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びた
ふりがな文庫
“
鐚
(
びた
)” の例文
……そもそもの初日から僕は、せっかく考えていた勤労生活とか葡萄畑とかいうことは、
鐚
(
びた
)
一文の値打もないことを了解したのだ。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
競争に負けたジャップには
鐚
(
びた
)
一文だって有りゃしないんだろう。——テーブルに向って腰かけたメリケン兵の眼には彼への軽蔑があった。
氷河
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
そのうえ床を
剥
(
は
)
いだり、天井を覗いたり、清吉まで手伝って
半刻
(
はんとき
)
(一時間)ばかり掻き廻しましたが、小判はおろか、
鐚
(
びた
)
一枚出て来ません。
銭形平次捕物控:095 南蛮仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「よし、そんなら三と五十にすべえ」と老人は云った、「これ以上は
鐚
(
びた
)
一文負からねえだ、三と五十、これで話はきまっただ」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「こら化助。お前はとんだ思い違いをしているぞ。この儂は、まだ
鐚
(
びた
)
一文も、四郎から受取っちゃ居ねえのだ。これは本当だ」
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
鐚
(
びた
)
一文くれてやる考えもないから、その方の心配はいらないが、こう記されてあると、彼の人格に立ち入って、
穿鑿
(
せんさく
)
もちとして見たくなる。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
盆をつき出して、一ト巡り、いや二た巡りも何回も、見物人の輪の前を、ぐるぐる歩き初めたが、さて
鐚
(
びた
)
一文も盆の上にはこぼれなかった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
種吉は残念だった。お辰は、それみたことかと種吉を
嘲
(
あざけ
)
った。「
私
(
わて
)
らに
手伝
(
てつど
)
うてもろたら損や思たはるのや。誰が
鐚
(
びた
)
一文でも無心するもんか」
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「低能——低能と申しますと、まず一人前に通用しない、馬鹿といった異名でございますね、そうおっしゃられちゃあ、
鐚
(
びた
)
もあとへ引けません」
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「自分は世界のどの技師にも劣らない自信がある。だから四千円でなければいやだ。
鐚
(
びた
)
一文でも欠けるならたとい自分は餓死するとも雇われない」
私の小売商道
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
(著)
「貴様のような奴に
鐚
(
びた
)
一文でも余分なものが遣られると思うか。首の飛ばないのを有難いことにして、早く立去れ。」
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お辻 お妾だからお妾だと言つてるんですよ、でもこうして
鐚
(
びた
)
一文貰へないお妾さんも、まあ珍しいだらうね。
彦六大いに笑ふ
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
その代り、米粒一つも
鐚
(
びた
)
一文も与えられずに、私たちはその家をすごすごと立ち去らなければならなかった。
父
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
先は足もとを見やがったのか二百ドルが
鐚
(
びた
)
一
文
(
もん
)
も負からない、この本は目下ロンドンにだって二部とはない、それを負けろなんてお前が無理だと抜かすんだ。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
だから、千五百語ぽつきりで書き上げた人は、どんな立派な短篇小説を書いたつて、
鐚
(
びた
)
一
文
(
もん
)
も貰へない。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
氏神
(
うじがみ
)
さまの祭だ、町内のつきあいだって、幾度頭を下げて頼んでも、
鐚
(
びた
)
一文も出さねえわからずやもありゃあ、こうしたもののわかった方もいらっしゃるってんだ。
遺産
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「うん、ではね、おれが決してそんな吝ん坊じゃない証拠に、
代金
(
だい
)
なんて
鐚
(
びた
)
一文もとらないよ。その代り、あの種馬を買い給え、そうすれば、景品につけてやらあ。」
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「お泊りだ、お一人さん——旅籠は
鐚
(
びた
)
でお
定
(
きま
)
り、そりゃ。」と指二本、
出女
(
でおんな
)
の
目前
(
めさき
)
へぬいと出す。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
若い作曲家の作品を極度に
貶
(
けな
)
して、なんらの価値もなく
鐚
(
びた
)
一文にもならないものだと断言した。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
村の者には
鐚
(
びた
)
一文も借りてないさかい、お前も誰にも遠慮することはない。肩身を広くして居るこつちや。な、解つたかい、何も心配せんでも宜い、誰にも遠慮は要らぬのやぞ。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
「ど、ど、どつこいさうは參りません。八百五十兩より
鐚
(
びた
)
一文も引いちや賣れません。」
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
生きるのは厭になつても死ぬまでの決心はつかない。工場で負傷して死んでさへ遺族は路頭に迷はねばならぬ。
況
(
ま
)
してたゞで死んだものならそれこそ
鐚
(
びた
)
一文にだつてなりやしない。
工場の窓より
(新字旧仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
保管中のベシイの財産から
鐚
(
びた
)
一文もまわすことはできないと断然拒絶したのだ。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
お作には、ここを切り詰めて、ここをどうしようという
所思
(
おもわく
)
もないが、その代り
鐚
(
びた
)
一文自分の意志で使おうという気も起らぬ。ここへ来てから新吉の勝手元は少しずつ豊かになって来た。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
引挾
(
ひつはさ
)
み親方
骨柳
(
こり
)
が重さうに見えるか今日は朝から
鐚
(
びた
)
一文にもならず少々
揚取
(
あげと
)
らせて給はれと
骨柳
(
こり
)
