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牆
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かき
ふりがな文庫
“
牆
(
かき
)” の例文
彼を美く見たるは彼の教師と院長とのみならで、
牆
(
かき
)
を隣れる
男子部
(
だんじぶ
)
の諸生の常に彼を見んとて打騒ぐをも、宮は知らざりしにあらず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
村の男は大いに恨み憤って急に道士の跡を追って往こうとした。
牆
(
かき
)
の隅をまがるとき、断りとられた手綱が垣の下に棄ててあった。
種梨
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そうして置いて、わたしたちは、その領土へすっかり
牆
(
かき
)
をこしらえてしまって、自分の思う通りの人を集め、思う存分のことをしてみます。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鷸蚌
(
いつぼう
)
の争いは漁夫の利ということもないではないが、兄弟
牆
(
かき
)
にせめげども外その侮りを受けずという真理も忘れてはならぬ。
現代日本の思想対立
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
維新の前、彦根藩士に寺沢友雄(今なお生存せる人)といえる人ありしが、一夜同藩士某の邸辺りを通行せしとき、同邸の
牆
(
かき
)
の辺りに人あり。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
▼ もっと見る
鞭撻してきた。民党同志がいたずらに
牆
(
かき
)
にせめいでいては、いつまでたっても藩閥を倒すことはできない。困るのは人民ばかりというわけで……
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
門の前は一めんに柳が
植
(
う
)
わり、
牆
(
かき
)
の内には桃や
杏
(
あんず
)
の花が盛りで、それに長い竹をあしらってあったが、野の鳥はその中へ来て
格傑
(
かっけつ
)
と鳴いていた。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
章魚
(
たこ
)
のようにぐにゃぐにゃしている肉の塊りと彼女との間には、理窟の壁も分別の
牆
(
かき
)
もなかった。自分の触れるものが取も直さず自分のような気がした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
かつまた、文脩まれば武備もしたがって起り、仏人、
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
げども外その
侮
(
あなどり
)
を
禦
(
ふせ
)
ぎ、一夫も報国の大義を誤るなきは、けだしその
大本
(
たいほん
)
、脩徳開知独立の文教にあり。
学校の説:(一名、慶応義塾学校の説)
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
唐の薛調、
姿貌端麗
(
しぼうたんれい
)
なり。人よんで
生菩薩
(
いきぼさつ
)
という。——衛玠また美容秀麗なり、
予章
(
よしょう
)
にしたごうて都下にきたる。人聞きおよびて、観る者、道に
塞
(
ふさ
)
がりて
牆
(
かき
)
のごとし。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夫婦はそのために少しずつ交際の範囲を狭くし、努めて
牆
(
かき
)
の内を
覗
(
のぞ
)
かれないようにさえした。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その理由如何、曰く、「兄弟
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぐも外その
侮
(
あなどり
)
を防ぐ、大敵外にあり、
豈
(
あ
)
に国内相攻るの時ならんや」。これ明かに彼が一個の国民的論者たることを自白するものに
非
(
あら
)
ずや。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
宰予
(
さいよ
)
昼寝
(
ひるい
)
ぬ。子曰く、
朽木
(
きゅうぼく
)
は
雕
(
ほ
)
るべからざるなり。糞土の
牆
(
かき
)
は
杇
(
ぬ
)
るべからざるなり。予に於て何ぞ
誅
(
せ
)
めんやと。子曰く、始め吾の人に於けるや、其の言を聴きて其の行を信ぜり。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
是非の心偏すれば、民或は兄弟
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぎ父子相
訟
(
うつた
)
ふ者有り。凡そ情の偏するや、四
端
(
たん
)
と雖遂に
不善
(
ふぜん
)
に
陷
(
おちい
)
る。故に學んで以て中和を
致
(
いた
)
し、
過不及
(
かふきふ
)
無きに
歸
(
き
)
す、之を
復性
(
ふくせい
)
の學と謂ふ。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
相手の意に任せながら、その
牆
(
かき
)
を越えてこそ、そもじ二人は、この島の主といえるのじゃ
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
人家の
牆
(
かき
)
に果實の熟するを見れば必石を投じ花の開くを見れば直にその枝を折らんとし、猫狗の路傍に遊ぶに逢へば木を取つて撲たうとするのは、蓋しわが國民性の然らしむる處
十年振:一名京都紀行
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
財産を分ち兄弟
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぐようになっては、たちまちにして家号というものが明白に樹立して、二条殿と九条殿と一条殿と近衛殿とは、別の家のような気がしてしまったのであります。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
漁師の子は
遁
(
のが
)
れて靴工の宅に入り仔細を明かし、
踵
(
かかと
)
を前に指を後にした靴一足を
拵
(
こしら
)
えもらい、
穿
(
うが
)
って村を出るに高い
牆
(
かき
)
で取り廻らして
踰
(
こ
)
ゆる事ならぬから、やむをえず水
竇
(
あな
)
中から出た。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
入道、
兄弟
(
けいてい
)
牆
(
かき
)
にせめげども、外その侮りを
禦
(
ふせ
)
ぐという。今や稀代の悪魔がこの日本に禍いして、世を暗闇の底におとそうとする危急の時節に、兄はとかくに弟を妬んで、ややもすれば敵対の色目を
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
戀も 名譽も 空想も みんな泥柳の
牆
(
かき
)
に涸れてしまつた。
定本青猫:01 定本青猫
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
石
(
いし
)
の
牆
(
かき
)
の
繞
(
めぐ
)
らされた
高
(
たか
)
い、
白
(
しろ
)
い
家
(
いへ
)
が
見
(
み
)
える。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
堅固な
牆
(
かき
)
をめぐらそうとしたのである。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
兄弟
牆
(
かき
)
に
鬩
(
せめ
)
ぎ、相殺し
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
景は何事だろうと思って
牆
(
かき
)
を乗り越えて窺きに来た。陳はそこで女を放した。女は景を見つけてじっと見ていたが、暫くしてそのまま走って出ていった。
阿霞
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
あるいは彼女には始めから超越すべき
牆
(
かき
)
も壁もなかった。始めから
囚
(
とら
)
われない自由な女であった。彼女の今までの行動は何物にも
拘泥
(
こうでい
)
しない天真の発現に過ぎなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
李通判
(
りつうはん
)
の
女
(
むすめ
)
で、早く亡くなって、此所の
牆
(
かき
)
の外に埋められているものです、私は死んでおりますけれども、情熱がまだ消えずにおりますから、若い方と交わりたいのが私の願いです
蓮香
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
石
(
いし
)
の
牆
(
かき
)
の
繞
(
めぐ
)
らされた
高
(
たか
)
い、
白
(
しろ
)
い
家
(
いえ
)
が
見
(
み
)
える。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
周は成を伴れていきたかったが、
強
(
し
)
いてもいえないので独りで家の門を
叩
(
たた
)
いた。返事をする者もなければ起きて来る者もなかった。周はそこで
牆
(
かき
)
を越えて入ろうと思った。
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「お爺さんは、崩れかかった
牆
(
かき
)
に圧しつぶされて死んじゃったよ。今、ちょうど墓詣りにいくところだ。家にはだれもいないから、ちょっと路ばたで待っててくださいよ、すぐ帰ってくるから。」
阿繊
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
牆
漢検1級
部首:⽙
17画
“牆”を含む語句
牆壁
樹牆
瑞牆
生牆
蕭牆
人牆
土牆
妓館屋牆
巌牆
牆屋
牆林
牆辺
胸牆
舷牆
門牆