この)” の例文
嗟乎あゝをしむべし、かゝる美人びじんこの辺鄙へんひうまれ、昏庸頑夫こんようぐわんふの妻となり、巧妻こうさいつね拙夫せつふともなはれてねふり、荊棘けいきよくともくさらん事あはれむたえたり。
「ホウ、半鐘がありますぜ。斯樣なところに旅舍やどやも有る——この次に來る時は是非あの旅舍やどやで泊めて貰ふんだネ。」
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
吾人は政論家としてもしくは経世家として、この問題を唱道する者にあらず、尤も濃厚なる、尤も着実なる宗旨家として、善く世の道理力と人の正心とを対手あひてとして
「平和」発行之辞 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ひとリ怪ム、この時ニ当リテ敢テ法典ノ実施ニ反抗セントスル者アルヲ、此輩畢竟不法不理ナル慣習ノ下ニ於テ其奸邪曲策ヲ弄セントスル者ノミ、とつ何等ノ猾徒かっとゾ」
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
又曰く、予深く其の去るをおしみ、ためこの詩をす、既に其の素有の善を揚げ、またつとむるに遠大の業を以てすと。潜渓の孝孺を愛重し奨励すること、至れり尽せりというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼徒かのとこれを寛仮することあたはず、不得已やむをえず斬殺に及びしものなり。其壮烈果敢、桜田の挙にも可比較ひかくすべしこのゆゑいやしくも有義気ぎきある者、愉快と称せざるはなし。抑如此そも/\かくのごとき事変は、下情の壅塞ようそくせるより起る。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
天智てんじ天皇のみ代だけについて見ても「このとしみずうすを造りかねわかす」とか「はじめ漏剋ろうこくを用う」とか貯水池を築いて「水城みずき」と名づけたとか、「指南車」「水臬みずばかり」のような器械の献上を受けたり
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
『湖山楼詩稿』に「この日陰雲四塞。」〔是ノ日陰雲よもふさグ〕といってある。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
嗟乎あゝをしむべし、かゝる美人びじんこの辺鄙へんひうまれ、昏庸頑夫こんようぐわんふの妻となり、巧妻こうさいつね拙夫せつふともなはれてねふり、荊棘けいきよくともくさらん事あはれむたえたり。
この山国に住む人々を分けて見ると、大凡おおよそ五通りに別れて居ます。それは旧士族と、町の商人と、お百姓と、僧侶ばうさんと、それからまだ外に穢多といふ階級があります。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『たとへいかなる目を見ようと、いかなる人に邂逅めぐりあはうと決して其とは自白うちあけるな、一旦の憤怒いかり悲哀かなしみこのいましめを忘れたら、其時こそ社会よのなかから捨てられたものと思へ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くも脚下あしもとおこるかとみれば、たちまちはれ日光ひのひかりる、身は天外に在が如し。この絶頂はめぐり一里といふ。莽々まう/\たる平蕪へいぶ高低たかひくの所を不見みず、山の名によぶ苗場なへばといふ所こゝかしこにあり。
やがて、種牛の眉間みけんを目懸けて、一人の屠手がをの(一方に長さ四五寸のくだがあつて、致命傷を与へるのはこの管である)を振翳ふりかざしたかと思ふと、もう其が是畜生の最後。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くも脚下あしもとおこるかとみれば、たちまちはれ日光ひのひかりる、身は天外に在が如し。この絶頂はめぐり一里といふ。莽々まう/\たる平蕪へいぶ高低たかひくの所を不見みず、山の名によぶ苗場なへばといふ所こゝかしこにあり。
その小屋へ一宿しゝにこの日は六月十二日にて此御鉢といふ所へ竜燈りうとうのあがる夜なり。
その小屋へ一宿しゝにこの日は六月十二日にて此御鉢といふ所へ竜燈りうとうのあがる夜なり。