に手を掛るを傳吉其手を
拂
(
はら
)
ひ中仙道を
足
(
あし
)
に
懸
(
か
)
け年中往來する我等
小揚取
(
こあげと
)
らせることはない
串戯
(
じようだん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
死神を飼つてゐるやうなものだ。そこで毎日怒鳴つてやるね。うぬらには
鐚
(
びた
)
一文やらないぞ、とさ。俺の金は瓶に入れて、土の中へかくしてあるのだ。人が見たら蛙になれ。蛇になれ。芋虫になれ。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
こうして十年も旅舎に
寝転
(
ねころ
)
んで、
何事
(
なに
)
を
為
(
し
)
てるんだか解らない人だと世間から思われても、別に俺は世間の人に迷惑を掛けた覚は無し、兄貴のところなぞから
鐚
(
びた
)
一文でも貰って出たものでは無いが
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
再び主家の
閾
(
しきい
)
を
跨
(
また
)
ぐ時には本来空の無一物、財布の底をはたいても
鐚
(
びた
)
一文出て来ぬのを惜しみも悔みもせず、半歳の勤労に酬いられた所得を、日の出から日の入りまでに綺麗さっぱりにしてしまって
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
「とんでもない。おれは、財産なんか、
鐚
(
びた
)
一文欲しゅうはないよ」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
はひつてさへ下されば
鐚
(
びた
)
一文、頂かうとは思ひません。
百三十二番地の貸家
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
鐚
(
びた
)
のかたちの粉苔をつける
春と修羅 第二集
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「よし、そんなら三と五十にすべえ」と老人は云った、「これ以上は
鐚
(
びた
)
一文負からねえだ、三と五十、これで話はきまっただ」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「郷票をかっぱらうんなら、まだ分るが、
鐚
(
びた
)
一文もない軟派の娘をかっぱらってどうするんだい。ええ、冗談じゃないぜ。」
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
鐚
(
びた
)
は、とつ、おいつ、こんなことを言って、自宅にくすぶって気を腐らせていると、
溝板
(
どぶいた
)
を荒々しく蹴鳴らして
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「飛んでもない。——先代大旦那の亡くなつたのは急で御座いましたが、支配人の私が帳面も金も預つてをりましたので、
鐚
(
びた
)
一文も不審な金はございません」
銭形平次捕物控:132 雛の別れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
帰って来ての話に、無心したところ妹の聟が出て応待したが、話の分らぬ頑固者の上にけちんぼと来ていて、結局
鐚
(
びた
)
一文も出さなかったとしきりに興奮した。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
その代り、米粒一つも
鐚
(
びた
)
一文も与えられずに、私達はその家をすごすごと立ち去らなければならなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それのみか、衣服一枚くれるでなし、もちろん、先に書かされた証文の金など、
鐚
(
びた
)
一文もくれはしない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俺はまだこの年になれど
他
(
ひと
)
に藁一筋の
合力
(
ごうりき
)
を願った覚えのないものだ、だから、
鐚
(
びた
)
一文でも他に遣るのは胸糞が悪くてとても出来ない、こういうことはやはり、太郎作、次郎兵衛のような
厄払い
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この言の如くかれは
鐚
(
びた
)
一文親の金には手をつけず
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
「ちょッ面倒だ。
宿銭
(
とまり
)
は
鐚
(
びた
)
でお
定
(
さだま
)
り、それ、」
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
きっと真人間になりますからどうか勘弁しておくんなさい——中のお金にゃ
鐚
(
びた
)
一文手はつけてござんせん、どうかお納めなすっておくんなさい
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
シルクのお絹でもなく、芸娼院の
鐚
(
びた
)
でもないが、神尾のところへ来るくらいのもので、左様に賢人君子ばかりは来ない。いずれも先日の
悪食会
(
あくじきかい
)
の同人でした。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「とんでもない。——先代大旦那の亡くなったのは急でございましたが、支配人の私が帳面も金も預かっておりましたので、
鐚
(
びた
)
一文も不審な金はございません」
銭形平次捕物控:132 雛の別れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
どう考えても、金はもう一枚の
鐚
(
びた
)
も持っていないのだ。しかし、温かそうな煙に混じって洩れる煮物のにおいは、彼の飢えをつよく思い出させて、もう到底、去り得ないほどだった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鐚
(
びた
)
一文の給金すらもくれたことのない祖母たちではないか。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「冗談おっしゃってはいけません、私は御覧の通りの貧乏俳諧師、逆さにふるったって
鐚
(
びた
)
一文ありゃしません、この
襤褸
(
ぼろ
)
を身ぐるみ脱いだところで——」
其角と山賊と殿様
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
死骸の懷ろには、
鬱金
(
うこん
)
の胴卷がありますが、
扱
(
しご
)
いて見ても、中は空つぽ、
鐚
(
びた
)
錢一つ入つては居りません。
銭形平次捕物控:319 真珠太夫
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
代用食類似の不景気な品ではなく、銭とあってみると、たとえ
鐚
(
びた
)
にしてからが、天下御免のお宝である。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
父からはもとより
鐚
(
びた
)
一文の仕送りもなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
鐚
漢検1級
部首:⾦
20画
“鐚”を含む語句
鐚銭
鐚一文
鐚錢
鐚助
鐚一銭
鐚儀
鐚公
鐚文