立塞たちふさ)” の例文
「滅相な。」と帳場を背負しょって、立塞たちふさがるていに腰を掛けた。いや、この時まで、紺の鯉口こいぐちに手首をすくめて、案山子かかしのごとく立ったりける。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんなにいじめなくっても、と云おうとしたとき、うしろから来て追いぬいた浪人者が、おみやの前に立塞たちふさがったのである。
素早く認めて、退屈男がずかずかと歩みよったかと見えましたが、ぬうっとその前に立塞たちふさがると、むしろ気味のわるい太い声で呼びかけました。
私は丁度ちょうど其処そこを通りかかって、驚いたとも驚くまいとも、ず表に立塞たちふさがって物も言わずに戸を打締ぶちしめて、れからそろ/\その家来殿に話したことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
二人は気味わる/\みちの中ばまで参ると、一むら茂る杉林の蔭より出てまいる者をすかして見れば、面部を包みたる二人のおのこ、いきなり源次郎の前へ立塞たちふさがり
しまいには壮士みたいな奴が五六人、大手を拡げて行手に立塞たちふさがったりするようになったので、流石さすがの断髪、男装令嬢も門外へ一歩も出られなくなってしまった。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
正面へ立塞たちふさがったのは銭形平次でした。この時平次は二十八歳、生れながらの精気五体にち充ちて、非凡の使い手岩根半蔵の前に莞爾かんじとしておくれる色もありません。
街灯のともつてゐない真ツ暗がりに、Kは自分の鼻先にのひよろ高い男が立塞たちふさがつてゐるのを見たので、ぱらひがよくするやうにKは丁寧に帽子を取つてお辞儀をしたが
そこへ事務員らしい黒い男が飛び出して来て、大手を拡げて道の真ン中に立塞たちふさがった。
白妖 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
(彦三郎は無埋に振切つて行かうとするを、六郎兵衞は留める。おかんはうろ/\しながら權三を手招ぎし、なんとかしろと云ふ。權三ももう堪らなくなつて進み出で、彦三郎の前に立塞たちふさがる。)
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
Kは大股に歩いてBの前に立塞たちふさがった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
急先鋒きゅうせんぽうの屠犬児、玄関へ乱入する、前面を立塞たちふさぎて喰留むるは護衛の門番、「退すされ、推参な!」というをも聞かず、無二無三に推込おしこめば
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
妙見堂は町はずれから五、六町いった山側にあるのだが、そのちょっと手前までいったとき、二人の男があらわれて、わたくしの前に立塞たちふさがった。
やぶからし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
せせら笑う佐々波金十郎の前へ、どこから現れたか、光川左門太、押っ取り刀で立塞たちふさがりました。
私の寝室へやの入口一パイに立塞たちふさがって、二人の談判に耳を傾けていたが……むろんデッキ野郎の癖に、わざわざ親方の私の処へ押しかけて来る兼の利いた風な態度を憎んで
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と云うより早く、遠見とおみに張って居りました門弟一人いちにん、一筋道に立塞たちふさがり
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかしそのとき、稽古着のままの平手がとびだして来、六尺棒を持って、その侍の前に立塞たちふさがった。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
摩耶われを見棄てざりしと、いそいそと立ったりし、肩に手をかけ、下にらせて、女は前に立塞たちふさがりぬ。やがて近づく渠等の眼より、うたてきわれをばかばいしなりけり。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
行く手に立塞たちふさがつたのは、何時の間にやら其處に來て居たガラツ八の八五郎だつたのです。
その一刹那せつな、私は印度人の前に大手を拡げて立塞たちふさがった。……と思う間もなく背後うしろドアから飛出したらしい、黄色いワンピースを着たアダリーが私の前に重なり合って突立った。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と熊の前に立塞たちふさがり、両手を合せて拝んで居りまする。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うしろから足ばやに追いぬいた三人の黒い人影が、いきなり彼のゆくてに立塞たちふさがったのである。
野分 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それくらいのことは心得た後棒の若い者、息杖いきづえを取って花嫁の駕籠の前に立塞たちふさがりましたが、相手はその出鼻をくじくように、横合から飛出して、胸のあたりをドンと突きました。
標本らしいものが一パイに並んだ硝子ガラス戸棚の行列が立塞たちふさがっているが、反対に東側の半分の床は、薄いホコリを冠った一面のリノリウム張りになっていて、その中央に幅四五尺
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
立塞たちふさがるように、しかも、にがすまいとするように、かまち一杯にはだかるのである。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ぼくもいちどやられました、道を歩いていたらいきなり立塞たちふさがって、あの拳骨を突き出してみせながら云うんです、頭がおかしいとは知ってましたがね、驚きましたよ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それくらいのことは心得た後棒の若い者、息杖いきづえを取って花嫁の駕籠の前に立塞たちふさがりましたが、相手はその出鼻をくじくように、横合から飛出して、胸のあたりをドンと突きました。
正面の頑丈な木のドアに、小児の頭ぐらいの真鍮鋲しんちゅうびょうを一面に打ち並べた倉庫のような石造洋館が立塞たちふさがっている。残りの三方は巨大なコンクリート建築の一端で正方形に囲まれている。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とお道さんが、その前に立塞たちふさがった。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ぼくもいちどやられました、道を歩いていたらいきなり立塞たちふさがって、あの拳骨げんこつを突き出してみせながら云うんです、頭がおかしいとは知ってましたがね、驚きましたよ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ヒラリと身をひるがえしたお滝、平次の袖の下を潜るように先へ立塞たちふさがって大手を拡げます。粋な潰し島田、縮緬ちりめん花見衣はなみぎ、少し斜に構えて両手を開いたポーズは、銭形平次の眼にも型になっておりました。
三好が白い歯を剥出むきだして笑い笑い又野の前に立塞たちふさがった。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と六郎右衛門が叫ぶより疾く、宇女が身を飜えして図書の前へ立塞たちふさがった……続けざまに二の矢、三の矢、四の矢、ふつふつと飛んでくる矢の、二本までが宇女の袖を貫いた。
三十二刻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
平次は飛鳥のごとく駆け抜けて、二人の前へ立塞たちふさがりました。
馬上の一人がひらりと馬を下り、鞭を片手にづかづかとおゆきの前へ立塞たちふさがった。
峠の手毬唄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
がつづく平次は、その前に立塞たちふさがっていたのです。
なおも側へ寄って急きたてようとすると、下僕が血相を変えて立塞たちふさがった。
武道宵節句 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
行手へ立塞たちふさがって大手を拡げたものがあるのです。
立塞たちふさがる半太郎の鼻先へ、一人が白刃を突きつけながら喚いた。
無頼は討たず (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
が續く平次は、其前に立塞たちふさがつて居たのです。
「おい」と助三郎が前へ立塞たちふさがった、「いまの言葉を取消せ」
末っ子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
堺藤兵衛大手を拡げて立塞たちふさがりましたが
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
泰二郎は前へ立塞たちふさがった、彼は自分が抑えられなかった。
月の松山 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
八五郎は大手を拡げて立塞たちふさがりました。
と行手へ立塞たちふさがった。足をとめた侍が
だだら団兵衛 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)