになって了ったが何だか後髪を引かれるようで、くるまが横町を出離れる時、一寸ちょっとうしろを振向いて見たら
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
酒場で酒呑む人の高声たかごえ
見ると向からワイ/\とお百姓が来まして、高声たかごえ上げて、あゝ情ないもう少し早かったらこんな事にはならぬ、無惨なことをした、情ないことをしたというから、こいつしまった
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ハヤ二、三人駈けて来たが、いずれも高声たかごえの大笑い
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)