肝要かんよう)” の例文
ただいま御話しにならぬその以外の、最も必要なる事をこの席に於て述ぶることは、最もこの紀念祭に肝要かんようであると信ずるのであります。
念力ねんりき無論むろん大切たいせつで、念力ねんりきなしには小雨こさめひとらせることもできぬが、しかしその念力ねんりきは、なにいても自然しぜん法則さだめかなうことが肝要かんようじゃ。
いったい鶯は上手に飼えば寿命が長いものだけれどもそれには細心の注意が肝要かんようで経験のない者に任せたらき死んでしまう死ねばまた代りの鶯を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
社会の人間を働かせようとするはよいが、人間も働くだけ働けば蚕のように上がらなければなるまい。だから人間はゆっくり働くくふうが肝要かんようだよ。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「それはなぜそういう風になるか。」「それは二、三の人の希望だけで政府及び人民一般の希望でないから」というような事で肝要かんような話は終りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
しかれども球戯きゅうぎは死物にあらず防者にありてはただ敵を除外ならしむるを唯一の目的とするをもってこれがためには各人皆臨機応変の処置を取るを肝要かんようとす。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
何はあれ一人にても駈け向い、落ちました関東の武威を揚げますこと、肝要かんようのことかと存ぜられまする
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
池田勝入、森武蔵は、前々から敵をあなどりがちな武勇自慢の者どもである。その方、軍監ぐんかんとして、よくよく心得おくように。機をあやまらずいさめよ。その段、肝要かんようのことなり。謹言。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして、いえたからには、何事なにごと自分じぶんのことは、自分じぶんちからでするという決心けっしん肝要かんようなのだ。そして、おや心配しんぱいをかけるのが、なによりも不孝ふこうであるとらなければならない。
風雨の晩の小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「エエ、そして、今度の実演こそ、あなた方にお見せしたい、ごく肝要かんような場面なのです」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これのインチキからのがれるためには、第一に自分以外の三人が、果して十七憧ずつ並べているかどうかをひと目で知る練習と注意とが肝要かんようで、第二には、相手の手の運動状態と
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ここの世界は苦界くがいという、また忍土にんどとも名づけるじゃ。みんなせつないことばかり、なみだかわくひまはないのじゃ。ただこの上は、われらと衆生しゅじょうと、早くこの苦をはなれる道を知るのが肝要かんようじゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それというのが一番肝要かんような一点において、流通性を欠いているからである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「なによりまずぼくらは、敵に発見されないことが肝要かんようだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
この区別、事において肝要かんようなりとす。
「いまも京町さんと話をして居たことです。ソフトカラーをしているお互いは、ネクタイで締められないように用心ようじん肝要かんようだとナ。ハッハッハッ」先生はうつろのような声を出して笑った。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まった人間にんげんはまごころひとつが肝要かんようで、一しん不乱ふらんになりますと、からだ内部なかからなにやら一しゅ霊気れいきもうすようなものがて、普通ふつうではとてもできない不思議ふしぎ仕事しごとをするらしいのでございます。
(いや戦いった地の、後始末こそ肝要かんようである)
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ところで、そのおくを洞察することが、肝要かんようだて」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)