梨本なしもと)” の例文
とらわれの僧忠円は、宮が梶井の梨本なしもと門跡もんぜきとしておわした頃の侍僧じそうである。べつな意味では近臣といってもいい。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いいかね、皮切りだからどうせおかしいよ、しつこしと、笑っちゃいかん、しつこしと人はいえども八重桜盛りながきはうれしかりけり、はははは梨本なしもと跣足はだしだろう
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
たがひぞとて御優おやさしき御詞おことばわれもしきりにうれしくてたづぬるひとありとこそあかさゞりしが種々いろ/\との物語ものがたり和女そなた母御はゝご斯々かく/\ひとならずやとおもらぬ御問おとまことかぞなんとして御存ごぞんじとへばわすれてるべきか和女そなたれとは兄弟きやうだいぞかしれは梨本なしもというなるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つみつくりなれわれゆゑにひと二人ふたりまでおなおもひにくるしむともいざやしらがき若葉わかばつゆかぜにゆふぐれの散歩さんぽがてら梨本なしもとむすめ病氣びやうきにて別莊べつそう出養生でやうじやうとや見舞みまひてやらんとてしばおとづれしにお八重やへはじめて對面たひめんしたりはゞはんの千言百言ちこともゝことうさもつらさもむねみておんともはず義理ぎりとも
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふく姿すがた高下かうげなくこゝろへだてなくかきにせめぐ同胞はらからはづかしきまでおもへばおもはるゝみづうをきみさまくはなんとせんイヤわれこそは大事だいじなれとたのみにしつたのまれつまつこずゑふぢ花房はなぶさかゝる主從しゆうじうなかまたとりや梨本なしもと何某なにがしといふ富家ふうかむすめ優子いうこばるゝ容貌きりやうよし色白いろじろほそおもてにしてまゆかすみ遠山とほやまがたはなといはゞと比喩たとへ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)