松蔭まつかげ)” の例文
かくの如き眺望はあえてここのみならず、外濠そとぼり松蔭まつかげから牛込うしごめ小石川の高台を望むと同じく先ず東京ちゅうでの絶景であろう。
この硯は、重衡の父、入道相国が、砂金を宋の皇帝に送ったお礼として貰ったもので、松蔭まつかげといわれる名品であった。
うまのとどともすれば松蔭まつかげでてぞつるけだし君かと 〔巻十一・二六五三〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
やさしさよ、松蔭まつかげ清水しみづやなぎおとしづくこゑありて、旅人たびびとつゆわかてば、細瀧ほそだき心太ところてんたちまかれて、饂飩うどん蒟蒻こんにやくあざけるとき冷奴豆腐ひややつこたではじめてすゞしく、爪紅つまくれなゐなるかにむれ
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
立て或松原に差掛りしが此方の松蔭まつかげより黒き頭巾づきんにておもてを隱せし一人の侍士さぶらひ四邊あたりを見廻し立出て忠八暫しと云こゑに驚き見返みかへれば彼の侍士が黒き頭巾をぬぐ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私の両親ふたおやの墓は、ついこの右の方のおか松蔭まつかげにあるんだが、そこへ参詣おまいりをして、墳墓はかの土に、かおりい、すみれの花が咲いていたから、東京へ持って帰ろうと思って、三本みもとばかりんで
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
春の花見の岡の御所、秋の月見の浜の御所、泉殿いずみどの松蔭まつかげ殿、馬場殿といった所や、人々の邸宅も三年の間にすっかり朽ち果て、寝所には、月の光がさんさんと降り注いでいた。
人間にんげんまへとき如意輪によいりん御姿おすがたは、スツと松蔭まつかげやゝとほく、くらちひさくをがまれた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みづうみの一たんは、ふね松蔭まつかげゑがいて、大弦月だいげんげつごとかゞやいた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
再びおどろきて一れいなせば佐太夫も會釋ゑしやくして此方へと云て以前の松蔭まつかげ連行つれゆき扨も此度喜内殿の横死わうし嘸々さぞ/\愁傷しうしやうならん其方も知て居らんが友次郎の事に付ては大恩の有る喜内殿故それがしも早速參り御世話も致すべき筈なれども世の義理ぎりあれば思ひながら打過にせしが扨今朝其方が出立と聞及びて最前さいぜんより此所こゝ待居まちゐたりしなり友次郎事は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)