道芝みちしば)” の例文
「どれ。」といひて立つたる折、のしのしと道芝みちしばを踏む音して、つづれをまとうたる老夫おやじの、顔の色いと赤きがえんちこはいり来つ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おつぎはあと退去すさつた。おつぎはほとんど無意識むいしき土手どてみなみはしつた。處々ところ/″\だれかゞ道芝みちしばしばあはせていたので、おつぎは幾度いくたびかそれへ爪先つまさきけてつまづいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
氷の如く澄める月影に、道芝みちしばの露つらしと拂ひながら、ゆりかけしたけなる髮、優に波打たせながら、畫にある如き乙女の歩姿かちすがたは、葛飾かつしか眞間まゝ手古奈てこなが昔しのばれて、斯くもあるべしや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
駈拔かけぬけんとて皆々駈出しやがて三里の松原に出で大勢の雲助共今や來ると彼方此方かなたこなたひそみ手ぐすね引て待伏たり半四郎はかみならぬ身の夢にも知ずたどり/\て道芝みちしばつゆ踏分ふみわけつゝ程なくも三里の松原へ差懸るに木の間の月は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
道芝みちしばうへく風よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
時に、経堂を出た今は、真昼ながら、月光にい、かつらに巻かれた心地がして、乱れたままの道芝みちしばを行くのが、青く清明なるまるい床を通るようであった。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いまほこらぬまむかつてくさいこつた背後うしろに、なぞへに道芝みちしば小高こだかつたちひさなもりまへにある。鳥居とりゐ一基いつきそばおほき棕櫚しゆろが、五かぶまで、一れつならんで、蓬々おどろ/\としたかたちる。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うてなを頂く日に二十を下らず、けだし、春寒き朝、めづらしき早起の折から、女形とともに道芝みちしばの霜を分けておほりの土手より得たるもの、根を掘らんとして、袂に火箸を忍ばせしを、羽織の袖の破目やぶれめより
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)