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やりば
ふりがな文庫
“
遣場
(
やりば
)” の例文
かえって夫人がさしうつむいた、顔を見るだに
哀
(
あわれ
)
さに、
傍
(
かたえ
)
へそらす目の
遣場
(
やりば
)
、
件
(
くだん
)
の手帳を読むともなく、はらはらと四五枚かえして
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あの時お前のお
父
(
とっ
)
さんは、お前の
遣場
(
やりば
)
に困って、
阿母
(
おっか
)
さんへの
面
(
つら
)
あてに川へでも棄ててしまおうかと思ったくらいだったと云う話だよ。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
で、なく、あの迷妄を
一途
(
いちず
)
に持ち続けていたらあの
遣場
(
やりば
)
のない情熱のために、この身は風船のように破裂したに相違あるまい。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
遣場
(
やりば
)
のない視線をば追々に夏の日のさし込んで来る庭の方へ移したが、すると偶然垣根の外には大方
一月寺
(
いちげつじ
)
あたりから来る
虚無僧
(
こむそう
)
であろう
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「
斯
(
か
)
うなると
少
(
すこ
)
し
遣場
(
やりば
)
に
困
(
こま
)
るのね」と
訴
(
うつた
)
へる
樣
(
やう
)
に
宗助
(
そうすけ
)
に
告
(
つ
)
げた。
實際
(
じつさい
)
此所
(
こゝ
)
を
取
(
と
)
り
上
(
あ
)
げられては、
御米
(
およね
)
の
御化粧
(
おつくり
)
をする
場所
(
ばしよ
)
が
無
(
な
)
くなつて
仕舞
(
しま
)
ふのである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
『濟まなかつたわ。』と何氣なく言つたが、一寸目の
遣場
(
やりば
)
困つた。そして、
微笑
(
ほゝえ
)
んでる樣な靜子の目と見合せると色には出なかつたが、ポッと顏の
赧
(
あから
)
むを覺えた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
すたすたと、先を歩いて行きながら、そこらの木の葉を
挘
(
むし
)
って、木の葉笛を吹いてみたり、俗歌を唄ってみたり、石を蹴ってみたり、なにか
遣場
(
やりば
)
のない気持を抱いているらしいので、お通がまた
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
情
(
なさけ
)
なさの
遣場
(
やりば
)
のない、……そんな時、世の中に、ただ一人、つらい胸を聞かせたし、聞いて
欲
(
ほし
)
し、慰めてももらいたいのは、御新造さんばかりでしょう。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「こうなると少し
遣場
(
やりば
)
に困るのね」と訴えるように
宗助
(
そうすけ
)
に告げた。実際ここを取り上げられては、御米の
御化粧
(
おつくり
)
をする場所が無くなってしまうのである。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と見ると山内は喰かけの麦煎餅の
遣場
(
やりば
)
に困つた様に、臆病らしくモヂ/\して、顔を赧めて頭を下げた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
気の荒い母親からのがれて、娘の
遣場
(
やりば
)
に困っている自分の父親も可哀そうであった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ただ腰をかけている間、あたりには何一ツ見るものがない為、
遣場
(
やりば
)
のない眼をそう云う人達の方へ向けるというまでの事で、心の中では現在世話になっている姉の家のことしか考えていない。
或夜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
すぐの長火鉢の前に媽々は控えた、顔の
遣場
(
やりば
)
もなしに、しょびたれておりましたよ、はあ。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『ハ?』と言つて、安藤は目の
遣場
(
やりば
)
に困る程
周章
(
まごつ
)
いた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私は目の
遣場
(
やりば
)
に困りました。往来の
通
(
かよい
)
も、ぎっしり詰って、まるで隙間がないのです。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
腕は鳴っても、
遣場
(
やりば
)
のない
鉄鎚
(
かなづち
)
を取りしめて……火鉢に火はなし、氷のように。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何
(
なん
)
ですかね、
島流
(
しまなが
)
しにでも
逢
(
あ
)
つて、
心
(
こゝろ
)
の
遣場
(
やりば
)
のなさに、
砂利
(
じやり
)
を
掴
(
つか
)
んで
海
(
うみ
)
へ
投込
(
なげこ
)
んででも
居
(
ゐ
)
るやうな、
心細
(
こゝろぼそ
)
い、
可哀
(
あはれ
)
な
風
(
ふう
)
に
見
(
み
)
えて、
其
(
それ
)
が
病院
(
びやうゐん
)
の
土塀
(
どべい
)
を
狙
(
ねら
)
つてるんですから、あゝ、
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
だ。……
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
簪
(
かんざし
)
の花が
凜
(
りん
)
として色が冴えたか気が籠って、
屹
(
きっ
)
と、教頭を見向いたが、その目の
遣場
(
やりば
)
が無さそうに、向うの壁に
充満
(
いっぱい
)
の、
偉
(
おおい
)
なる全世界の地図の、サハラの砂漠の有るあたりを、
清
(
すずし
)
い瞳がうろうろする。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時、
遣場
(
やりば
)
に失した杯は思わず頭の
真中
(
まんなか
)
へ載せたそうである。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
遣
常用漢字
中学
部首:⾡
13画
場
常用漢字
小2
部首:⼟
12画
“遣”で始まる語句
遣
遣瀬
遣口
遣戸
遣手
遣繰
遣切
遣方
遣付
遣取