あけ)” の例文
新字:
平次は笹野新三郎と打合せて、八丁堀を繰出したのはあけ寅刻なゝつ。霜を踏んで倉賀屋から、『さざなみ』の前後を、すつかり取圍とりかこませました。
渠は、東京にゐた時から、つかれるまでは、あけがたの三時までも、四時までも、褥に這入らないのが習慣であつた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
金澤かなざはばかりかとおもひしに、久須美佐渡守くすみさどのかみあらはす、(浪華なにはかぜ)とふものをめば、むかし大阪おほさかのことあり——二日ふつかあけなゝどきまえより市中しちうほらなどいて
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
學び得て覺えある惡漢しれものなれ共不意ふいと云多勢たぜいにて押伏おしふせられし事故汚面々々をめ/\召捕めしとられけり斯て又友次郎は其朝馬喰町の旅宿をあけ寅刻なゝつに立出て板橋の方へいたり吾助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼等かれらいづれも、まだぐつすりとねむつて家族かぞくものにはそつ支度したくをして、うごけぬほど褞袍どてらかさねて節制だらしなくひもめて、おもてけるとひやりとするあけちか外氣ぐわいきしろいききながら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
り盡す一夜ひとよの霜やこのあけをほろんちょちょちょと澄む鳥のこゑ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
わが歌は呼吸いき迫りきて起きいでしあけの光に書きにける歌
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
地に光明を告ぐるべくあけの明星あらはれつ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ああ「にるばな」よ、あけの星。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
紅匂ふあけの空
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
としおそしと待居たり然るにあけ寅刻頃なゝつごろとも思ふ頃はるかに聞ゆる驛路えきろすゞ馬士唄まごうたこゑ高々たか/″\と來掛る挑灯てうちん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あけがた六時の時計が鳴つたのである。宿の臺どころでは、下女が起き出たらしい。そして、渠の神經はます/\冴えて來るが、あたまは疲勞して考へがまとまり兼ねて來た。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
桔梗を活けたる水を換へまくは肌は涼しきあけにしあるべし
長塚節歌集:3 下 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
霜の空透きとほり青しこのあけや月は落ちつつ松二木ふたき見ゆ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
能考へ置と云ばお節は彌々いよ/\打喜びまことに何から何まで厚い御世話有難う御座りますと言けるが終夜よもすがらも遣らず心せくまゝ一番どりなくや否や起出つゝ支度調へ藤八諸共もろともあけ寅刻比なゝつごろより宿屋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)