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深沈
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しんちん
ふりがな文庫
“
深沈
(
しんちん
)” の例文
原始的にしてまた未来の風景がこの水にある。船は
翠嶂
(
すいしょう
)
山の下、
深沈
(
しんちん
)
とした
碧潭
(
へきたん
)
に来て、その
棹
(
さお
)
をとめた。
清閑
(
せいかん
)
にしてまた
飄々
(
ひょうひょう
)
としている。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
「もとより、表面は——そういう
態
(
てい
)
にしてあるが、まことは……」右衛門尉は、
深沈
(
しんちん
)
と
更
(
ふ
)
けてゆく燭の蔭を、見まわした。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
舟津の家なみや人のゆききや、馬のゆくのも子どもの遊ぶのも、また湖水の
深沈
(
しんちん
)
としずかなありさまやが、ことごとく夢中の光景としか思えない。
河口湖
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
深沈
(
しんちん
)
たる夜気の中で、とぎれとぎれに
蟋蟀
(
こおろぎ
)
が鳴いている。これで、もうかれこれ四半刻。どちらも
咳
(
しわぶき
)
ひとつしない。
顎十郎捕物帳:11 御代参の乗物
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
急の動作で、手近の
燭火
(
ともしび
)
が着衣の風に
煽
(
あお
)
られたのだ。その、白っぽい光線の沈む座敷……耳をすますと、
深沈
(
しんちん
)
たる夜の歩調のほか、何の物音もしない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
「
深沈
(
しんちん
)
厚重
(
こうちょう
)
は
是
(
こ
)
れ第一等の
資質
(
ししつ
)
、
磊落
(
らいらく
)
雄豪
(
ゆうごう
)
は是れ第二等の資質、
聡明
(
そうめい
)
才弁
(
さいべん
)
は是れ第三等の資質なり」と。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そこには
深沈
(
しんちん
)
たるものも、苦渋なものもないが、その代り、春の光のような
和
(
なご
)
やかな明るさと、
滴
(
したた
)
るような情愛とがあり、高貴な
整頓
(
せいとん
)
と、清朗な美しきとがある。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
恵那山中の雪の夜は、
深沈
(
しんちん
)
として
更
(
ふ
)
け渡り、群がり
聳
(
そび
)
ゆる山々は眼前に口を開けている巨大な谷を
囲繞
(
いにょう
)
してすくすくと空に背を延ばし、下界の人間の
争闘
(
あらそい
)
を嘲笑うがように静まっている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
信長をはじめすべての者は、権六勝家のことばが聞えている間も、彼が黙って書状を巻いて信長の前へ納めて後も、
深沈
(
しんちん
)
とただ白い
燭
(
しょく
)
を見まもっていた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
上手
(
かみて
)
の眺めにもうち
禿
(
はげ
)
た岩石層は
少
(
すくな
)
く、すべてが微光をひそめた
巒色
(
らんしょく
)
の丘陵であった。
深沈
(
しんちん
)
としたその
碧潭
(
へきたん
)
。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
赤い灯に照された方は、輕い苦惱に
引歪
(
ひきゆが
)
んで、少し熱を帶びたやうに見えると、青い月に照された方は、眞珠色に光つて、
深沈
(
しんちん
)
としてすべての情熱が
淀
(
よど
)
んで見えます。
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
とは、
真
(
しん
)
の男子の態度であろう。男もこの点まで
思慮
(
しりょ
)
が進むと、先きに述べたる宗教の
訓
(
おし
)
うる趣旨に
叶
(
かの
)
うてきて、
深沈
(
しんちん
)
重厚
(
じゅうこう
)
の
資
(
し
)
と
磊落
(
らいらく
)
雄豪
(
ゆうごう
)
の
質
(
しつ
)
との
撞着
(
どうちゃく
)
が消えてくる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
頭の上に覆いかぶさる深い木立ちは、いま、宵へ移ろうとして刻々に黒さを増し、空を屋根のこのいで湯の表は、高い夕雲の去来を宿して、いっそう
深沈
(
しんちん
)
と
冴
(
さ
)
え返ってくる。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ふつうの居館とちがって、寺院なので、たそがれの一刻は、何となく、物のあいろも
深沈
(
しんちん
)
と
仄暗
(
ほのぐら
)
い。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然
(
しか
)
しながらその
為
(
ため
)
にまた水は
紺碧
(
こんぺき
)
を加え、容量は豊富に
深沈
(
しんちん
)
たる山中の幽寂境を現出した。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
他は
清水町
(
しみずちょう
)
の町家ならび——ひとしく大戸をおろして、雪とともに
深沈
(
しんちん
)
と眠る真夜中。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼の思想はその手法と共に次第に円熟し、高潮した英雄主義には、ショーペンハウエル風の
厭世主義
(
えんせいしゅぎ
)
が加味され、宿命悲劇の
深沈
(
しんちん
)
たる暗さが、世界大に
拡充
(
かくじゅう
)
される愛の理想と結び付いた。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
二人の従者も酒に酔って、庭向きの
廂
(
ひさし
)
の下に
倚
(
よ
)
ッかかったまま
性体
(
しょうたい
)
もない。
深沈
(
しんちん
)
と夜は
更
(
ふ
)
けに、更けて行き、まさに
屋
(
や
)
の
棟
(
むね
)
も三寸下がるという
丑満刻
(
うしみつどき
)
の
人気
(
ひとけ
)
ない冷たさだけが肌身にせまる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人を包む
深沈
(
しんちん
)
たる夜気に、はや
東雲
(
しののめ
)
の色が動いている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
深沈
(
しんちん
)
の
極
(
きは
)
み
真黒
(
まくろ
)
に
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
匕首
(
あいくち
)
の刃を
手裏
(
てうら
)
にして、ジッとえぐりこんだ穴へ眼をあてて覗いてみると、——おお、まさしく、そこには、お綱の想像もしなかった景色が
深沈
(
しんちん
)
と、不可思議なる夜の底に沈まれてあったのだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
深沈
(
しんちん
)
とふけゆく
座敷
(
ざしき
)
のうちに、こう
湿
(
しめ
)
ッぽい
密々話
(
ひそひそばなし
)
。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜は
深沈
(
しんちん
)
と
更
(
ふ
)
けた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
深沈
(
しんちん
)
たる真夜中。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
深
常用漢字
小3
部首:⽔
11画
沈
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
“深”で始まる語句
深
深山
深傷
深淵
深更
深切
深川
深夜
深々
深窓