あた)” の例文
のみならず、陸上の倉庫へ突きあたり、運搬の時間を食らい、腐敗する上に於ては最も都合よき実物となって横たわり出したのだ。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
突然私の顔の右側に、あたってきたものがありました。すると、その部分に焮衝きんしょうが起って、かっと燃え上ったように熱っぽく感じました。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
硯友社はこの全体の力で常に文壇にあたったから、一時硯友社はあたかも政友会が政界に跋扈ばっこしたように文壇を壟断ろうだんして
一貫目位の巌石がんせきがガンと一つ頭へあたろうものなら、たちまち眼下の谷底へ跳ね飛ばされ、微塵みじんとなって成仏する事受合うけあいだ。ああ南無阿彌陀仏南無阿彌陀仏。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
その後は涸沢岳の壁にあたる物凄い音を聞きながらうつらうつらとしている。何度目を開けてみても夜が明けない。
単独行 (新字新仮名) / 加藤文太郎(著)
すなはち溪聲を樹間に求め、樹にすがり、石にりてわづかにこれを窺ふ。水は國道の絶崖にかたよりて、其處に劒の如く聳立しやうりつせる大岩たいがんあたり、その飛沫の飛散する霧のごとくけぶりの如し。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
旦那様は随分他人ひとにはひどくおあたりになりましても、貴嬢あなたさまばかりには一目いちもく置いていらしたのが、の晩の御剣幕たら何事で御座います、父子おやこの縁も今夜限だと大きな声をなすつて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
到頭彼の拳固が弟の鼻にあたつて、弟は泣き出した。彼は、襖を蹴破つて穴をあけた。
眠い一日 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
下には所々しょ/\巨岩おおいわが有りまして、これへ山田川の流れがあたって渦を巻いて落します。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
直接この警察事務にあたった二三の官憲を除く以外、何人もこの事実があったことを知らないのだし、その上古市加十として拘留された者は、実は本物の王様だということを承知しているのは
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
見窄らしくあたつて、わが家の角を折れていつた。……二あし、三あし
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
人心を固め、外、外国にあたらんと欲したる者無きに非ず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
投げられるテープの暴風を身に巻いて踊る踊り子。腰と腰とが突きあたるたびごとに、甲谷は酔いが廻っていい始めた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
欧洲列強間の利害は各々相扞格あいかんかくしていても、根が同文同種同宗教の兄弟国だから、いざとなれば平時の葛藤を忘れて共通の敵たる異人種異宗教の国に相結んであたるは当然あり得べき事だ
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
安全あんぜん進航しんかう表章ひやうしようとなるべき球形きゆうけい檣燈しやうとうが、なにかの機會はづみいとえんはなれて、檣上しやうじやう二十フヒートばかりのところから流星りうせいごと落下らくかして、あはやと船長せんちやうてる船橋せんけうあたつて、とう微塵みじんくだ
私はこの栄職を奉じて以来終始この観念を以て事にあたってまいりました。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
長い鉄棒の先が氷にあたるたびに、襤褸ぼろの間からきらりきらりと氷の面が光った。弓門の傍には、先きまで甲谷の乗っていた車が、浅黄の車輪を空にあげて倒れていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
矢代も後からついて行ったが、いつ人影に突きあたるか分らぬ不安が歩く度びに足を遅らせた。間もなく、アンリエットと久慈の姿もどこにいるか分らなくなっただけではなかった。
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そうして、彼女の姿が彼らの前を通り抜けて、高い麻の葉波の中に消えようとしたとき、初めて彼らの曲った腰はしずかに彼女の方へ動き出した。彼らの肩は狭い路の上であたった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)