無情むじょう)” の例文
バナナのかわも、つえも、いまさら河水かわみず無情むじょうなことをさとりました。そして、これからどうなることだろうとおもっていました。
河水の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
民部みんぶはものをいわなかった。小文治も黙然もくねんとふかいいきをつくのみだった。蔦之助もまた暗然あんぜんと言葉をわすれて、無情むじょうほしのまたたきになみだぐむばかり……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よるになると、とおくで獣物けもののほえるこえと、永久えいきゅうだまってつめたくかがやほしひかりと、いずこへともなくけてゆく、無情むじょうかぜおといたばかりであります。
山の上の木と雲の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とにかく、春もくれかかる東海道とうかいどうつじには、そのうわさが、なにかしら、人に無情むじょうを思わせた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひろ野原のはらは、ゆきにおおわれていました。無情むじょうかぜが、わが世顔よがおに、あさからよるまで、野原のはらうえきつづけています。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
と——思うまに菊池半助の無情むじょうやいばは、颯然さつぜんと、伊那丸いなまるえりもとへおちた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにもわるいことをしないじゃないか。」と、幸吉こうきちは、つくづく叔父おじさんのかおて、どうしてこのあわれないぬだけに無情むじょうなことをするのだろう、ほかのいぬには
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
有情うじょう無情むじょう
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みなみほうからいてくるやさしいかぜは、どのにもくさにもしんせつで、柔和にゅうわでありましたけれど、きたほうからいてくるかぜは、ちいさいのでもおおきなのでも、冷酷れいこくで、無情むじょう
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さすがに、無情むじょうかぜですら、人間にんげんこころのあさましさにあきれてしまったように、さもはらだたしげに、つよつよいて、みちうえ砂塵さじんをまいて人間にんげんこまらしてやろうとしました。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねずみはそのはなしをきいて、このバケツは、自分じぶん子供こども時分じぶんに、みずもうとしてちたときに、まだぴかぴかひかっていばっていて、無情むじょうであったのだということをおもしました。
ねずみとバケツの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たけぼうや、ちかかったくいのようなものや、れた煉瓦れんがなどがかさねられてあって、せっかく、したけれど、やわらかなあたまを、それらの無情むじょう物体ぶったいにくじかれて、がりくねって、わずかに
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)