)” の例文
旧字:
殿中の廊下には、たくさんの花桶はなおけが並べてあって、各〻が心まかせに、好みの花を摘んで、けたり、家土産づとに戴いて帰った。
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『いつお亡くしになりましたの?』傍に坐つてゐた妻はかう口をれた。
ある日 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
書面を一読して、すぐ、返事をしたためた。そして使いを帰した後で、みずから白磁はくじの壺をとりだして、それへ牡丹をけた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おなじ棟割り長屋でも、いつも小ぎれいにしてさ。壺には花がけてあり、またお内儀も、薄化粧を忘れていないし」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
け、その神韻しんいんを感じるにつけ、どなたがあれをお切りになったか、どうしても知りたい気がする。甚だ、つかぬことを
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここのところの謹慎中も、彼は蓄えの茶壺ちゃこなど解いて、茶を賞したり、花をけたり、書を読みこうくなど、酒以外にも、何か独り楽しんでいた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石舟斎は、さらさらと茶人らしい簡単な手紙を書き、それを、先刻、壺へけた芍薬しゃくやくの残りの一枝へ、結び文にして
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長は、うなずいて、すぐ共にった。茶席は六畳であった。茶入れかざりには秘蔵の大海が出ている。——花入れは目につくが花はまだけてない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見れば、煤竹すすだけ一節ひとふしを切った花入れに、一輪の白菊をけてささげている。静かに、秀吉の横へ坐って、菊の姿のくずれぬ程に、そっと床脇とこわきにおいた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よほどうれしかったと見える。自分の手で、古銅のへいにそれをけると、回向えこうの水の供えてある小机の傍らに置き
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、床の間の、大きなかめへ手をかけた。見事にけてあった花も、彼の腕にみだれ、瓶の口からこぼれる水は、縁側まで滴々と音をさせて運ばれて行った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長の恩命よりも、菊女のけた一枝の花よりも——である。秀吉がなみだをもって、自分の手に注いだ男と男の心契しんけい一つにすべてを忘れ得ることができた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、一歩大宮に入ると、のきごとに万燈まんどうをともし、幕をもって壁をかこい、花をけ、金屏風きんびょうぶをすえ、人はみな晴衣はれぎを着て、町中、大祭のような賑いであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きのうまで、病を養っていた自分の部屋には、彼女のけた一枝の菊花が丹波焼たんばやきの壺によく匂っていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仁斎は、床の一じくを見て云った。へいには黄菊がけてある。墨の香と菊の香とが、薫々くんくんと和していた。
「おや、お部屋にはおらぬのか。……ははあ、花をけておられるな、では、客間か、花世どの」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明日あすの朝は、床の間に、花をけようということだった。——罪人のへやに花、それで分る。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とこを見れば、東山ひがしやま名物でもありそうな名幅めいふくがかかっていた。花器を見れば、砧青磁きぬたせいじとおぼしき耳附みみつきびんに、ってけたばかりのような牡丹ぼたんのつぼみが笑みを割りかけている。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(あれ見よ、やぶ椿が、瑠璃るり花瓶かびんけられて、長者の几帳きちょうの側に置かれた事よ)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊賀の壺に、一輪の芍薬しゃくやくを投げ入れて、石舟斎は、自分のけた花に見惚れていた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菖蒲あやめの花をけ、冠台かんむりだいに、造花のついたかずら冠をせて——せっかく菖蒲酒しょうぶざけをともに祝おうと、土杯かわらけまでそろえたのに、召使を見せにやれば、さっきから、泰子やすことふたりで、長ながと
鉄杖てつじょうを持っていまわすと、ねこはなおチリチリとげだして、とつぜん、向こうのすみに、はぎ桔梗ききょうや秋草のたぐいを入れぜに、けこんである大きなつぼくちへ、ポンと、飛びこんでしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
客を迎える寸前にけるべく水屋甕みずやがめのそばの小桶に根をひたしてある。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伝右衛門は、思い余って、三日の朝、上之間の床間とこへ、花をけた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ええ。晴れのお屋形のごとに花をけねばと、花を
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)