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暗黒
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くらやみ
ふりがな文庫
“
暗黒
(
くらやみ
)” の例文
源次の姿を吸い込んで行った斜坑の
暗黒
(
くらやみ
)
に向って、人知れずソッと頭を下げてみたいようなタヨリない気持にさえなったのであった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
迂濶
(
うかつ
)
に手を放せば、彼は底知れぬ
暗黒
(
くらやみ
)
に転げ
墜
(
お
)
ちて、お杉と同じ運命を追わねばならぬ。さりとて
此
(
こ
)
のままの
暗黒
(
くらやみ
)
では仕方が無い。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
暗黒
(
くらやみ
)
で
能
(
よ
)
くは分らないけれど、其姿が見えるようだ。私も跡から
探足
(
さぐりあし
)
で行く。何だか気が
焦
(
あせ
)
る。今だ、今だ、と頭の何処かで
喚
(
わめ
)
く声がする。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
蝙蝠はめくらになり黒い体になつてぱたぱた飛んで、折しも迫る夜の中にとび入り、
暗黒
(
くらやみ
)
の中に永久に溺れてしまつた。
蝙蝠の歴史
(新字旧仮名)
/
片山広子
(著)
しかし稀に夢の中では、
暗黒
(
くらやみ
)
に
蠢
(
うごめ
)
く怪物や、見えない手の
揮
(
ふる
)
ふ
剣
(
つるぎ
)
の光が、もう一度彼を殺伐な争闘の心につれて行つた。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
さらにまた大いなる
暗黒
(
くらやみ
)
のうちに隠れてしまったが、やがてその暗黒が
退
(
の
)
くと共に、黒い影もまったく消え失せて
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
私
(
わたし
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
あの
方
(
かた
)
はこれからの
御出世前
(
ごしゆつせまへ
)
一生
(
いつしやう
)
を
暗黒
(
くらやみ
)
にさせましてそれで
私
(
わたし
)
は
滿足
(
まんぞく
)
に
思
(
おも
)
はれやうか、おゝ
厭
(
いや
)
な
事
(
こと
)
恐
(
おそ
)
ろしい、
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
ふて
私
(
わたし
)
は
逢
(
あ
)
ひに
出
(
で
)
て
來
(
き
)
たか
うらむらさき
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
或時
暗黒
(
くらやみ
)
の中で
瞑想
(
めいそう
)
している
刹那
(
せつな
)
、忽然座辺のものが
歴然
(
ありあり
)
と見えて、庭前の松の葉が一本々々数えられたとソムナンビュリストの夢のような事をいったりした。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
彼女は
暗黒
(
くらやみ
)
の往来に立止って、暫く何か考えていたが、やがてトボトボと歩き出した。だが、妙なことにはそれはタクシーの帳場とは反対の、一層さびしい方角を指していた。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私は、汽車の両腹を撫でて、非常な速力でうしろへ逃げて行く
暗黒
(
くらやみ
)
の音を聞いた。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
此処
(
こゝ
)
でさん/″\
待
(
ま
)
たせられて、
彼此
(
かれこれ
)
三四十
分
(
ぷん
)
暗黒
(
くらやみ
)
の
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
つた
後
(
のち
)
、
漸
(
やうや
)
く
桟橋
(
さんばし
)
の
外
(
そと
)
に
出
(
で
)
ることが
出来
(
でき
)
た。
持
(
も
)
ち
出
(
だ
)
したのは
形
(
かた
)
ばかりの
小
(
ちひ
)
さな
手荷物
(
てにもつ
)
で、
大
(
おほ
)
きなトランクは
明朝
(
みやうてう
)
取
(
と
)
りに
来
(
こ
)
いとのことだ。
検疫と荷物検査
(新字旧仮名)
/
杉村楚人冠
(著)
矢表
(
やおもて
)
に立ち
樂世
(
うましよ
)
の
寒冷
(
さむさ
)
、
苦痛
(
くるしみ
)
、
暗黒
(
くらやみ
)
の
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「ファリアスでは、あなたに上げられないものを取つて来たのですが、私が隠して持つて来た
