肉眼にくがん)” の例文
老人のすがたは若者のの前で、だんだんうすれはじめ、一抹いちまつのもやのようなものとなり、やがて肉眼にくがんにはみえないものになってしまった。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
井上君は、円盤がすぐ目の前にちかづいてくるので、こわくなって、望遠鏡から目をはなし、肉眼にくがんで空をながめました。
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
およそ物をるに眼力がんりきかぎりありて其外そのほかを視るべからず。されば人の肉眼にくがんを以雪をみれば一片ひとひら鵞毛がまうのごとくなれども、十百へん雪花ゆき併合よせあはせて一へんの鵞毛をなす也。
べつかわったからだでもないが、しかし人間にんげんからいえばつまり一の幽体ゆうたい、もちろん肉眼にくがんることはできぬ。
秀吉ひできちは、双眼鏡そうがんきょうというものを、はじめて、のぞいたのでした。しかしつき世界せかい秘密ひみつ肉眼にくがん以上いじょうに、わからなかったのでした。いくらか、はっきりするぐらいなものです。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
鳥渡ちょっと悪魔のような、また工場の隅から飛び出してきた職工のような恰好である。それほどアリアリとながめられる人の姿でありながら、一度元の肉眼にくがんにかえると、薩張さっぱり見えない。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どこへ落ちたかそれていったか、肉眼にくがんでは見えなくなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大体だいたい日本にほん言葉ことばが、肉眼にくがんえないものをことごとかみってしまうから、はなはだまぎらわしいのでございます。かみという一なかにはんでもない階段かいだんがあるのでございます。
「見えないことはありませんよ。しばらくじっと見ておいでになると、島の輪廓りんかくがありありと見えてきます。わしらには肉眼にくがんでちゃんと見えているんですからねえ。このけんとうですよ」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さびるくさるはじめさびの中かならず虫あり、肉眼にくがんにおよばざるゆゑ人しらざる也。(蘭人の説也)金中なほむしあり、雪中虫なからんや。しかれども常をなさゞればとしめうとして唐土もろこししよにもしるせり。
しかれども肉眼にくがんのおよばざる至微物こまかきものゆゑ、昨日きのふゆき今日けふの雪も一ばう白糢糊はくもこなすのみ。下のは天保三年許鹿君きよろくくん*1高撰雪花図説かうせんせつくわづせつところ雪花せつくわ五十五ひんの内を謄写すきうつしにす。ゆき六出りくしゆつなす
その場所は、どういう景色のところで、その飛行場はどんな地形になっているのか、それは肉眼にくがんでは見えなかった。なにしろ、日はとっぷり暮れ、黒白も見わけられぬほどの闇の夜だったから。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まして人間にんげん肉眼にくがんなどにうつづかいはございませぬ。