氏子うじこ)” の例文
るに見兼みかねてわたくし産土うぶすな神様かみさまに、氏子うじこ一人ひとりんな事情ことになってりますから、うぞしかるべく……と、おねがいしてやりました。
もとは年越としこしその他の定例の祭りにも、氏子うじこが集まってこの総の声、またはエイエイ祝詞をあげるおやしろがあったそうである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
念のために下谷へ引返して、徳蔵稲荷の氏子うじこ総代——和泉屋いずみやという町内の酒屋の主人に逢って訊いてみると、思いも寄らぬ新事実が挙がりました。
きのうのおまつりに、氏子うじこがあげた物であろう。三方さんぽうの上に、うずたかく、大げさにいえば、富士ふじの山ほどんであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その氏神を持つ町内の氏子うじこの男女たちは、もう一ケ月も前からそろいの衣裳いしょうやその趣向の準備について夢中である。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
月のついたちには、太鼓が鳴って人を寄せ、神官が来て祝詞のりとを上げ、氏子うじこの神々達が拝殿に寄って、メチールアルコールの沢山たくさんはいった神酒を聞召し、酔って紅くなり給う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
麹町永田馬場の日吉山王、江城こうじょう産土神うぶすながみとして氏子うじこもっとも多く、六月十五日はその祭礼である。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
町内氏神うじがみの祭礼も七五三の祝儀も、自由主義を迎える世には遠慮しなくてはならなくなる。心配は参詣さんけいをする氏子うじこよりも御幣ごへいを振る神主かんぬし提灯屋ちょうちんやのふところ都合であろう。
仮寐の夢 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こんな熱心家がある上に、一年に一度の祭りの日を迎えようとする氏子うじこ連中の意気込みと来たら、その楽しさは祭礼当日よりも、むしろそれを待ち受ける日にあるかのよう。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おんなじ産神様氏子うじこ夥間なかまじゃ。承知なれど、わしはこれ、手がこの通り、思うように荷が着けられぬ。御身おみたちあんばいよう直さっしゃい、荷の上へせべい、とじじいどのが云いますとの。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その花山車も各町内からき出すというわけではなく、氏子うじこの町々も大体においてひっそり閑としていて、いわゆる天下祭りなどという素晴らしい威勢はどこにも見いだされなかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まさしの両親とも日本橋生れで、なくなった母親は山王様の氏子うじこ此家こちらは神田の明神様の氏子、どっちにしても御祭礼おまつりにははばのきく氏子だというと、魚河岸から両国のきわまでは山王様の氏子だったのが
神社が合祀ごうしせられ氏子うじこが多くなると、そういう小さい団体はかずを増して、たがいに相手の心持こころもちが通ぜず、思いおもいなことをするようになったのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いくら平相国へいしょうこくが中央にを唱えようと、奥州の天地では何ともしていない。いてその血を源氏か平氏かといえば、源氏の血が濃い。——吉次もその氏子うじこの一人だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは氏子うじことして是非ぜひ心得こころえかねばならぬこととぞんじられます。もっともそのお仕事しごとはただ受附うけつけてくださるだけで、直接ちょくせつ帰幽者きゆうしゃをお引受ひきうくださいますのは大国主命様おおくにぬしのみことさまでございます。
殺されたお柳は、有馬屋のお糸、棟梁吉五郎きちごろうの娘お留と並んで、明神様の氏子うじこの中に、三つ星オリオンのように光った娘だけに、碧血に浸ってこと切れた姿は、言いようもなく凄艶せいえんを極めました。
氏子うじこの町内も軒提灯のきぢょうちんぐらいのことで、別になんの催しもございませんでした。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いわんや、銑吉のごとき、お月掛なみの氏子うじこをや。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二十三夜待にじゅうさんやまちなどとやや似ていたのは、立待たちまちといって氏神うじがみさまのやしろの前に、氏子うじこが何人か交替して立ちどおしに立っていて、そのあいだかねを鳴らしつづけること
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大同年間から生田の氏子うじこ、つまり神戸(カムベ)の民は、ここで酒を醸造しており、来舶の新羅しらぎの外客が入朝の日には、その酒を飲ませる風習があったという方が、ぼくらには耳よりな話であった。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その氏子うじこも一同でこれを飲んだのは、つまりはこの陶然たる心境を共同にしたい望みからであった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)