被下度くだされたく)” の例文
此引幕壱帳ヲ宜シク御受納被下度くだされたく御願申上候よう、拙者共ヘ委任相成候間、別紙此幕ヘ出金致シ候人々ノ名前目録モ相添、此段申進候。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
製産地直接取引ノ為メ日本ニ輸出卸値おろしねト同様多少ニかかわラズ勉強つかまつリ御便宜ノ為メ事務所トシテ日ノ出家ニ実物取揃申居とりそろえもうしおりあいだ御買上被下度くだされたく
一年の計は元日にありと申せば随分正月より御出精、明治三十一年の文壇に虚子あることを天下に御吹聴被下度くだされたく希望の到りに不堪候以上。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
過般、御送付相成あいなり候『倫理教科書』の草案、閲見えっけん、少々意見も有之これあり、別紙にしたため候。妄評御海恕被下度くだされたく、此段、得貴意きいをえ候也。
読倫理教科書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「明日のオペラ座の切符手に入り候に付、主人同道お誘いに参り可申もうすべく候、何卒なにとぞ御待受被下度くだされたく候。母上様」と云うのでした。
最終の午後 (新字新仮名) / フェレンツ・モルナール(著)
が、その末にこの頃は談林発句だんりんほっくとやらが流行するから自分も一つ作って見たといって、「月落烏啼霜満天寒さかな——息を切らずに御読下し被下度くだされたく候」
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
小生らは決して善良なる市民に迷惑を及ぼすことはいたさず候につきご安心被下度くだされたく候、まずは取り急ぎ要用のみ。
祭の夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
御存知の通り、蔦屋は上から順々に取られ申候。万一育ちても、祟りにて、かんばしきものには相成るまじく存申候。この辺のこと何卒よく/\お考え被下度くだされたく
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いまは延々すべき時に非ずと心得られ候まま、汗顔平伏、お耳につらきこと開陳、暫時、おゆるし被下度くだされたく候。
帰去来 (新字新仮名) / 太宰治(著)
これのみは御憎悪おんにくしみの中にもすこし不愍ふびん思召おぼしめし被下度くだされたく、かやうにしたた候内さふらふうちにも、涙こぼれ候て致方無いたしかたなく、覚えず麁相そそういたし候て、かやうに紙をよごし申候。御容おんゆる被下度候くだされたくさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一件、相調あひととのひ候上は、調印誓紙お取りかはしのため、しかるべき方を至急おつかはし被下度くだされたく……
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手紙には「寒さ激しく御座候あいだあまり寒き時は湯をやすみ、風ひかぬやう御用心くだされたく候、朝夕よきことしきことにつけお前一人便りに御座候間御身大切に御守おまも被下度くだされたくそうろう
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
さて旧臘きゅうろう中一寸申上候東京表へ転住の義、其後そのご色々の事情にてはかどりかね候所、此程に至り諸事好都合にらちあき、いよいよ近日中に断行の運びに至り候はずにつき左様御承知被下度くだされたくそうろう
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
実例と申しても際限もなきことにていずれを取りて評すべきやらんと惑い候えども、なるべく名高きものより試み可申もうすべく候。御思いあたりの歌ども御知らせ被下度くだされたく候。さて人丸の歌にかありけん
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
身を乞食にやつして故郷に帰る小生の苦衷御察し被下度くだされたく、御恩は永久に忘れ不申まをさず候。昨日御別れ致候後、途中腹痛にて困難を極め、午後十一時やうやく当市に無事安着仕候。乍他事たじながら御安意被下度くだされたく候。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
拙者鎧櫃の血汐、いつまでも溢れ出して道中迷惑に御座候間、一応おあらための上、よろしく御取捨被下度くだされたく、右重々御手数ながら御願申上候。早々
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今は延々すべきときにあらずと心得られ候まま、汗顔平伏、お耳につらきこと開陳、暫時ざんじ、おゆるし被下度くだされたく候。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかしこの事は小生の奮発より成るものにて他人を強うる事は出来不申候故左様御承知被下度くだされたく候。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
御書面拝読、其後両親初め一同無事消光罷在候間しょうこうまかりありそうろうあいだ御安心被下度くだされたく候。御申越の金子百五十円同封為替にてお送り申上候。就職の方差当り思わしき向き無之由これなきよし、別に急ぐことも無之と存候。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昨夜つつがなく帰宅致し候まま御安心被下度くだされたくたびはまことに御忙しき折柄種々御心配ばかり相懸け候うて申訳も無之これなく、幾重にも御詫おわび申上候、御前に御高恩をも謝し奉り、御詫おわびも致し度候いしが
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
其節そのせつ申上もうしあげ候通り、いずこれ時節じせつ見計みはからい、世におおやけにするつもり候得共そうらえどもなお熟考じゅくこう仕候つかまつりそうろうに、書中或は事実の間違は有之間敷哉これあるまじきや、又は立論之旨りつろんのむねに付御意見は有之間敷哉これあるまじきやしこれあらば無御伏臓ごふくぞうなく被仰聞おおせきけられ被下度くだされたく
御免おんゆる被下度くだされたく、御免し被下度くだされたく、御免し被下度候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
本人身の上に別状なきことは武士の誓言せいごん相違あるまじく候、菊園一家の者に心配無用と御伝え被下度くだされたく、貴殿にも御探索御見合せ被下度候、まずは右申入度、早々。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「拝復、今回は栄転に無之これなくむし左遷させんに候。同僚の国文学と議論の末、腕力に及び候為め也。喧嘩はこれにて三度目ゆえ、学校長に気の毒と存じ、逃げ出し申候。御一笑被下度くだされたく。早々頓首」
変人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
悲しいかな、老いの筋骨亀縮して手足十分に伸び申さず、わななきわななき引きしぼって放ちたる矢の的にはとどかで、すぐ目前の砂利の上にぱたりぱたりと落ちる淋しさ、お察し被下度くだされたく候。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
此方より手紙を出しても一向返事も寄越さず、多忙か病気か無性ぶしょうか、或は三者の合併かと存候。小生僻地に罷在まかりあり、楽しみとするところは東京俳友の消息に有之、何卒なにとぞ爾後じごは時々景気御報知被下度くだされたく候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
小生儀、異性の一友人にすすめられ、『めくら草紙』を読み、それから『ダス・ゲマイネ』を読み、たちどころに、太宰治ファンに相成あいなりそうろうものにして、これは、ファン・レターと御承知被下度くだされたく候。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一面識ナキ小生ヨリノ失礼ナル手紙御読了被下度くだされたくそうろう
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)