身拵みごしら)” の例文
けれど彼女はふすまには入らなかった。身拵みごしらえもかいがいしく、密かに尼院を出て、真っ暗な伊豆山の上へと、ただ一人で歩いていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三次、上原、吉川、中野たち、みんな厳重な身拵みごしらえで、どうやら脱藩するつもりらしい、そのゆきがけの駄賃に意趣をはらそうというのだろう。
いさましい話 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もっとも雨の身拵みごしらえだけは十分にしたことだけれども、大して気にも留めないで土砂降りの中を学校へ出かけて行った。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
(もっとも雨の降る日であったからでもありましょうが、)そう云った身拵みごしらえで、早稲田わせだおくまで来て下すって
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
聞きあらぬていに其所を立出兵庫屋迄行きしが急病と僞り先松葉屋へ立歸りて心靜こゝろしづか身拵みごしらへなしそつと歌浦が座敷を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
壁辰としては、喬之助に繩を打つ時は自分が打つという約束がある。唯ひとり、早速身拵みごしらえして源助町へ走った。その、壁辰が家を出ようとする時である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
登山服着た青年が二人、同じ身拵みごしらえの少女が三人。いま大声を発した男は、その一団のリイダア格の、ベレ帽をかぶった美青年である。少し日焼けして、仲々おしゃれであるが、下品である。
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一人の旅人はまだ若い、しかし凛々りりしく身拵みごしらえした、気品の勝れた武士であった。もう一人の方は女であった。その武士の妻でもあろうか、旅にやつれてはいるけれど、美しい容貌ようぼうは隠せなかった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小者部屋の行燈あんどんと、食台と、安物の食器だけを残しておいて、大野九郎兵衛の家族は、身拵みごしらえまでして、そこに集まっていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは東京などで政府反対の演説会があるとき、臨検の警官がみせる身拵みごしらえで、私はなにかあるなと直感した。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たとえあの乞食坊主がいつどこで飛び出したところで、帰途の旅は安穏あんのんしごくというものだ——身拵みごしらえは江戸へはいる前にでもよッく話してなおしてもらおう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
付込つけこみ度々無心に來れどもかさぬ時はこと面倒めんだうに成べしと思案しあんして三五郎に向ひまでにいはるゝなればわれ今より品川迄用事あつてゆくあひだ先方せんぱうにて才覺さいかく致し遣すべしとやが身拵みごしらへを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
間もなく厳重に身拵みごしらえした、東馬と源女とが入って来た。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たった今、家へ逃げ帰って来たお甲は、帰るとすぐ、有合う金や持物を身につけ、旅へ走る身拵みごしらえにあわただしかったが、ふと、かどに立った権之助の影に
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは東京などで政府反対の演説会があるとき、臨検の警官がみせる身拵みごしらえで、私はなにかあるなと直感した。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこ/\にきゝなし我が部屋へやいた身拵みごしらへして新造禿を引連兵庫屋へゆく中桐屋へ立寄たちより歌浦さんの御客は上方の衆かととへば女房とんいで御前樣の御言葉おものごしよく御出おいでなさると云ふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
音を聞くだけでも、いかに腕強い上手な船頭かがわかるように思われたが、やがて岸へ漕ぎ着けて降りて来た者を見ると、船頭ではない、二人とも旅がためした身拵みごしらえの
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と休之助に告げ、すぐに身拵みごしらえをしようとした。それを見て、兵馬がひやかすように云った。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私もその中の一人で、深いふちちこみ、寒さは寒し、重い具足や身拵みごしらえ、すんでに凍え溺れるかと思ったところを、繩梯子にすがれと、断崖の上へ、助け上げられたのであります。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこへ揚羽鶴の家紋を印した提灯ちょうちんをかざして十四五人の侍たちが殺到し、ぐるっと又三郎をとり囲んだ、みんな足袋はだしにはかま股立ももだちを取り、たすき、汗止という身拵みごしらえで、彼をとり囲むとすぐ
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
馬のくつ、火縄、わらじの緒、身拵みごしらえの構えまで、一瞬の動作が、大きな一体のすがたで忽ち終ると斎藤内蔵助利三くらのすけとしみつは、老人とはいえ、百戦に鍛えた武者声をはりあげて、次の如き云い渡しを
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちまえの気性で、すぐに決心をし、身拵みごしらえにかかった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
身拵みごしらえも宵とはちがって、草鞋わらじをはき、はかますそを巻きくくり、大太刀を横ざまに帯びて、角鷹つのたかのようなけわしい眼をあたりへ払っている様子——見るからに殺伐さつばつな血のにおいをすぐ思わせる扮装いでたちなのだ。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)