いなびかり)” の例文
だって、緋だの、紫だの、暗いうちに、あられに交って——それだといなびかりがしているようだもの……そのしとみをこんな時に開けると、そりゃ可恐こわいぜ。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれど、あめは、容易よういにやみそうもなく、あおいなびかりひかりは、のまわりをうようにひらめき、すぐあたまうえでは、いまにもちそうにかみなりったのです。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だつて、だの、むらさきだの、くらうちに、あられまじつて——それだといなびかりがしてるやうだもの……しとみをこんなときけると、そりや可恐こはいぜ。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その内に火の玉が、鍍金の前をいなびかりのようなはすッかけに土間を切って、ひょいと、硝子戸がらすどを出たでしょう。たかっていたのは、バラバラと散る。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四ツの壁は、流るるいなびかりと輝く雨である。とどろとどろと鳴るかみは、大灘おおなだの波のうなりである。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
きりもかゝり、しももおりる……つきくもればほしくらし、大空おほぞらにもまよひはある。まよひも、それおだやかなれども、むねふさが呼吸いきとぢる、もやくやなあとの、いなびかり、はたゝがみを御覽ごらんぜい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いなびかりですか、薄いあおいのが、真暗まっくらな空へ、ぼっとしますとね、黄色くなって、大きな森が出て、そして、五重の塔の突尖とっさきが見えるんですよ……上野でしょうか、天竺てんじくでしょうか
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いなびかりが、南辻橋、北の辻橋、菊川橋、撞木しゅもく橋、川を射て、橋に輝くか、とと町をとおった。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いなびかりちっと気がえがね、二見ヶ浦は千畳敷、浜のいさごは金銀……だろう、そうだろそうだろうであろ。成程どんどん湧いていら、伊良子いらこヶ崎までたっぷりだ。ああ、しかし暑いぜ。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お辻が(おそろしい人だこと、)といつた時、其の顔色とともにあかしが恐しく暗くなつたが、消えはしないだらうかと、いきなりいなびかりでもするかの如く、恐る/\目をあけて見ると、真暗まっくら
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一際ひときわはげしきひかりもののうちに、一たび、小屋の屋根に立顕たちあらわれ、たちまち真暗まっくらに消ゆ。再びすさまじじきいなびかりに、鐘楼に来り、すっくと立ち、鉄杖てつじょうちょうと振って、下より空さまに、鐘に手を掛く。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
可恐こわい、いなびかり。」
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)