づくり)” の例文
伸子の室は、幾分ポンパドゥール風に偏した趣味で、桃色ピンク羽目パネルを金の葡萄蔦ぶどうづた模様で縁取っていて、それは明るい感じのする書斎づくりだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
この花畠は——門を入ると一面の芝生、植込のない押開おっぴらいた突当つきあたりが玄関、その左の方が西洋づくりで、右の方がまわり廊下で、そこが前栽になっている。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東京の都市は模倣の西洋づくりと電線と銅像とのためにいかほど醜くされても、まだまだ全く捨てたものでもない。
結構な水の出る古井戸や、深い杉木立や、凝ったお庭づくり遺跡あとが、山から参いります石筧いしがけひの水と一所に附いておりますから御別荘に遊ばすなら手入らずなんで……
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
窓が多い所為せゐで堂内の明るいのは難有ありがたさを減じる様に思はれた。塔の正面のたんを塗つた三ヶ所の汚れた扉は薄ぐろく時代の附いた全体の石づくりと調和して沈静の感を与へた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
往来おうらいからただちに戸がたたけるほどの道傍みちばたに建てられた四階づくりの真四角な家である。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
幾分古びた西洋づくりの家の入口を入りますと、幸いに外に客はありませんかった。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
銀座の裏の三階の煉瓦づくり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
新しい家は二階づくりひき越した当分の気持が実にい。此の二階の明るい書斎でならば保雄が計画して居る長篇小説も古事記を材料にした戯曲もうやら手が附けられさうに思はれた。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
右手に大溝おおどぶがあって、雪をかついで小家こいえが並んで、そして三階づくりの大建物の裏と見えて、ぼんやりあかりのついてるのが見えてね、刎橋はねばしが幾つも幾つも、まるでの花おどしよろいの袖を、こう
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むかし土手の下にささやかな門をひかえた長命寺ちょうめいじの堂宇も今はセメントづくり小家こいえとなり、境内の石碑は一ツ残らず取除かれてしまい、うし御前ごぜんの社殿は言問橋ことといばしの袂に移されて人の目にはつかない。
水のながれ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何でも持って来いという意気づくりだけれども、この門札かどふだは、さるたぐいの者の看板ではない、とみというのは方違いの北のくるわ、京町とやらのさるうちに、博多はかたの男帯をうしろから廻して、前で挟んで
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此寺このてらの式は何と云ふのか知らないが、赤煉瓦づくり大分だいぶ東洋臭い古い建築である。聖壇がモザイクで出来て居る。内院の廊の壁に坊さん達の肖像を濃厚な色彩でいたのが大半げて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
上流の方には京都の下加茂の森に好く似た中島なかじまがあつて木立こだちの中に質素な別荘が赤い屋根を幾つも見せて居る。両がんには二階づくりに成つた洗濯ぶねが幾艘か繋がれて白い洗濯物がひるがへつて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
母親と祖父じいとがあって、はじめは、湯島三丁目に名高い銀杏いちょうの樹に近い処に、立派な旅籠屋はたごや兼帯の上等下宿、三階づくりやかたの内に、地方から出て来る代議士、大商人おおあきんどなどを宿して華美はで消光くらしていたが
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真中まんなかが抜裏の路地になって合角あいかどに格子戸づくり仕舞家しもたやが一軒。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)