暗黒
(
くらやみ
)
はあなたの
暗黒
(
くらやみ
)
で、私の星はあなたの星になるのでせう」
四つの市
(新字旧仮名)
/
片山広子
(著)
けれども、やがてその金茶色の光りが全く消え失せて、又、もとの暗黒に変ったと思うと間もなく、その
暗黒
(
くらやみ
)
のはるかはるか向うに、赤い光りがチラリと見えた。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
もし
存生
(
ぞんじょう
)
だったら地震に
遭逢
(
でっくわ
)
したと同様、
暗黒
(
くらやみ
)
でイキナリ頭をドヤシ付けられたように感じたろう。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
暗黒
(
くらやみ
)
で
固
(
もと
)
より見当は付かぬが、市郎は勝つに乗って
滅多矢鱈
(
めったやたら
)
に蹴飛ばす
中
(
うち
)
に、靴の
尖
(
さき
)
には
応
(
こた
)
えがあった。敵は猿のような声を揚げてきゃッと叫んだぎりで
霎時
(
しばらく
)
は動かなかった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
室の中は昨日の通り、もう
暗黒
(
くらやみ
)
が拡がつてゐた。が、唯一つ昨日と違つて、その暗黒の其処此処には、まるで地の底に埋もれた無数の宝石の光のやうに、点々ときらめく物があつた。
老いたる素戔嗚尊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
脱けても知らずに口を
開
(
あ
)
いて、小さな舌を出したなりで、一向正体がない……其時忽ち
暗黒
(
くらやみ
)
から、
茸々
(
もじゃもじゃ
)
と毛の生えた、節くれ立った大きな腕がヌッと出て、正体なく寝入っている所を
無手
(
むず
)
と
引掴
(
ひッつか
)
み
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そして、ゾッとする様な含み笑いが、
暗黒
(
くらやみ
)
の中から響いて来た。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
矢表
(
やおもて
)
に立ち
楽世
(
うましよ
)
の
寒冷
(
さむさ
)
、
苦痛
(
くるしみ
)
、
暗黒
(
くらやみ
)
の
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
彼女はそれを自分の
頭脳
(
あたま
)
に隠した。夕がた彼女はファリアスに来たが、
暗黒
(
くらやみ
)
の中に輝く一つの星が見えただけだつた。イヴはその
暗黒
(
くらやみ
)
と
暗黒
(
くらやみ
)
の中の星を自分の腹に隠した。
四つの市
(新字旧仮名)
/
片山広子
(著)
モウ二度と会われない幽霊か何ぞのようにニコニコと笑いながら、ツイ鼻の先の
暗黒
(
くらやみ
)
の中に浮かみ現われた時に、福太郎は思わずヨロヨロと前にノメリ出しそうになった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それが伝染したと見えて、半病人の女房お琴もつづいて同じ病いに取り憑かれて、これもひと晩のうちに死んだ。関口屋はまったくの
暗黒
(
くらやみ
)
である。近所の人たちの心も暗黒になった。
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
辛
(
やッ
)
と放免されて、
暗黒
(
くらやみ
)
を手探りで長四畳へ帰って来ると、下女が薄暗い豆ランプを持って来て、お前さん床を
敷
(
と
)
ったら忘れずに消すのですよと、朋輩にでも言うように、
粗率
(
ぞんざい
)
に言置いて行って了った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その三度目の逃亡の時に……
今朝
(
けさ
)
です……ヴェルダンのX型
堡塁
(
ほうるい
)
前の第一線の後方二十
米突
(
メートル
)
の処の、夜明け前の
暗黒
(
くらやみ
)
の中で、この
腓
(
こむら
)
を上官から撃たれたのです……この包を妻に渡さない間は
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“暗黒”の意味
《名詞・形容動詞》
暗黒(あんこく)
光がなく暗い状態。
現況や将来の見通しがつかず、心理的な不安を感じるさま。悪がはびこるなどして希望が持てないこと。失敗が続くなどして極度に自信を失った状態。
未知なこと。実態がよくわからないこと。
(出典:Wiktionary)
“暗黒(
闇
)”の解説
闇(やみ)とは、光の無い状態のこと日本国語大辞典/闇。暗闇(くらやみ)とも、暗黒とも。
(出典:Wikipedia)
暗
常用漢字
小3
部首:⽇
13画
黒
常用漢字
小2
部首:⿊
11画
“暗黒”で始まる語句
暗黒公使
暗黒裡
暗黒の海
暗黒局
暗黒街
暗黒星
暗黒蔵
暗黒々
暗黒神
暗黒色